実写まもうさ
待ち合わせの場所にいつもよりも早く来てしまったあたしはそわそわしながら辺りを見る。
見回すこと数秒。聞き慣れたバイクの音がしたかと思えば迷いなく目の前の道路脇に滑るように止まった。
ヘルメットを被っているのに彼と目が合ったのを感じて、それだけで私の心臓は跳ね上がってしまう。
バイクに乗っていたのに、そんなに遠くからあたしのことを気付いてくれていたんだろうか。聞いてもきっと答えてなんてくれないんだろうけれど。
でも、いいの。こんなにすぐにあたしのことを見つけてくれたっていうだけで…嬉しいから。
フェイスカバーを外した衛は表情が全部見えたわけじゃないけれど、少しだけ笑ったようだった。
悔しいけれど彼に対する想いは最高潮。
「衛!」
大好き。
あたしは全身でそれを伝えるように駆け寄って笑顔で彼の名前を呼んだ。
「…行くぞ」
「はい!」
敬礼みたいなポーズを取って答えるあたしに何も言わずにヘルメットを差し出してくる。
彼のちょっとそっけない返事も、照れ隠しだと分かったのはいつだっただろう。手渡されたそれを素早く付けて、衛の後ろに座ると腰に両腕を回す。思い切って、ぎゅっとしがみ付いたら、顔を少しだけこっちに向ける気配がして。一瞬だけ彼の手が私の右手を握った。
「え」
驚いてあたしが衛に何か言おうとしたのを察したかのようにエンジンを噴かして掻き消される。
慌てて手が緩んでしまったあたしに「バカ。いいから掴まってろ」意地悪なんだか優しいんだか分からない言葉が降ってきて。
「バカって何よ!!」
条件反射に出てしまった返事をしたあたしは多分絶対悪くない。
そんな返事をしながらももう一度衛にぎゅうっと腕を回した。
手をふわっと優しく握られただけでこんなにドキドキするなんてほんと、バカみたい。
ヘルメットで真っ赤な顔が隠れていたことに、心の底から感謝した。