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中途半端に勉強もできてピアノも諦め切れなくて。自分が何を目指したらいいのか分からなくなった。

母親はいつも心配して国を移動する前は必ず私に連絡をくれたり、手紙を送ってきてくれたりもした。

でも中学ぐらいになるとだんだんそれが煩わしくなってきて。

いつも家に居もしない母親にあれこれ詮索されたりピアノのことを強要されているような気がしてそれらを答えるのを拒んでいった。

父親も次第に自棄になっていく息子を持て余すようになって…今にして思えば母親がサポートできるような環境に無い子供を父としてどう接して良いのか分からなかっただけかもしれないけれど、成績でしか私を見ないようになっていってしまった。



結局私は父のことも母のことも喜ばせることが出来なくなってしまったのだ。

そう思ったら、なんだか気を張って真面目に生きていくのが馬鹿らしく思えてきてしまって。

斜に構えるどころか女のような身なり、言葉遣いで取り繕って本当の自分で生きる道を閉ざしてしまった。


簡単に言えば捻くれてしまったということだ。

分かりやすく不良になる訳でなく、見てくれだけが女性のようになってしまったというのが私らしい変わり方だったが。


今は音大でも医大でもない普通の大学の何を思ったのか経済学部なんかに籍を置いていて、そんな自分の生き方が可笑しくて反吐が出そうだ。


それでもピアノだけはあくまでも趣味の領域は出ないけれど続けている。


この前みたいにサークル的なミニコンサートも開いてそこそこファンだっていたりする。



でもやっぱりそれは己を芯から満たせるものにはなり得なくて。




でも、だからこそ、亜美に演奏を聴かせるというのは、今まで生きた中で相当な価値のあることだった。





私の心にずっと棲み付いていた美しい水の女神。

満たされていなかったものが彼女という存在が現れて泉のごとく様々な感情が湧き出た震えるようなあの想い。





本当の私が抱いた初めての感情。





そうだ。極彩色の音の世界を彼女は私に注いでくれたんだ。




「母さん、僕は…ようやく自分だけの音楽に出会えたよ。」


母親のCDを手に取り、あの日の演奏、亜美への思いを胸にポツリと呟く。





彼女がいたからあんな風に音を奏でることができたんだ。


音楽とは自分にとって人生そのもので。



それを色付ける彼女という存在は掛けがえのないものなんだ。




手離してはいけない。






簡単に諦めてはいけないんだ。












彼女というただ一人の女性に会えたという奇跡を。






『自分の生きる道は自分で決める』


『そこには……彼女が絶対不可欠なんだ』


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