月野家のクリスマス(貴士は少しだけ、まもうさと月野家メイン)
育子は子供二人に片付けの手伝いをさせ、謙之と衛はソファーに腰を掛けて育子が用意したコーヒーを飲んでいた。
「今日は来てくれてありがとう。」
「いえ、こちらこそ本当にありがとうございます。」
少しはにかんだ様な笑顔を見せる衛に謙之は娘の恋人が彼で良かった、そう思うのである。
「本当はね、うさぎの気持ちが全部君に持っていかれてしまったんじゃないかって考えてしまって。悔しくてねえ。」
「…はい。」
「いやあ父親なんていうのは情けないねえ。でも、娘の幸せを一番に願っているということはこの先もずっと変わらない。いつかは、それを一番してあげられる誰かに譲らなくてはいかないということも分かっているんだ。でも願うことはこの先、一生変わらない。」
「はい。」
衛は真摯な目を謙之に向けて彼の言葉を受け止める。
「君はこの先もずっとうさぎの幸せを…守ってくれるかい?」
「…!謙之さん」
「僕は、君だったら安心だ。今日は君と、家族と、食事が出来て本当に良かった。」
「…はい…っ」
謙之の穏やかな声と言葉に衛は僅かに視界が霞む。そしてそのまま頭を下げた。
「ありがとうございます」
「僕こそ、ありがとう。」
衛の肩に手を置き、謙之は微笑む。そんな彼に、自分もいつかこういう父親になれたら、という思いを抱きながら衛は本当に幸せそうに微笑んだ。