嫉妬シリーズ(前サイトからの移行作品集)

『嫉妬』
最近うさはやたらと偶然出会う天王はるかのことが気になるらしい。

正直、うさはもてる。

ちょっと親切にしてもらえば誰彼構わず天使のような笑みを浮かべて思わせ振りなことを言ったりするものだから勘違いしてしまう男が多いのだ。

これが彼女の天然からくるものなので、尚のこと質が悪い。

うさが見えないところで、そんな男達に鋭く牽制を与えてやってはいるが。

うさに自覚が無いことには数が減る訳でもなく…。

彼女が悪い訳ではない。それは頭では分かっているものの、どうしても折り合いをつけることができずにいた。

「はあー。」

俺は大きく溜め息を付いてしまう。

「衛センパイ!溜め息ついてる場合じゃないですよ!」

後輩の浅沼一等が息を切らして下校の道を戻って俺の元へ走ってきた。

「どうしたんだ?」

「一ノ橋公園で衛センパイの彼女を見たんです!」

「ああ。俺と待ち合わせしてるからな。」

「男と一緒だったんですよ!ほらあの!最近人気のレーサーと…」

「…っ!?浅沼サンキュ!」



俺は浅沼の話が言い終わらないうちに横をすり抜け公園へ走って行った。


「衛センパイ!?」


あまりの猛スピードに驚いたのか背後から浅沼の声が聞こえたが、俺はもう彼女とアイツのことしか考えてはいなかった。

例え後輩にどんなに自分のみっともない姿を見せてしまったとしても。





公園の入り口まで一気に走ると、信じられない光景を目にした。


アイツがうさにこれ以上ないくらいの愛しそうな眼差しを向ける。


やめろ



うさをそんな風に見ていいのは俺だけ




そんなアイツを真っ赤な顔でうさは見つめる





どうして




俺以外にそんな顔見せるな





二人は顔を近付けて見つめ合う




なんで



なんで抵抗しないんだよ



うさに触れるな



やめろ




やめろ見たくない―――!!


「うさっ!!!」




これ以上は耐えきれなくて思わず声を荒げてうさを呼ぶ。


うさは俺の声にびくっと体を揺らし赤い顔でこちらを見てきた。


アイツが去るとボロボロと涙を流す。


嫉妬と焦りと苛立ちと…色んな感情が入り混じって抱いた俺の腕の中で小刻みに震える恋人。



何かされたのかと聞いても違うと答える。



じゃあその涙は何なんだ



アイツの為か?



嫌だ




アイツの為になんて泣かないでくれ



君の



笑顔も



涙も



全て



俺の中に閉じ込めて



俺だけのものにできたらいいのに――――



俺はこの黒く醜い感情が暴れ出さないように、うさをきつく抱き締めた。


おわり(初出2010年)
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