⭐︎☆🌙まもうさで、四つの季節🌏☆⭐︎

Autumn『きみとぼく』

「最近寒くなってきたわよね」
 学校の周りに植えられた桜の木が秋色になってきた頃。なるちゃんがおはよーの挨拶の後そう言って席に着いた。
「そういやうさぎ、彼氏と付き合い始めてから遅刻しなくなったね」
「だって早起きしないと平気で置いてかれちゃうもん」
「へえ! きびしーい」
「でしょ?!」
「でも親友としてはありがたいわ。その厳しさも愛情のうちじゃない」
「そーかなぁー。まもちゃん冷たいっ! ケチってこの前ケンカしちゃったよ」
「あらら」
 まぁホントのこと言うと、その時は私ばっかり怒ってて。ケンカにもならなかったんだけどね。
「明日のデートは遅れないようにしなきゃ」
「なーんだ。なんだかんだ言ってラブラブじゃん! 心配して損した」
「えへへ」
 笑ってんじゃないわよ、もう! と親友におでこをちょんと小突かれてごめんごめんと謝った。
 
 でも、朝の待ち合わせの時間だって5分過ぎてたらもういないんだもん。どうしたって焦っちゃうのは仕方がないよね? 待ち合わせ場所からまもちゃんの学校の方が遠いからかもしれないんだけど。
 ……ううん、違う。ほんとは分かってる。
 寝坊して遅刻しちゃう私が一番悪いんだ。
 だから記念すべき初デート♡には、絶対早く行けるように今日から準備を万全にしておかなくっちゃ!


 けれど次の日私は、昨日の自分の期待を裏切るかのように盛大に遅刻してしまった。
 言い訳すると……。まず学校から帰ってきた私は、ママから一から教わってクッキーを作った。でもなかなか成功しなくて。家族もみんな寝ちゃった後もあーだめだこれもだめ! と繰り返して……ようやく人に渡せるものができた頃には日付が変わってた。
 そこから急いでラッピングして、お風呂も入ってしっかり髪の毛も綺麗に乾かして、スキンケアもして。そしてお布団に入る直前、大事なことに気付いて思わず泣き叫んじゃった。そんな私の声に、毛を逆立てて黒猫が飛び起きる。
「なに?! うさぎちゃんっまさか、敵?!」
「明日の服が決まらない〜〜っっ!!」
「………おやすみ」
「待ってよルナぁ!!」

 眠がるルナの前で服を見てもらい、これだ! と決まった頃の時間は……怖くて見ていない。
 大急ぎで目覚ましをセットして眠ったんだけど…起きたのは待ち合わせの10分前だった。とほほ。

「遅いぞ」
「ごめんなさい! でも待っててくれたんだね?」
 一の橋公園で待ち合わせした私たち。ぜーはー息を切らして到着すると、黄金に色づいたイチョウの木の下でまもちゃんが遅刻した私をぴしゃりと叱った。呆れたような、怒ったような。そんな見慣れた表情にたっぷり反省している私。
 でも、今日のまもちゃんはなんだかキラキラ光って見えるよ。ひょっとして私の彼氏って、宇宙一かっこいいんじゃない??

「そりゃまあ、デートだし」
 目元を赤くしてぷいっと逸らすまもちゃん。
 そう言われて更にドキドキした私は顔を赤くしながらもまもちゃんの恰好をまじまじと見てしまった。だって私服、初めて見るんだもん。
「かっこいいね」
「なに?」
 ぽつりとつぶやいた言葉はよく聞こえなかったみたいで、こっちに向き直るまもちゃんに、「なんでもなーい!」と左腕を取ってぎゅっと体を押し付けた。
 夏が終わって、こうして体を寄せ合うにはちょうどいい季節。大好きな彼の体温はあったかくて安心するなぁなんて思ってたら、ふっと離されてその手は私の右手を取った。まもちゃんの耳が赤い。なんでだろ? ほら、あれ。もみじみたい。
 公園を赤く色づかせる木に目を映しながらそんな事を思った。
「……な」
「え?」
 何か言った彼の言葉を今度は私が聞き取れなくて。その瞬間、不意におでこにキスされる。パッと見上げれば穏やかに笑う彼がいた。
紅葉もみじみたいだな」
 頬を撫でられて言われた私は、かーっと体が熱くなる。
 何とか仕返ししたくて、もう一度ぎゅーーっとまもちゃんの腕に、今度は体が斜めになるくらいひっついた。
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