嫉妬シリーズ(前サイトからの移行作品集)

『これだから君は』(まもうさ+モブたち)


「お団子が来たいって言ったんだぞ?」

「だってぇ~!」

俺達はさっきからこのやりとりの繰り返しだ。

最近、道を歩けばかなりの確率で出会ってしまう十番中学に通うお団子頭のこの少女は、スケートリンクの上を見事に滑っている。正確には体全体を氷まみれにして滑っている…。


数時間前、いつものように街で出くわして、お団子が唐突に俺に聞いてきた。

「あんたスケートとか得意!?」

なぜか喧嘩腰な態度はいつもの事として、表情は切羽詰まっていて何となく涙目。俺はその必死な姿がおかしくてつい笑ってしまう。

「あ~!もう何よ!笑っちゃって感じ悪い!もういいわよ!」

背を向けて行こうとするお団子の肩を掴んで笑いを堪えて謝る。

「悪かったって。俺はスポーツは何でも一通りできるけど?」

「今度なるちゃん達とスケート行くって約束したんだけど…」

俺は言い澱んでいるお団子を見てニヤリと笑う。

「ほおー。滑れないんだな?」

すると図星をつかれた彼女は、真っ赤になって睨んできた。

「うるさいわね!そうです滑れないんです!!」

やけになって大声で叫ぶからまた吹き出してしまう。

「で?俺にコーチしろと?」

頷いて視線を外し、ぼそぼそ話し出す。

「…友達だとやっぱ恥ずかしいし、他に頼める人いないし?あんた暇そうだし…。」

「別に暇じゃ無いけど、面白そうだから付き合ってやるよ。」

「面白そうってあんたねー!!」

「じゃ、やめるか。」

コノヤローと言わんばかりの表情を浮かべたお団子はやがて観念したように「お願いします!!」とやたらと大声で叫んだ。




そして現在。お団子は氷上にべったりと座り込んで半ベソをかいている。

「何よお自分ばっかりスイスイ楽しんじゃって~!」

俺はふうっと溜め息を漏らす。

「もっと氷に対する恐怖心を無くせ。そうじゃないと何も始まらないぞー。」


クルリと一回転してみせる。

「もう!あんたちっとも優しくない!」

そう言いながらフラフラと立ち上がろうとするが、かなりリンクの内側に来てしまっているため掴まるところもなく上手くいかない。

「きゃあ!!」

また尻もちをついてしまった。

「痛いーもうヤダー!!」

本格的に泣き始める。
まったく、子どもかお前は。

「しょうがないな…」

俺が起き上がらせようと近寄ろうとした時、どこから沸いたのか男組三人が、「大丈夫?」「ケガはない~?」などやたらと馴れ馴れしく語り掛けてお団子を立ち上がらせた。

親切そうにはしているけど、明らかに奴等の顔はニヤついていて、もう必要ないのに肩だの腰だのベタベタと触っている。

それなのにそんな奴等の下心なんか全く気付かず、「ありがとー!」と笑顔で感謝するお団子。



気に入らない



何だか無性に気に入らない



俺は胸がチリッと焼けるような感覚を抱きながら彼等に近付く。



お団子の両肩をガシッと掴んで男共から引き放す。

「わわっ!」

バランスを崩しそうになったお団子をしっかりと支える。

「俺の連れだから。」

低い声で鋭く言うと、相手に何も言わせずそのまま滑り始める。


手はしっかりと握っていた。


「何よいきなり!!ちょっと…ゆっくり滑ってよ!」

「バカ。お前は隙がありすぎなんだよ。」

俺はお団子の言葉を無視して勢いよく滑る。

「えー?何?」

風を切る音で聞こえなかったらしく、聞き返す。

「…ちゃんとスケート教えてやるからしっかり手を握ってろ。」

そう言うと、今度は聞こえたらしく、一瞬黙ってから赤面してコクリと頷いた。



ったく



これだからお前は



目が離せないんだよ






おわり(初出2011年)
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