覚めない夢はないけれど(クンヴィ)

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これは夢?
それならそれで。
現実であったなら私はすぐに背を向けるべきだった。
 
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 地球国の一番栄えている街の市場で、数ヶ月ぶりに非番をもらった俺は特に用事もなく訪れていた。所狭しと並ぶ様々な店を眺めては目を引く商品を手に取り、特に気に入ったものをいくつか購入する。しかしそのどれもが自分のためではなく、ふと頭に浮かんだ女にあてるものばかりを選んでいることにだいぶ後になってから気付き、全く無意味な行動に笑うしかない。時間と、金の無駄だ。しかし、これは決して無駄ではないのだと心の内が叫んでいた。
 どうせ渡すことはできないのだ。ならば、心の中で彼女を想い、贈り物をしたっていいじゃないか。心だけは己の自由に、ありのままであることが許されるはずなのだから。

「え?」

 そんな思考に行き着いていた矢先。見間違えるはずもない美しい金色の髪を視界にとらえて思わず声が出てしまう。
「ヴィーナス?」
 リボンはしていない。花柄の頭巾をかぶっていて、服装も地球の民に紛れるような町娘の姿。けれどその眩い髪と均整の取れた愛らしい顔は間違いなく金星を守護に持つ、月の姫の守護戦士だった。俺が目を逸らさず見つめていたからか、ものの数秒で彼女は気付いてこちらを向く。
 その察知能力はまさに月の戦士だという事実を示していて、俺はなぜだかほっとしたような笑みを彼女に送ってしまった。
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