日常に溶け込む

聞いてるか?うさ


「因数分解は、まず3つの公式を覚えるんだ」
「うん」
 うさぎは、衛の声が心地よく、白いノートに書かれていく綺麗な数式をぼんやりと眺めていた。
「a² – b² = (a+b)(a-b)
 a² + 2ab +b² = (a+b)²
 x² + (a+b)x + ab = (x+a)(x+b)
 の3つ。簡単だろ? ほら書いてみて」
「エーとビー、Aの二乗…えびの事情…エビチリ食べたい!」
「……なんで飯の話になるんだ」
 彼女は呆れた衛の頭をおさえていた手を取ると、突然胸へと押し当ててにっこり笑う。
「え、なっ、何だよ急に」
 真っ赤にしながらも手を引っ込めようとしない衛にうさぎは口を開いた。
「問題です。あたしのおっぱいは何カップでしょーか?」
「は?」
 根本からしてズレている! 今は数学を教えていたはずだ。なぜエビチリ。なぜ恋人にカップ数を聞かれているんだ?! おかしいだろう絶対っ!!
 そう頭の中でツッコミを入れつつも手は吸い付いて離れない。抗い難い柔らかさと弾力。直接触ればもっと心地良いことを衛は知っている。そして何カップかだなんて、寝てる時にブラを見たことがあるから当然ながら知っている。
「A? B? それとも」
 なんの酔狂だ。本当に。酒でも入っているのか? 恥じらいを持て恥じらいを。
 衛の頭は混乱しつつもうさぎの手を掴むと真っ直ぐに見つめてぼそっと答えた。
「正解!!」
「じゃあ揉んでいい?」
「へっ?」
 途端に状況を把握したのかうさぎは慌て始める。
「べ、勉強は?」
「何言ってんだよ。お前、俺の説明全然聞いてない悪い生徒だっただろ」
「で、でもでもひゃあんっ」
 衛はうさぎを押し倒すと今度は直接触ってやわやわと揉む。
「その気にさせたのはうさだから。責任取れよ?」
 ネクタイを片手で引き抜く彼氏に釘付けになりながら、小さな声で受け入れた。
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