ワンダーランド

 貴士たちと別行動を始めた俺とうさは、観覧車に乗っていた。
「わぁ……!随分遠くまで見えるね」
 向かいに座るうさは、目をキラキラとさせて景色を眺めていた。その表情を見ていると、俺の心も優しくほぐれていく。
「今日は楽しいな〜。なんだか夢みたい」
「夢じゃないよ」
 俺はうさの隣に移動して座ると、彼女の肩に腕を回した。
「そうだね。貴士さんも薫さんもとっても優しいし、まもちゃんの色んな顔も見られたし、今日はすーっごく、いい日」
「俺も楽しいよ。誘ってくれた二人には感謝だな」
「うん!」
 間近でたくさんの星を集めたようなうさの瞳を見つめる。
 そしてキスをすると、うさの手がきゅっと俺の胸元のシャツを掴んできて、俺はその手をそっと重ねた。
 唇を離して目を開けたうさは、頬を染めて笑う。その顔が可愛くて、もう一度……今度は少し深くその唇を奪った。

 ジェットコースターの後に貴士に言おうとした言葉がふと浮かぶ。

「俺は、どんな時もうさに笑っていて欲しい。うさの笑顔は俺が守りたいし、そうやって一番の笑顔を向けてくれるのは俺だけでありたい。そう願っているんだ」
 観覧車という、地上と切り離された空間だからか、普段はあまり口にしない事を言ってしまった。少し気恥ずかしくなった俺は、遅れて耳が熱くなってしまう。そんな姿を誤魔化したくてうさを強引に掻き抱いた。少しの間沈黙が流れて、うさがあのね……と話し始めた。
「まもちゃん、知ってた?」
「え?」
 腕を緩めると、ひょっこり顔を上げた彼女は内緒話をするジェスチャーをしてきたから耳を傾ける。

「まもちゃんは、私を笑顔にする天才なんだよ」

 俺は、湧き上がる際限のない想いを込めて、腕の中にいる天使に誓いのキスを送った。



おわり
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