2nd Kiss

「お団子?」
「あんた…!」

 目が覚めると俺たちは見慣れない小さな部屋に閉じ込められていた。くそ、なんでこいつまでいるんだ。こいつ…彼女は、月野うさぎ。実はセーラー戦士。 この前のプリンセスDのパーティーの時に幻の銀水晶を探すために潜り込んだ先でおそらく同じ目的の彼女と出会った。ドレス姿でメイクもしたこいつはめちゃくちゃ可愛くて。会場ではそこだけが浮かび上がっているように見えた。一緒にダンスした感触は今もこの腕に残っている。
 そんなダンス中に、「ちょうどあなたに会いたいと思っていた」などと言われてかなり舞い上がってしまった俺が、戦闘後アルコールにあてられて眠ってしまっているのが分かっているにもかかわらず、思わず了承を得ずにキスをしてしまった少女である。

 お団子は、「会いたい」と俺に言ったわけではない。タキシード仮面に言ったのだ。だからあの時キスしてしまったのはタキシード仮面としての俺で。地場衛は、こうやってしかめっ面になったかと思えば目も逸らされてしまうくらいには嫌われている。
 こればかりはどうしようもない。彼女にだって選ぶ権利はある。中学生の女の子相手に俺らしくもない子どもみたいな言い争いをしてきたツケだ。
 そんな風に自嘲して諦めたようにもう一度彼女を見れば。視線を外した先を凝視して真っ赤になって固まっていた。
「お団子? どうし……」
 問いながら俺もその先を見ると、同じように目を開いて言葉が止まってしまう。

『この部屋はキスしないと出られない部屋』
・唇以外のキスは認められない
・時間は無制限
・他どんなことをしても扉は開かない

 そう書かれた紙が貼り付けられていた。

「な、なにこれ?! なんなのこれぇ?!?!」
 ハッと正気に戻ったお団子が大声を上げる。
「いや、落ち着け」
「だ、だって! てゆーか、何であんたはそんなに冷静なのよ?! ムカつく!」
「はあー?! ムカつくってなんだよ。俺はそんなキスでドア開くとか非現実的な事が起こるわけないって思ってるだけで……っ! くそ、いーからドア開けるぞっ!!」
 意味の分からない展開に、ぶわっと舞踏会のキスまで鮮明に思い出してしまった俺は誤魔化すように声を荒げた。
「う、ふぇっ、怒んないでよばかぁーっ」
「このバカ、泣くなーーー!!」



つづく
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