嫉妬シリーズ(前サイトからの移行作品集)

『太陽よりも』(まもうさ)


「あのー、まもちゃん?」

「んー?」

「今日は、本読まないの?」

「うん。」

「そ、そっか~。」


赤面しながら私は今の状況をもう一度考える。

ソファーに座る私を後ろから抱き締める形で座るまもちゃん。

本も読まず、テレビも付けず、コーヒーも飲み終わることもなく私を抱き締めたまま。

「えっと、今日はこれからどこか行く?」

「行かない。」

「じゃあ、なんか食べようか!」

「腹減ったの?」

「ち…がうけど…その…」

朝ごはんは食べたばかりだ。当然お腹なんて空いていない。この状況が恥ずかしいからって我ながら馬鹿なことを言ってしまったと反省する。

だけど。彼の抱き締める力が強くなって、何か喋るたびに耳元に息が掠めていくから冷静になることなんてできない。

「ま…まもちゃん。」

「ん?」

「あの、どうしたの?」

まもちゃんの腕をきゅっと握ってしどろもどろに説明を促してみる。





「さっきまでずっと太陽見てただろ。」

「え?あ、うん。…?」

昨日から泊まりに来ていた私は、珍しく朝早く起きて世紀の天体ショーをここにいる彼と一緒に見た。


金環日食。


運良く雲間からその姿を見ることができて本当に嬉しかった。あんなに神秘的で素敵なものを他でもなくまもちゃんと一緒に見ることができたのだから。


でも、太陽を見ていたのと、今のまもちゃんのどうにも甘えん坊なこの状況が何で結びつくのか私には全く分からなくて。

彼の抱擁の中で大人しくしている事しか出来なかった。


「分からないか…。」

そう言って諦めたかのように溜め息を付くまもちゃんは腕を緩めて私のことを振り向かせて顎に手を添えた。

「え!?え???まもちゃん!?」

「太陽ばかりじゃなくて地球のことも見てくれませんか?月のお姫様。」

地球と同じ色をした美しい青い瞳に言われて、私の心臓がドカンと破裂した。



頭が痺れてしまいそうな甘い声と、ちょっと拗ねたような表情、太陽よりも私の心を射抜く熱い視線に何も考えられなくなる。



目を閉じた瞬間、唇に更に熱を感じて…結局私も、その温度が穏やかなものになるまで彼を求めて離さなかった。


おわり
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