100回のキスより一度の好き
「うさこ、遅れてごめんな」
駅前。待ち合わせしててまもちゃんが遅れるなんて珍しいなって思ったの。でも、会えたことが嬉しいあたしはにっこにこの笑顔で首をブンブン振った。
「今日はどこ行く?」
「うさこが好きなところでいいよ」
「えー、じゃあ、何かしたいとかある?」
「うーん、うさこがしたい事は?」
「……」
いつも通りのやりとりなんだけど、今日はなんだかそのまま受け止める事ができなかった。
まもちゃんと一緒ならどこに行っても何しても楽しいし、幸せなのよ?
でもね、デートはあたし一人でするものじゃない。大好きな人、まもちゃんと二人でするものでしょ?
だからね、なんだか……彼のその言葉にモヤモヤしちゃったの。
「うさこ?」
「……まもちゃんは、それでいいの?」
「え?」
「いっっつも、ぜーーんぶ! あたしの希望通りにして、まもちゃんは楽しいの? 本当はもっと他にしたい事あるんじゃないの?!」
「どうしたんだ突然」
戸惑い始めたまもちゃんが頭に手を置いてあたしの顔をのぞき込む。うっかりときめいちゃいそうになったけど、引っ込みが付かない気持ちはそのまま言葉になって飛び出していく。
「そっか、分かった……まもちゃんのしたい事は、あたしと一緒じゃできないことなんでしょ。まもちゃん頭いいし、運動だってできるし、どう考えても、おバカで運動神経0のあたしとじゃそういう場所に行っても楽しくないもんね!!」
「うさこ!」
あまり聞いたことのない彼の大声にはっとなる。
「それ以上言うと、俺だって怒るぞ」
カッコいい彼に表情をなくして見つめられると、やっぱりちょっと怖くて。でも、今まで少しずつ感じていた思いを言葉にすることで、あたしも暴走しちゃって止まらない。
「だって! まもちゃんはあたしの彼氏でしょ? あたしはまもちゃんの彼女でしょ? もしまもちゃんがしたい事あるなら、彼女のあたしにワガママしてくれてもいいのに! 何でも優しくあたしの願いばっかり聞いてるのはおかしいの! ちっとも平等じゃない!!」
ここは駅前。周りの人の視線がこれでもかとあたしたちに注がれて。それでも今引いたらまもちゃんは一生我慢して優しくし続けちゃうって思ったから、やめるわけにはいかなかった。
「うさこ、ここは人目につくからとりあえずどこかに入ろう」
「どこかって?!」
「うさこの好きなケーキ屋さ「ほらまたぁ!!!」
その大声にビクッと肩を揺らして呆れた顔をするまもちゃん。ため息までつかれて、あたしは唇を噛んで目を伏せる。
結局あたし一人がワガママみたいで涙も勝手に溢れてきた。
「今日は帰る!」
「うさこ、待てよ!」
背を向けて歩き出そうとするあたしの手首を掴んで引き止められた。けど、心の中がぐちゃぐちゃでどうにもならなくて。
「あたしの今したいことは『帰ること』なの!!」
静かになった彼。あたしは少し経っても何も答えないまもちゃんのことを振り返って見ると、なんだかとても悲しそうな顔をしてて。胸がぎゅっと痛んだ。
けれど。
「そうか。勝手にしろ!」
ムキになった男の子みたいな顔をしてそう言うと、くるっと踵を返してスタスタと来た道を歩いて行ってしまった。
……なによ、なによなによ!!
「まもちゃんの、ばかぁああっ!!」
その声に一瞬立ち止まるけど、またすぐに歩き出してしまって、たくさんの人の中に紛れて見えなくなった。
ここまで話すと、ルナはジト目であたしを見てたった一言。
「謝ってきなさい」
なんで? どうしてあたしだけ??
納得いかない!
