ワンダーランド

 ゴーカートの衛はと言うと。水を得た魚、兎の登り坂だった。
 あんなにギリギリを攻めながらもうさぎちゃんが怖がる一歩手前の運転を心掛けている様子は、素人の動きではない。
 え? なにその音が聞こえないような華麗な運転。これ、ゴーカートだよな? といった具合である。
 俺はといえば、私が運転したい♪と薫ちゃんに言われたのでハンドルを彼女に任せていた。これが、予期しない所で突然バックしたり、俺の事を見ながら運転した時にはコーナーにぶつかってしまったりとわりと珍道中だったけれど、そのたびに薫ちゃんが素っ頓狂な声を上げるものだからすげえ楽しかった。


「なあ衛、あんなに乗り物が得意なのにどうしてジェットコースターはダメだったんだ?」
 ゴーカートの後も色んなアトラクションを楽しんだ俺たちは、少し遅めの昼食をとっていた。
 そこでポテトをつつきながら聞いてみると、「あ! それ私も聞きたいな」とうさぎちゃんも衛の顔を覗き込んで尋ねた。「だって戦う時だって高い所から飛んだり跳ねたりも上手なのに……」と後半部分はよく分からない事を言っていたけれど。
「ハンドルを握ってないから、かな」
 持っていたハンバーガーをハンドルを握るような向きに傾けてぽつりと答えた。
「え?」
「まぁ、それは例えだけど……。ジェットコースターみたいな乗り物は、俺の意思とは全く関係ない動きをするから脳内処理だとかが上手くいかないんだ、きっと」
「……っふ」
 大真面目な顔をして頷く衛に堪え切れず、俺の口から笑いが漏れてしまう。
 それを皮切りに三人で笑ってしまい、衛だけが憮然とした表情でハンバーガーをボソボソ食べていた。
「まもちゃんかわいい♡」とうさぎちゃんに抱きつかれてもムッとしたまま何も答えなかったが、振り解くこともしない。
 お、おもしれー……っ
「でもでも、ゴーカートのまもちゃんの運転は、すっごく上手だったよ。やっと一緒に乗れて嬉しかったな〜♡」
「そうか」
「今度は私が運転しよっかな」
「それは、どうだろう」
「あ! ひどいっ」
「ごめん。でも、俺が運転でいいだろ? 助手席はうさの特等席なんだから」
「まもちゃん……♡」
 はい始まりました。もう突っ込むのも面倒でーす!!
「昼食い終わったらさ、ちょっと別行動しないか?」
 俺はそう提案して二人を見ると、二つ返事でご了承を頂いた。うんうん、そうだろうね君たちは。はははは。


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