べいびーぱにっく☆
ミルクを飲み終えて、何とか得た知識で背中をさすってげっぷをさせる。
そして二人がかりであーでもないこーでもないと言い合いながらオムツを替えてひと段落。
うさぎも大分落ち着いたようで、初めのときと比べたら随分上手にちびうさを横抱きにすると、数秒も経たないうちに腕の中の赤ん坊は眠りに付いたのだった。
「寝ちゃった…ふふ。赤ちゃんて本当にミルクを飲むと寝ちゃうんだね。」
可愛らしい寝顔を見て、それだけで何だか幸せな気持ちになった彼女はいつもとは少し違う微笑みで衛に語りかけた。
「うさこ、母親みたいだな。」
衛はそんな彼女を包む母性を雰囲気で捕らえてそう言った。
「そうかな?でも、私もまもちゃんがミルク作ってるとき、おんなじ事思ったよ。パパみたいだなって。」
「父親になる前に、俺は素敵な奥さんの旦那さんになりたいんだけど?」
からかうように言う衛の言葉に顔を赤くしてうさぎはもー!と頬を膨らませた。
彼も嬉しそうに笑った後。
「ほら、ちびうさ起きちまうぞ?ちゃんとベッドに寝かせよう。」
「あ、でも落ちちゃったりしないかな。」
「そうだな…じゃあ、そのカーペットの上に座布団敷いて毛布掛けてやるか。」
「うん!そのほうが良いと思う。」
そんなうさぎの赤ん坊を考える姿はやっぱり母親らしさを感じさせた。
衛は今まで知らなかった彼女を垣間見ることができて、なんだか少し得したような、嬉しい気持ちになっていた。
いつかそう遠くない未来で、彼女が今と同じような微笑みで隣にいてくれることを切に願う。
きっと、それだけで自分は世界一幸せな男になれるのだから。
ピンク色の頬に長い睫毛。赤ん坊になっても母親にそっくりなちびうさを見るとその気持ちはより強いものに変わっていくのだった。
しかし現実はなかなか厳しいものである。
赤ん坊の世話は思っていた以上に大変で、ミルクは二、三時間もすれば飲ませないといけないし、何よりハイハイもするので危険を回避しなければと気が抜けない。ものの半日で二人はげっそりとして見えた。
それでもそんな二人を見て上機嫌に笑って手足を動かす赤ん坊を見ると、なぜか微笑んでしまうのだから不思議だった。
「この笑顔は本当に反則だよね…」
疲労が浮かび目を擦りながらあくび混じりに言ううさぎに頷く衛。
「きっと、世の中の親たちはどんだけ大変でもこれがあるからやっていけるんだろうなあ…」
「うんうん。」
オムツやミルクやガーゼが散乱した部屋で、朝から乱れた髪、目の下にクマをこしらえてしみじみと悟ったような表情で言う彼らは、端から見たらおかしな光景たっだかもしれない。
だがちびうさの笑顔と二人の穏やかな空気はそれをほのぼのとしたものに変えていた。