ドクターパロ

あの半月の日以来会っていない。名前だけは芽衣に聞くことができた。

「おねえちゃん?うん。お団子頭で、一緒にいるとホッとしてあったかい気持ちになれるの。大好きなんだ!うさぎおねえちゃんっていうんだよ?」

彼女の事だ…

手術を前にして不安に思っていないか、せめて話し相手にでもなれればと衛は芽衣の病室に足を運ぶことが多くなった。その中で、ずっと大事にしている少女のクマのぬいぐるみに見慣れないピンクのリボンが付いていておねえちゃんにもらったのだと聞き、思わず衛は尋ねたのだ。

「うさぎっていう名前なの?」

「えーやだ地場先生もおねえちゃんの事気になるの?」

「俺もって?」

「だあってうさぎおねえちゃんも地場先生の事色々聞いてきたんだもん。もーしかーしてー、ラブラブ?」

「こらこら!大人をからかうんじゃありません。」

「けちー!」

そうして笑い合った。こうして話していると普通の、好奇心旺盛で天真爛漫な九歳の女の子そのものなのに。心臓に重い病を抱えていることなどこの笑顔の中には微塵も感じない。それでもそうじゃないことは衛が一番よく分かっている。手術が成功しなければこの子は…

「絶対に俺たちが芽衣ちゃんを助けるよ。」

芽衣の頭をその手で撫でてそう言うと。ふっと切なそうに笑う芽衣が頷いた。

「地場先生のおっきな手、すごーく安心する。不思議だね。本当に大丈夫って気持ちになってくるよ…」

瞳から零れ落ちるものを拭いながら微笑む芽衣。

「ああ、大丈夫だよ。」


そのやり取りを扉の向こうでうさぎが聞いていたことに、衛は気付かなかった。






中庭に着くと、想像通り。うさぎがそこに立ってあの日と同じように両手を組んで瞳を閉じていた。

「うさぎちゃん…!」

はっと気づいたうさぎは衛の事を目元を赤くして見つめる。
肩で息をする衛は嬉しそうに彼女を見た。

「良かった…会えた…」

「地場先生…」

「手術の日が決まったんだ。芽衣ちゃんの。」

「あ…ええ。めいちゃんに聞いたわ。リボンのお守りを渡したらとっても喜んでくれた。少しでもあの子と、あなたの力になりたくて…」

「うん。ありがとううさぎちゃん。」

衛の微笑みにうさぎはきゅっと胸元で握る手に力を込めた。

「その呼び方…」

「あ、ごめん。芽衣ちゃんに君の名を聞いて。馴れ馴れしかったか…」

「ううん!とっても好きよ。」

「そ、そう…」

本当に嬉しそうに笑ううさぎに衛の心臓は音を立てた。

「衛先生に主治医をしてもらう患者さんはきっとみんな幸せよ?」

「そんなことは…俺はまだまだ未熟だしこれらももっと色々」

「だって心が綺麗だもの。あなた、とっても綺麗な目をしてるわ。」


「え…」


―――それは君の心に触れ、君のことを瞳に映しているからなんだ―――



そう思うが、それを言葉に乗せて届けることはまだできず。

「技術が伴っていないと医師としてはまだまだ半人前だよ。」

衛は気恥ずかしさをごまかすようにそう言うと、美しい満月を見上げて微笑んだ。

その横顔に胸をときめかせているうさぎの眼差しを知ること無く……







Twitterからの妄想はここまでですーw
このあとチームメディカルアースのあれやこれやとか、まさかの西棟ボスがうさぎの婚約者とか、骨折美奈子と賢人のドタバタラブコメとか色々妄想膨らむけどここまでですすみません!
ここまで読んでくださりありがとうございました!!

2016.9.8
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