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 闇雲に走っていた篠塚の目線の先に淡い栗色の髪の女の姿が映り、勢いのままブレーキを踏む。

 女はゆっくりとその運転席に向かって歩いてきて、その窓ガラスを二度叩く。

 そしてそれはそれは美しく微笑み、ぼうっとしている篠塚に言葉を掛けた。

「チェックメイトよ。ストーカー、さんっ!!!」

 女にしてはかなりきつい右ストレートがクリティカルヒットして篠塚は思考が追いつくより早く気絶した。

「西園寺さん!!ピアノ弾けなくなりますよっ!!??」

 その様子を後ろで見守っていた亜美が駆け寄る。亜美は篠塚の手紙の解析を行っていたが、それが西麻布署で普及されているパソコンから打たれたものであることを解明し、篠塚が犯人である裏を取るには一つの重要な証拠となった。

 要の右手の拳にしたところからはうっすらと血が出ていた。すかさず亜美は手当てを施していく。

「これくらい平気よ。衛の代わりに殴っておいた。ま。全然足りないでしょうけどね。」

 それよりやっぱりこの格好は効果的だったわね。完全に油断したわよこの変態男。と妙に誇らしげに言う恋人に亜美は色々な意味で嘆息した。


 上空から見ていたヘリに乗る彼女たちは拍子抜けである。

「くそ、要にまんまと美味しいところをもっていかれた!」

「まあ。やるじゃない彼。でも同じ音楽を愛する者として、やっぱり手は大事にしてもらいたいものだけど。」

「天誅…私も下したかった。今から必殺技をここで放ってもいい…?」

 破壊の女神よろしくセーラーサターンの気を放ち始めたほたるを背後に感じて、せつなはふと息を短く吐いた。

「やめておきなさいほたる。あなたの技は二次被害が大きすぎるわ。」

「うーん…せつなママにそう言われたらやめるしかないなあ…」

 あーあ残念。と少女らしい拗ねた顔で言うほたるに、通信していた美しき操縦士達は苦笑した。

 そして白きペガサスの如く、ヘリ三機は夕日をバックに優雅に退散していったのだった。



「犯人確保ーー!!」

 ここで漸く晃たち警察官が運転席で転がっている犯人逮捕へとヘリから降りて行ったのである。

 あー俺これ絶対始末書決定……じいちゃんにもどやされる。

 まさか内部に犯人がいるとは思わなかった晃は意図していなかったとは言え、犯人を逆上させ、十番の町の人々に混乱を生じさせてしまったのは動かしようも無い事実であり。

 晃は心中でがっくりと項垂れるのだった。
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