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「君は漸く巡り会えた俺の運命の人だったのに。先に早まって違う男と結婚するなんて。
君の運命の相手はこの俺だ。あの男じゃない。この俺なんだ。おかしいだろう?こんなに俺達愛し合っているのに君は自分の気持ちを騙し続けて、結婚してしまった男に操を立てていかなければならないだなんて。」

「篠塚さん…あなた…」

 うさぎはストーカー犯が彼だということをはっきりと悟った。

「パパが入院したなんて嘘なのね?!」

「君をこのまま攫って二人になりたい。でも。俺はきっとこの後捕まる。自分の仲間だった奴らにね。でも…捕まらずにもっと早く君と二人きりになれる方法がひとつだけあるんだ。」

「やめて、篠塚さんごめんなさい、私…っ」

 うさぎの言葉は篠塚には届かない。歪んだままの横顔はそこでうさぎの方へゆっくりと向けられ、笑顔を浮かべた。

「このまま二人で死ぬ。」

「…!!」

「今君の事を犯して君を殺してから俺も死ぬ。塀の中の俺を待つよりもその方がずっと早く一緒になれて愛し合うことが出来る。準備はちゃんとしてきたんだ。ロープ、手錠、拳銃。身近に俺達におあつらえ向きなものが揃ってて助かったよ。」

 そこまで話すと再びスピードを上げて走り始める。

「も…やめて…っ」

 うさぎは男の狂った顔、愛憎の混じる表情に恐怖し、涙を流す。そして胸のブローチを握り締めていた。

―助けて…たすけて……!!まもちゃん……!!!―

「!?なんだ…っ!!??」

 彼女は日常では滅多に発動しなかったその力、その輝きを放っていく。

 眩しすぎる光に目が眩んだ篠塚は車の操作を誤り中央分離帯に直撃は免れないコーナーを切っていた。

 しかし


「うさーーっっ!!」


 銀白の輝きとは別の、黄金色の光と共に聞こえてくるその声にうさぎは目を開いた。

 車から降りていた衛は衝突寸前の篠塚の車にバリアを張るようにその力を発動させ己が盾になるように両手を広げていた。

「…!!まもちゃんっ!!!」

 彼女のクリスタルの輝きは一層増し、彼女の体を包み車外へと連れ出す。そしてうさぎは衛を庇うように抱きついた。

 追跡していた特殊部隊とその場に居合わせたまことと美奈子、賢人は光に目を細めながらも絶体絶命に見えるその瞬間に声なき声を上げる。



 しかし奇跡の力で篠塚の車は中央分離帯の直前でブレーキ痕も残さずにピタリとその動きを止めて静かになった。

 そして白昼突如現れた光はそれと共に嘘のように消えてゆく。

「ば、化け物…っっ」

 ハンドルを握り締めたまま、汗をぐっしょりと掻いた篠塚は一部始終を目の当たりにしてうさぎと衛に震えながらそう叫んだ。

 そして最早逃げられようも無いのに再び車をバックさせ勢い良く走らせ始める。

 それを上空の特殊部隊のヘリ、そしてそうではないヘリが三機あとを付けていった。


「うさぎ!」「衛!」

 美奈子、賢人が二人の元へ駆け寄る。

「無事か。」

「ああ。大丈夫だ。あいつ…っ」

「あとは皆に任せろ。衛はうさぎさんをこのまま家に連れて行け。」

「うさぎ、大丈夫?ごめんね怖い思いさせて…」

「美奈P…大丈夫。私もごめん。こんなときに銀水晶の力、使っちゃって…。」

 美奈子は大きく首を振る。そんな彼女のことを見て少しだけ笑ったうさぎは再び目を伏せる。

「……化け物って言われちゃった…」

「何言ってんの!あんたが化け物なわけないじゃないっあの変態野郎のほうがよっぽど…っ!!」

「美奈子。」

 賢人が声を上げる美奈この肩に手を置く。まだ恐怖の消えないうさぎにごめんと小さく彼女は言って黙った。

 賢人も美奈子の言いたいことはよく分かる。心に自制を無くした魔物を飼っている篠塚こそ、よほど醜い存在なのであるのだと。


「とにかく…うさも力を久し振りに発動させて消耗しているだろうから賢人の言う通り家に連れて帰るよ。」

 衛はそう言ってぐったりしているうさぎを横抱きにすると自身の車へ向かう。そう妻を労わる衛の顔も、充分に青白く見えたが。


 結局自分達は大切な友人を守ることができたのだろうか。そう自責し、賢人と美奈子は肩を寄せ合うこともしないで、何とも言えずにその後姿を見送った。
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