エンセレ政略結婚。

『離縁してくれ』の意味。
 今日の出来事で少し分かった気がした。
 私が襲われた後、助けてくれたのに『すまない』と謝る彼は私よりも傷付いたような声をして、抱きしめる体も…震えてた。
 そして、本当に離縁したいだけなら、キスだってきっとしないし、こうしてわざわざ部屋に入れてまで手当てするわけもないって。いくら世間知らずの私でも分かるわ。

 全て……私を守る為。そうなのでしょう?エンディミオン。
 前にした時よりも情熱的なキスをされて、懇願するような瞳で私に触れ、『いいか?』と聞かれて。彼の心の傷口にようやく触れられた気がした私は…嬉しくて。頷く代わりに彼の手を取った。
 あなたの為に私ができる事を、ずっと探していたから。
 こうして身を預けることで、あなたの心に少しでも温もりを分けてあげられるなら、そうしたい。
 いいえ、私も、あなたにずっと……そうして欲しかった。
 あの日。初めて会った日。そのガラス玉のような瞳の奥に、小さな青い焔を感じた時から。

※※※

 抱き上げてベッドに降ろす間もキスを繰り返す俺たちは、言葉なんてなくても全てが通じているように思えた。
 傲慢?自分勝手?そうさ。全て独りよがりな解釈かもしれない。けれど、もうどうしたって止まれないこの情動を彼女は一身に受け止めてくれる。ただそれだけで、救われているのも事実なんだ。
 素肌に触れる。薄い腹を撫で上げ、やがてその膨らみに到達すると、彼女の体が大きく揺れた。
「力、抜いて」
 首を横に振り、漏れそうになる声を抑える姿に胸の奥が苦しくなる。
「俺を……信じろ」
 その言葉にパッと目を開けて、まるで全てを包むように俺の瞳を見つめ続けるその姿に、真実が溢れ落ちる。
「こうして、こんな俺に全てを預けてくれる君を…命をかえても守ってみせる」
「エンディミオン」
「だから、どうか怖がらないで。君が感じる全てを俺に見せて。俺は、君に失望したりしない」
「離縁も…しない?」
 震える唇でゆっくり尋ねるその言葉に傷の深さを知って胸が裂けそうになる。
「しない。ずっと、一緒にいる」


覚悟を決めたんだ。
君を抱くという事はそういう事だ。
もう迷ったりしない。
君を守る。守り抜く。
その先にある、二人の幸福のために。
悲劇はもう繰り返させない。
この王国の、未来のために。


 そうやって、一つ一つを彼女に告げれば真珠のように美しい涙をポロポロと流して微笑んで、頷いてくれた。

※※※

 見つめる先の。エンディミオンは、泣きそうな顔をしながらも初めて微笑んでくれた。


 私はその笑顔を……ずっと忘れない。


 そこからの記憶はあやふやで。
 覚えているのは、目の前の男の人に触れられる場所がずっと熱かったことだけ。

「セレニティ」と呼ぶ声が



 ずっと熱かったことだけ




おわり
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