レグルスの鼓動
※かわたれ時、宵闇眠る(遠うさ)の続きです。単品でも読めます。
「これで、いいかな」
部屋にある姿見でもう一度自分をチェックする。
視線を感じて足元を見ると、ルナが私のことをじーっと見ていた。
「お出かけ?」
「ん、ちょっとね」
「ふーん、なんだかいつものうさぎちゃんのチョイスと違う気がするけど」
「そうかな? 変??」
レザーの黒のショートパンツに白地に黒のギンガムチェックのブラウスを着た私はちょっと焦って聞く。
「似合ってるわ。少し大人っぽい気がしたけど、あなたスタイルいいし。メイクも可愛いからバランス取れてていい感じよ」
「ありがと」
胸のザワザワとドキドキを隠して笑顔で返事をすると、なんだか全部お見通しみたいな青い目に見つめられて鏡に視線を戻した。
これ以上部屋にいると色々聞かれちゃいそうで。私は用意していたカバンを持つと「行ってきまーす」とルナに声を掛けてドアを閉めて玄関に急ぐ。
時間は……。いけない! 遅刻だ!
腕時計を確認して慌てて待ち合わせ場所へと向かった。
遠藤さん……あの人と朝を迎えたあの日。私はまもちゃんと彼が重なって見えた。
でも、今日会うのは遠藤さんだ。
約束したのは確かに彼だった。
「うさぎちゃん。今度の日曜、俺と出掛けない?」
あの日の朝、二度寝しちゃった私が服を整えた後。イスの背もたれを前にして座って肘をついてじっと見ていた遠藤さんが目を細めて言った。
「え、でも、私……」
上半身は裸のままで黒いスラックスをはいた長い脚を投げ出して回転式のイスをふらふらさせている彼に、私の心はムショーに落ちつかない。
「うさぎちゃんは、もう衛とデートした?」
あ。また、あの顔だ。何かを睨み付けるような怖い顔。ひょっとしてこれ、ヤキモチ……なのかな。
このヒトの場合、軽く誰かを殺しちゃいそうな目をしてるけど。
ギッとイスから立ち上がってベッドに乗り上げた彼が至近距離で見つめてくる。殺気は消えてて、意地悪に薄く笑う表情に私の心は更に騒がしくなる。
かと思えばあごに手を添えられたから、慌てて首をぷるぷる振った。
「してない」
いつもまもちゃんとは街で偶然出会って、ケンカして。それから、舞踏会では彼とは知らないまま踊ったりもしたし、正体を明かし合った日はこの部屋に連れて来られたりもしたけれど、『デート』はしたことが無かった。
そこまで考えていたらすっと視界が暗くなる。
「そっか」
フッと笑った遠藤さんに、そのまま唇を食べられた。
つづく
「これで、いいかな」
部屋にある姿見でもう一度自分をチェックする。
視線を感じて足元を見ると、ルナが私のことをじーっと見ていた。
「お出かけ?」
「ん、ちょっとね」
「ふーん、なんだかいつものうさぎちゃんのチョイスと違う気がするけど」
「そうかな? 変??」
レザーの黒のショートパンツに白地に黒のギンガムチェックのブラウスを着た私はちょっと焦って聞く。
「似合ってるわ。少し大人っぽい気がしたけど、あなたスタイルいいし。メイクも可愛いからバランス取れてていい感じよ」
「ありがと」
胸のザワザワとドキドキを隠して笑顔で返事をすると、なんだか全部お見通しみたいな青い目に見つめられて鏡に視線を戻した。
これ以上部屋にいると色々聞かれちゃいそうで。私は用意していたカバンを持つと「行ってきまーす」とルナに声を掛けてドアを閉めて玄関に急ぐ。
時間は……。いけない! 遅刻だ!
腕時計を確認して慌てて待ち合わせ場所へと向かった。
遠藤さん……あの人と朝を迎えたあの日。私はまもちゃんと彼が重なって見えた。
でも、今日会うのは遠藤さんだ。
約束したのは確かに彼だった。
「うさぎちゃん。今度の日曜、俺と出掛けない?」
あの日の朝、二度寝しちゃった私が服を整えた後。イスの背もたれを前にして座って肘をついてじっと見ていた遠藤さんが目を細めて言った。
「え、でも、私……」
上半身は裸のままで黒いスラックスをはいた長い脚を投げ出して回転式のイスをふらふらさせている彼に、私の心はムショーに落ちつかない。
「うさぎちゃんは、もう衛とデートした?」
あ。また、あの顔だ。何かを睨み付けるような怖い顔。ひょっとしてこれ、ヤキモチ……なのかな。
このヒトの場合、軽く誰かを殺しちゃいそうな目をしてるけど。
ギッとイスから立ち上がってベッドに乗り上げた彼が至近距離で見つめてくる。殺気は消えてて、意地悪に薄く笑う表情に私の心は更に騒がしくなる。
かと思えばあごに手を添えられたから、慌てて首をぷるぷる振った。
「してない」
いつもまもちゃんとは街で偶然出会って、ケンカして。それから、舞踏会では彼とは知らないまま踊ったりもしたし、正体を明かし合った日はこの部屋に連れて来られたりもしたけれど、『デート』はしたことが無かった。
そこまで考えていたらすっと視界が暗くなる。
「そっか」
フッと笑った遠藤さんに、そのまま唇を食べられた。
つづく
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