キスの行方

 『キスの行方』※まもうさ+土屋くん

「最近、キスを拒否られる?」
「……」
 研究室でインスタントコーヒーを飲みながら話す内容に、俺は目を見開いた。だってあの衛とうさぎちゃんだぞ? キスしないとか、そんなんこの研究室が爆発するより一大事だろ。
「なんで? まさかお前、変態みたいなキスでもしたか?」
「するわけないだろ、普通だ」
 怒のオーラを隠しもせずに憮然と返す衛に、少しばかり己の言葉を反省する。
「すまん。けどさ、うさぎちゃんが嫌がるなんて、絶対何か理由があるはずだろ?」
「まぁ、そうだよな……。うさがさ、ここのところおかしいんだよ。俺と一緒にいてもなんだかよそよそしい。笑顔ではいるんだけど、どこか遠くを見てるような気がする」
「それは……浮気「何?」
「嘘嘘嘘! 嘘です! 頼むからやめてその般若みたいな顔すんのっ!」
「……」
「聞くしかないだろ。本人にさ」
「だよな」
「うさぎちゃんが衛の事嫌いになるなんて絶対にないから」
 珍しく自信を失っている背中にバシッと気合いを送ってやる。
「ありがとな、貴士」
 翳りのある笑顔を見せて、その日の休憩時間は終わった。


 翌日、衛は打って変わってふわふわの雰囲気を背負ってやって来た。
「えーと、解決したのか?」
「まあな」
 事の顛末を聞いた俺は例外なく砂を吐く羽目になる。
 要は、『まもちゃんがカッコ良すぎるから!!』らしい。
『だって、最近、ますますまもちゃんがカッコ良くて、なんだかドキドキしちゃってうまく話せないんだもん』
 衛が恐る恐る聞いてみると真っ赤になったうさぎちゃんがそう返したそうだ。
「俺にもう一度恋してるそうだ」
「あ、そう」
 だーかーらー!ここでその甘々なキラキラ笑顔やめろ! 研究室が今度こそ爆発するわ!!



1/1ページ
スキ