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コンサートのあの日から数日が過ぎた。
亜美の涙と言葉が忘れられなくて、何度か彼女に会おうとクラウンに行ったり、以前出会った公園に行ったりしたもののどういうわけか一向にその姿を見掛けることが出来なかった。
さすがに家まで行くのは躊躇われたから、衛にうさぎとののろけ話を聞く代わりに電話番号くらいは聞き出そうと目論んでいた。
なんだか自分がどこぞのストーカーにでもなったような気がして嫌だったけれど、会えないのだからしょうがない。
それに一応『仲間』とも言えなくも無いのだから連絡先くらい聞くのは普通だ。
そんな風に自分に言い聞かせて衛のマンションに向かった。
だけどそんな考えも、衛のマンションの部屋の近くまで来たら全てが吹き飛んでしまった。
そこにはその部屋の主と、今まで全然会えなかった彼女が微笑み合って話をしていたから。
「じゃあ、気を付けて。」
「ありがとうございます。」
頬を染めながら躊躇わずに衛に笑顔を浮かべる亜美を見た瞬間、自分の耳には二人の会話が何も聞こえなくなった。
少しして、私の気配に気付いたのか亜美がはっとこちらに向き直った。
でももう笑顔は消え去っていて、ただ凍りついたように立ち尽くしている。
なんで?
なんで私には笑ってくれないの?
私に見られたらまずかったって訳?
「あなた…とんでもない女ね。」
歪んだ口が発した言葉は、自分のものではないと思うくらいの低い声だった。
「西園寺さん…!」
「男に免疫無さそうな顔しといて、平気で一人で男の部屋に上がりこんだりするんだ?」
「おい要」
「黙れ!!」
何か言おうとする衛を遮る。
全部身包み剥がされたかのような言葉はナイフのように勝手に飛び出していった。
もう二人の顔を見れなかった。
「本当は…ただ笑って欲しかっただけ。泣かせたくなんて無かった。
なのにどうして衛にはそんな顔見せるんだよ!!」
大声で吐き捨ててその場を離れる。
他人の話を聞く度に下らないと思っていた嫉妬という感情。
自分の中でこんなにも、どす黒く渦巻くとは思ってもいなかった。
『西園寺さんがあんな風に誰かに笑うんだって思ったら…すごく悔しくて。』
その時の自分は、あの日の亜美の気持ちが同じものだったことにも気付かずにいたんだ。
とにかく二人が一緒にいるところには一秒だって居たくなくて。
これ以上毒を吐くのも嫌で。
また泣きそうな亜美の顔を見るのが何よりも耐えられなくて。
まるで全てのシャッターを降ろしたかのように視界は暗かった。
マンションの階段を一気に駆け降りる。
たった今姿を現したもう一人の自分。ただの男でしかない自分を受け止めきれないまま、整わない呼吸、覚束ない足取りでどこへ行くとも決めずに歩いていく。
『知りたくなかった』
『こんな自分がいることなんて』