4
「飲むか?」
衛はうさぎが冬になると特に好むホットココアを差し出してそっと言う。
「うん…ありがと。」
ベッドで横になっていたうさぎは体を起こしてその温かなマグカップを受け取った。
「無事で…良かった。」
フワッと頭を撫でられる心地良さ、一口飲んだココアの温かさと甘さがうさぎに笑みを取り戻させていく。
「みんなのおかげだよ。まもちゃん…来てくれてありがとう。」
ココアをサイドテーブルに置いた彼女は大好きな夫のことを抱き締める。
「もう、秘密なんてばらしてしまおうか。」
「え?」
「俺達が結婚してること。俺はうさの夫で、うさは俺の妻だってこと。もう…秘密にしないでいいんじゃないか?」
「まもちゃん…」
「あいつ…っうさにあんな手紙よこして、後を付けたりして…車で攫って…こんなにうさに怖い目に遭わせて…!!出来れば起き上がれなくなるまであいつを俺が殴り倒してやりたかった…っ」
衛の余り見せない激しい感情に、うさぎは胸が苦しくなる。
「今回のことだって、初めからうさが俺と結婚していることを皆が知っていれば防げたかもしれないだろ?
それに、皆が知っていればうさは俺だけのものなんだって堂々と言えるじゃないか。」
「まもちゃん」
澄んだ声にはっとする衛。彼は彼女の腕を解くと自身の額に手をやり俯いた。
「すまない。あんな怖い目に遭ったばかりの君にこんな風に自分の思いだけをぶつけるなんて…これじゃあ、あの男と変わらないよな…。」
衛の言葉にうさぎは大きく首を横に振る。
「違うっ全然違うよ!!だって私はまもちゃんのことが好き。愛してるもの!
そんなまもちゃんに想われて嬉しい。だから…っ」
泣きそうになっている衛の頬に手を添えると、彼はしがみ付くようにもう一度妻に抱きついた。
「怖かった…っ俺、うさがあいつの車の助手席に座っているのを見た瞬間。すごく怖かったんだ。結婚して、漸く一緒になれた君がこのまま遠くへ行ってしまうんじゃないかって…っ」
二人が己の普段は眠らせている星の力を作動させたのはもう殆んど無意識に近かった。しかし互いのことを強く想ったという点だけは疑いようもない事実。
こんな怖い思いはもう、お互い経験したくは無かった。衛の言う通りだ。もう、結婚していることを秘密になんてしない。自分は衛の妻で衛は自分の夫なのだと隠したりせず堂々と夫婦だと皆に言おう。うさぎはそう決心した。
「行かない。私、まもちゃんと一緒に生きていくって決めてるの。だから絶対あなたを一人置いていったりしないから…」
衛はうさぎの唇を彼女の言葉が言い終わらないうちに塞ぐ。ベッドに深く沈みこむ。
―抱いて…―
うさぎの唇が音にならずにそう動いて。
衛はそのまま愛しい人を腕の中に閉じ込めた。
その行為は昨夜の慈しみと優しさに包まれたゆっくりとしたものではなく、互いに強く求め合い何かに駆られるように愛を分かち合う激しいものとなったのは、最早語るべくも無い。
――――――
その数日後。
うさぎは衛は勿論、美奈子や賢人による徹底した、しかし無理の無いアフターケアに助けられ、年を越す辺りにはすっかりと元気を取り戻していた。
事件が起こっている渦中よりもその後のほうが被害に遭った者は突然恐怖がフラッシュバックするケースが多々見られる。それを危惧しなるべく心穏やかに過ごせるよう、彼らは尽力を注いだのだ。
うさぎはそんな夫、仲間達の優しさ、温かさに触れ自分には余る幸福に微笑み涙した。
そして迎えた正月―――
「あ!うさぎから年賀状がきてる…って、え、えええええええっ!!??」
『わたしたち、夫婦になりました。
これからもよろしくおねがいします!!』
六月の結婚式の写真付きの衛、うさぎからの年賀状に驚く彼らの旧友、知り合いたちの叫びは元旦早々至るところから上がったという。
おわり
衛はうさぎが冬になると特に好むホットココアを差し出してそっと言う。
「うん…ありがと。」
ベッドで横になっていたうさぎは体を起こしてその温かなマグカップを受け取った。
「無事で…良かった。」
フワッと頭を撫でられる心地良さ、一口飲んだココアの温かさと甘さがうさぎに笑みを取り戻させていく。
「みんなのおかげだよ。まもちゃん…来てくれてありがとう。」
ココアをサイドテーブルに置いた彼女は大好きな夫のことを抱き締める。
「もう、秘密なんてばらしてしまおうか。」
「え?」
「俺達が結婚してること。俺はうさの夫で、うさは俺の妻だってこと。もう…秘密にしないでいいんじゃないか?」
「まもちゃん…」
「あいつ…っうさにあんな手紙よこして、後を付けたりして…車で攫って…こんなにうさに怖い目に遭わせて…!!出来れば起き上がれなくなるまであいつを俺が殴り倒してやりたかった…っ」
衛の余り見せない激しい感情に、うさぎは胸が苦しくなる。
「今回のことだって、初めからうさが俺と結婚していることを皆が知っていれば防げたかもしれないだろ?
