残したいモノ(まもうさちび)

 十番街の一角で一組のカップルと、彼女の方にそっくりなピンクのお団子頭の少女が一人。兄妹? 親戚? 側から見るとどういう関係なのか一見分かりづらい三人がアイスクリーム屋の前で何やら言い合っていた。
「ちょっとぉ! ちびうさ! あんたそんなに食べるの? 食べ過ぎよっ!」
「だったらうさぎもこれにすれば良かったでしょー?」
 何段ものアイスを片手にうさぎに得意そうに返す少女。
「あたしはソフトクリームが食べたい気分だったの!」
「こらこら二人とも、喧嘩してるとアイス溶けるぞ?」
「「それはやだ!!」」
 同じ顔して即答する二人に思わず笑う彼は、十人中十人は振り返る見目麗しい王子の微笑みだった。
「ほら、うさ」
「ありがとー♡ まもちゃん!」
 まもちゃんと呼ばれる王子……衛にストロベリー味なソフトクリームを差し出されて嬉しそうに受け取るプリンセススマイルなうさぎ。そんな恋人に優しい眼差しを送る彼と、んー!おいし〜♡と愛らしくアイスを食べるちびうさ。 そう、彼らを包む空気は親子のそれだった。
「まぁ、あたしもいちごのソフトクリームも食べたいし、あとで交換してもいいわよ?」
「ほんと?! ちびうさったらいい子ねー♡」
 食べ物一つで天使の笑みを浮かべるうさぎに呆れながらも頬を染めるちびうさなのであった。
「俺も分けるぞ?」
 チョコと抹茶のダブルで注文した衛は、愛しい二人に笑顔でそう提案する。
「「だいじょーぶ!」」
「え」
「まもちゃんチョコ大好きでしょ? だから全部食べてほしいの」
 至上の笑みのうさぎの言葉にうっと言葉に詰まる衛。けれど、彼女とちびうさが微笑ましく分け合おうと言っているのに自分だけ蚊帳の外なのは寂しいものがあった。 そういえばうさぎもちびうさもあまり抹茶が得意ではない。イチゴかバニラアイスにすれば良かったのか……などと心の中で数分前の自分の選択を若干後悔する衛は、目に見えてシュンとしてしまう。
 そしてちびちびと少しずつアイスを食べるその様子に気付いたちびうさがうさぎのスカートの裾をクンと引いた。
「あ! じゃあじゃあ、三人で写真撮ろ!」
 カメラを出してうさぎは二人に寄るように声を掛ける。
「なんで写真?」
 衛は言われるままに顔を寄せるが、思ったままを口にした。
「三人でアイス食べたってこと、ずーっと写真に残るでしょ? そしたら三人でこの時間を分けっこしたみたいですーっごくいいなって思ったの♪」
 ハイチーズ!
 うさぎの言葉に衛の心は綻び、ちびうさも『うさぎってば珍しく冴えてるー!ナイス!』と思いながらポーズを決めた。


 ※※※

 大切な思い出。ずっと残していたかった大切な二人とのかけがえのない日々。
 彼はコルドロンに、そしてあの子はまるで存在そのものが間違いだとでも言うように、一瞬で消えてしまった。

 どうして? あたしはどうしてまだここにいるの?  
 一人では何も生み出せない。

 一人では、何も……残せない。

 力をくれた大切な人。大好きな人。愛しい人。
 
 いない いない

       いない


  もうどこにもいない


 クリスタルがあっても、それを司るあたしの心が壊れてしまったら


 もう、戦えないよ



 もう、むりだよ


 まもちゃん   ちびうさ



 あたし  今


 こんなに一人ぽっちだよ


 ねえ、ねえ……

 あなたたちが、あたしの


 きぼうだったんだよ
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