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 どんな状況下でも予想斜め上から行動を起こす者もいる。それは―――

「敢えて聞きます。西園寺さん、何をしているんですか。」

「あら亜美。遅かったじゃない。」

 KO大学の校門前にやたらと背景に花と光をしょって異彩を放つ人物を発見した同大学二年医学部在籍の亜美は、素通りという選択をせず果敢にも声を掛けた。恋人だとて、関わりたくない状況もある。今が正にそれだ。

「まさかとは思います。が、それで犯人検挙でもするつもりですか?」

「まさかも何も当然でしょ。変態ストーカー男に怪しまれずに近付くには女の格好してるほうが隙も付けて好都合じゃない。あなたにこの変装の出来栄えを見せたくて。」

 おろした髪。ミトンのコートにスカート(おそらくミニ)にブーツ。中性的な顔立ちは化粧を完璧に施されていて見事なまでの女性っぷりだった。そんな『見た目美女』が余裕たっぷりにそう言って微笑んでいる。

「はいそうですねそれでは私は私でうさぎちゃんを守る手立てを考えますのであなたもどうかご武運を。」

 亜美はくらりと頭痛を感じた後、選択肢の筆頭にあった『素通り』を今から実践すべく早口で捲くし立てると校門をくぐった。

「ちょっと亜美「遊びじゃないんですよ!?」

 呼び止める要に亜美は振り返らずに叫ぶ。

「うさぎちゃんが…狙われているんですよ。女性として、一番恐ろしいケースで。」

「分かってるよ。」

「だったら…っ」

 亜美の言葉は続かなかった。振り返った先の恋人の表情がただの美女の仮面から戦闘色を滲ませていたからだ。

「衛と亜美たちの大切なお姫様は僕だって大切なんだ。この格好も、遊びなんかじゃない。」

 それはあまり零さない西園寺要の本音だった。ある意味戦闘服とも言える出で立ちだからこそ言えたのだろうか。しかしその格好での本来の彼の言葉は、些かあべこべの様な気もするのだが。

 それでも彼の誠意を受け止めた亜美は、衛から依頼されているストーカー男からの手紙の分析をする旨を要に伝え、その格好ならストーカー男だけじゃなくても男性なら皆騙されます。とどこか皮肉っぽく笑う。

 そしてそんな言葉で恋人の背中を押すとしたり顔で微笑んでいる彼に手を振って校舎へと消えていった。


――――――


「まだ足りないわ。瑛二さんっ」

「はいっ!」

 朝から祈祷を行っているレイは瑛二に炎を増す為に薪をつぎ足すよう促した。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前…!!!」

 九字護身法の呪術をレイが唱え、瑛二が神楽鈴を二度鳴らすと、閉め切った部屋に一陣の風が吹き、炎が天井に届かんばかりに巻き上がる。

「…!?この人は…!!」

 レイは炎の中に見えた思わぬ人物に目を見開き立ち上がり、押し黙った。

 彼女は己に問う。自分の祈祷は失敗したのだろうか。いやしかし、今までどんな場合でも百発百中だ。では何故この人物が浮かび上がったのだろうか。


「…行くわ。」

「レイさん、あの人に心当たりが?」

 瑛二はその人物には覚えが無く、明らかに顔色が変わった恋人を慮って立ち上がり彼女の肩にそっと触れた。

「あなたも会ってるわよ?」

「え…!?」

「ごめんなさい、私も少し混乱してるの。出来ればあなたも一緒に来て欲しいのだけれど。」

「言われなくてもそのつもりだったよ。」

 祈祷の為に額に汗を薄っすらと浮かべていたレイは、瑛二の真っ直ぐな瞳と迷いない言葉に微笑した。
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