けれど、まもちゃんのあの悲しそうな顔が頭の中をよぎったから。
やっぱりちゃんと話し合わなきゃダメだよね……。
そう思って、重ーーい体を引きずりながらまもちゃんのマンションに向かった。
駅前。待ち合わせしててまもちゃんが遅れるなんて珍しいなって思ったの。でも、会えたことが嬉しいあたしはにっこにこの笑顔で首をブンブン振った。
「今日はどこ行く?」
「うさこが好きなところでいいよ」
「えー、じゃあ、何かしたいとかある?」
「うーん、うさこがしたい事は?」
「……」
いつも通りのやりとりなんだけど、今日はなんだかそのまま受け止める事ができなかった。
まもちゃんと一緒ならどこに行っても何しても楽しいし、幸せなのよ?
でもね、デートはあたし一人でするものじゃない。大好きな人、まもちゃんと二人でするものでしょ?
だからね、なんだか……彼のその言葉にモヤモヤしちゃったの。
「うさこ?」
「……まもちゃんは、それでいいの?」
「え?」
「いっっつも、ぜーーんぶ! あたしの希望通りにして、まもちゃんは楽しいの? 本当はもっと他にしたい事あるんじゃないの?!」
「どうしたんだ突然」
戸惑い始めたまもちゃんが頭に手を置いてあたしの顔をのぞき込む。うっかりときめいちゃいそうになったけど、引っ込みが付かない気持ちはそのまま言葉になって飛び出していく。
「そっか、分かった……まもちゃんのしたい事は、あたしと一緒じゃできないことなんでしょ。まもちゃん頭いいし、運動だってできるし、どう考えても、おバカで運動神経0のあたしとじゃそういう場所に行っても楽しくないもんね!!」
「うさこ!」
あまり聞いたことのない彼の大声にはっとなる。
「それ以上言うと、俺だって怒るぞ」
カッコいい彼に表情をなくして見つめられると、やっぱりちょっと怖くて。でも、今まで少しずつ感じていた思いを言葉にすることで、あたしも暴走しちゃって止まらない。
「だって! まもちゃんはあたしの彼氏でしょ? あたしはまもちゃんの彼女でしょ? もしまもちゃんがしたい事あるなら、彼女のあたしにワガママしてくれてもいいのに! 何でも優しくあたしの願いばっかり聞いてるのはおかしいの! ちっとも平等じゃない!!」
ここは駅前。周りの人の視線がこれでもかとあたしたちに注がれて。それでも今引いたらまもちゃんは一生我慢して優しくし続けちゃうって思ったから、やめるわけにはいかなかった。
「うさこ、ここは人目につくからとりあえずどこかに入ろう」
「どこかって?!」
「うさこの好きなケーキ屋さ「ほらまたぁ!!!」
その大声にビクッと肩を揺らして呆れた顔をするまもちゃん。ため息までつかれて、あたしは唇を噛んで目を伏せる。
結局あたし一人がワガママみたいで涙も勝手に溢れてきた。
「今日は帰る!」
「うさこ、待てよ!」
背を向けて歩き出そうとするあたしの手首を掴んで引き止められた。けど、心の中がぐちゃぐちゃでどうにもならなくて。
「あたしの今したいことは『帰ること』なの!!」
静かになった彼。あたしは少し経っても何も答えないまもちゃんのことを振り返って見ると、なんだかとても悲しそうな顔をしてて。胸がぎゅっと痛んだ。
けれど。
「そうか。勝手にしろ!」
ムキになった男の子みたいな顔をしてそう言うと、くるっと踵を返してスタスタと来た道を歩いて行ってしまった。
……なによ、なによなによ!!
「まもちゃんの、ばかぁああっ!!」
その声に一瞬立ち止まるけど、またすぐに歩き出してしまって、たくさんの人の中に紛れて見えなくなった。
ここまで話すと、ルナはジト目であたしを見てたった一言。
「謝ってきなさい」
なんで? どうしてあたしだけ??
納得いかない!
けれど、まもちゃんのあの悲しそうな顔が頭の中をよぎったから。
やっぱりちゃんと話し合わなきゃダメだよね……。
そう思って、重ーーい体を引きずりながらまもちゃんのマンションに向かった。