140字風夫婦の日
キンクイ<妻の特権>
ベッドから抜け出し、辿り着いた執務室で眠る彼に着ていたガウンを掛ける。
起こそうか迷っていると掴まれる腕にはっとした。
「うさの夢見てた…」
「そう」
「抱き締められたかと思ったのに」ガウンに顔を摺り寄せてまどろむ彼。
「部屋に戻る?」
「本物の君は?」
「え?」
「抱き締めてくれないのか?」
「もう…」
私の腕に体を預ける大きな甘えん坊さんな彼を知っているのは妻である自分だけ。
クン美奈<処方箋>
「寝てろ」
「風邪くらいすぐに治るわ」
「馬鹿は死ぬまで治らんがな」
「最低」
「短気を起こすと熱が上がるぞ」
「誰のせいよ」
額を付けられて「やはりさっきより高いな」と何でもない風に言う。
「何か作ってやるから」
「いらない」
それきり黙っていると唇にキス。
「なるほどこちらがご所望か」物欲しそうな顔をしていたから。と指摘され真っ赤になる。
「また熱が上がったな」
「…誰のせいよ」
部屋から彼が出た後に呟いて布団を被った。
エリレディ<あいしてる>
長引く仕事に漸く区切りをつけて駆け出す。彼女を探して探して…クリスタル・トーキョーが一望できるバルコニーへ。
大きな月を背にした愛しい妻によれよれになった花束を差し出す。
「もう、遅い」
「ごめん」
「今日は何の日?」
「いい夫婦の日、です」
「そうよ」
そっぽを向いた妻の頬に触れる。
「ごめんレディ…機嫌直して?」
額にキス。悔しげに赤くなった彼女。
「月が…綺麗ね」
「…はい」
思いを込めて最愛の人に口付けを。
微笑む彼女は花や月よりも…
