喋ってるだけの二人


 喋ってるだけの二人


「だめだそろそろむり」
「およ、俺より先に弱音とかめずらし」
「うさに会わないと明日には灰になってると思う」

 出た。うさぎちゃん不足で語彙が意味不明になる【モード:ポンコツ】

「今日…は無理だなこりゃ。もうさ、一緒に住めば?高校卒業したし親御さん公認なんだろ?」
「住んでる」
「あ?」
「うさと、一緒に」
 頭を抱えながら微笑して宣う友人に肩がずり落ちる。なんだコイツ。おもしれ。つーかそういう事は早く教えろよ!散々(楽しい)愚痴聞いて応援してたってのに。まあいい。それよりもだ。
「じゃあ毎日会ってんじゃん!何が不満なんだよ」
「……わいいが…」
「あ?」
「可愛いが更新されてんだよ、うさの」
「お、おう。え?」
「だから早くおかえりが、聞きたい」

 愚痴り(惚気)ながらも研修させてもらっている患者さんの資料を鬼のようにまとめ上げる衛は、貴士は?と話題を突然俺に振る。
「貴士にもあるだろ、そういうの」
「そりゃな、彼女に会いたいって気持ちは分かる。でもお前の(クソデカ)感情には及ばないかな」
 恋人の薫ちゃんとは会えていない。教育実習でそれはもう忙しくしていて。だからお互い頑張ろうって励まし合いながら寂しさを埋めてる。でも衛は
「研修もうさぎちゃんのことも、毎時毎秒常に全力投球なんだよな」
「なんだよそれ」
「褒めてる。つーか普通に羨ましい。家に帰ったらかわいい彼女が出迎えてくれるなんてさ」
「貴士…」
 惚気すぎた事を自覚したのか複雑な表情を浮かべる衛に苦笑する。
「いーんだよ。衛は是非ともそのまま突っ走ってくれ。ただでさえハードな仕事に就くために日夜研修に励んでるんだから自分の幸せもしっかり掴んで離さないで大事にしろ」
「…おう」
 ありがとな。と少し眉を下げて礼を言う衛に肩をすくめて返事をする。

 あーあ。偉そうな事言った俺だけどどうしようこの山全然終わらねぇ。
「この患者さんへのアプローチはこの資料を参考にしたらいいんじゃないか」
 いつの間にか俺の背後にいた衛に言われて顔を上げる。それに目を通せば、どうしても越えられない壁が途端に開けていくようでどんどんプランが浮かんできた。
「おお…!まっじで助かるありがとう衛!」
するとさっきの俺の様に肩をすくめて返事をする衛は、もう次の作業に取り掛かり始めた。

 これでお互い明日灰にならずに済みそうだ。

おわり
2025.5.30
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