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私、間違ってた?
衛さんのマンションに行ったのは、西園寺さんのことを少しでも知るためだった。
私一人ではやっぱり恥ずかしいし、恋人がいる男の人の所に行くことはできないと思ったからうさぎちゃんと一緒に訪ねた。
うさぎちゃんは話が終わった後も衛さんのマンションに残ると言ったから私は先に帰ろうと玄関先で衛さんと言葉を交わす。
まさか
まさかその切り取られた部分だけを彼に見られてしまうなんて、思わなかった。
「西園寺さん…」
溜め息と共に何度その名前を呟いたことだろう。
自分の部屋でいつものように机に参考書を開いてペンを握っても、あの日の光景が、突き刺すような視線と言葉がすぐに浮かんで痛くて苦しくて。
どうしても勉強に集中することが出来ないでいた。
今まで敵が襲ってきたり、仲間内で些細な揉め事があったり様々なことが起こっても、勉強だけは長年の習慣で生活の一部として怠ることは無かった。
でも
彼のことを考えると、もう何もかも駄目だった。
突き放されたと思ったらあんなに素敵な演奏を聴かされて。
近付いたと思えば私が逃げて。
会えたと思ったら今度は傷つけて去られて……
私たちはいつまでそんな事を繰り返すのだろうか。
彼の気持ちを聞くのが怖い。
私の想いを彼に伝えるのが怖い。
そんな小さな恐怖心が一歩踏み出す勇気を押し止めた。
だからといって衛さんに頼るのは間違っていたのかもしれない。
相手を知るためにはデータの収集から。なんて、お得意の考え方をしたんだ。
すごく可愛くない。
試験問題や敵でもないのに、そんなやり方しかできない私。
それが結果的に彼を傷つけた。
最初から正面から彼と向き合えばいいことなのに。
やっぱり私は根本的に人との付き合いが上手くないのだ。
このままでは彼を、生まれて初めて好きになった男の人を傷つけたままで終わってしまう。
あの日以来、彼が私たち仲間の周辺に現れることがなくなった。
もう私には会いたくないのだ。きっと。
でも、このままで終わらせたくなんてない。
たとえどんなに、人との付き合いが上手くできなくても、自分の気持ちを伝えて届かなくても。
このまま彼に会えないことの方が私にとっての恐怖だから。
私も、いつか彼の笑顔が見たい。
もう…傷つけたくなんてない。
あの日衛さんのマンションでもらったメモを、しまっておいた手帳から取り出す。
そこには彼の連絡先と住所が記されている。
「…行かなくちゃ。」
小さく呟いた大きな決意。
一生に一度の勇気を胸に。
この先にあるのはゴールじゃない。
『どんな形でもいい』
『あなたと何かを始めたいから』