それに、皆が知っていればうさは俺だけのものなんだって堂々と言えるじゃないか。」
「まもちゃん」
澄んだ声にはっとする衛。彼は彼女の腕を解くと自身の額に手をやり俯いた。
「すまない。あんな怖い目に遭ったばかりの君にこんな風に自分の思いだけをぶつけるなんて…これじゃあ、あの男と変わらないよな…。」
衛の言葉にうさぎは大きく首を横に振る。
「違うっ全然違うよ!!だって私はまもちゃんのことが好き。愛してるもの!
そんなまもちゃんに想われて嬉しい。だから…っ」
泣きそうになっている衛の頬に手を添えると、彼はしがみ付くようにもう一度妻に抱きついた。
「怖かった…っ俺、うさがあいつの車の助手席に座っているのを見た瞬間。すごく怖かったんだ。結婚して、漸く一緒になれた君がこのまま遠くへ行ってしまうんじゃないかって…っ」
二人が己の普段は眠らせている星の力を作動させたのはもう殆んど無意識に近かった。しかし互いのことを強く想ったという点だけは疑いようもない事実。
こんな怖い思いはもう、お互い経験したくは無かった。衛の言う通りだ。もう、結婚していることを秘密になんてしない。自分は衛の妻で衛は自分の夫なのだと隠したりせず堂々と夫婦だと皆に言おう。うさぎはそう決心した。
「行かない。私、まもちゃんと一緒に生きていくって決めてるの。だから絶対あなたを一人置いていったりしないから…」
衛はうさぎの唇を彼女の言葉が言い終わらないうちに塞ぐ。ベッドに深く沈みこむ。
―抱いて…―
うさぎの唇が音にならずにそう動いて。
衛はそのまま愛しい人を腕の中に閉じ込めた。
その行為は昨夜の慈しみと優しさに包まれたゆっくりとしたものではなく、互いに強く求め合い何かに駆られるように愛を分かち合う激しいものとなったのは、最早語るべくも無い。
――――――
その数日後。
うさぎは衛は勿論、美奈子や賢人による徹底した、しかし無理の無いアフターケアに助けられ、年を越す辺りにはすっかりと元気を取り戻していた。
事件が起こっている渦中よりもその後のほうが被害に遭った者は突然恐怖がフラッシュバックするケースが多々見られる。それを危惧しなるべく心穏やかに過ごせるよう、彼らは尽力を注いだのだ。
うさぎはそんな夫、仲間達の優しさ、温かさに触れ自分には余る幸福に微笑み涙した。
そして迎えた正月―――
「あ!うさぎから年賀状がきてる…って、え、えええええええっ!!??」
『わたしたち、夫婦になりました。
これからもよろしくおねがいします!!』
六月の結婚式の写真付きの衛、うさぎからの年賀状に驚く彼らの旧友、知り合いたちの叫びは元旦早々至るところから上がったという。
おわり
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