第四話 繋ぐ未来

 パレスにある啓示の塔にやってきたキングは、ゆらりと現れた人物に問いかける。
「エリオス。どうしてもパレスには来ないのか?」
「はい。申し訳ございませんキング。」

 先日エリオスはプリンセスとの約束どおりキングにパレスに移り住みたいことを告げていた。
 キングは承諾し娘にもそのことを伝えていたのだが、今日になってやはり行くことをやめたいとエリオスから聞かされて戸惑った。
 そしてキングはそのことを再び娘に話すと、話は物語の冒頭に戻るのである。
「あの子のことばかりを言っているのではない。私もお前にはこちらに来て欲しいと思っている」
「ありがたいお言葉です。ですが……」
 微笑んでから苦しげな表情を浮かべたエリオスは視線を逸らして黙り込んでしまう。
 その様子に溜め息を付いたキングは思案するように天を仰ぐ。
「お前がそこに留まろうとする理由をそろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」
「……」
「私には話せないことか?」
「話せない訳ではありません。ただ、話しづらいと言いますか……」
 頬を染めながら言うエリオスにますますキングは訳が分からなくなる。
「話してみろ。私にも力になれることかもしれない」
「ええ。あの、僕はレディ・セレニティ様をとても愛しています」
「え? ああ」
 口ごもりながらも突然告げられる娘に対する愛の言葉にキングは若干面食らうが再び彼を正面から見る。
「今までは離れていたからエリシュオンで地球の、クリスタルパレスの平和を祈ることに専念することが出来ました。でも、彼女の近くに毎日いるようになったら……。
しっかり自分のなすべきことを全うできるか不安になってしまったんです。

 こんなに弱気なことを言ってしまってすみません。だけどそれほど彼女は僕の中で大きな存在で。本当に情けないですよね……」
 ははっと力なく笑うエリオスをキングは黙って見届けて、不意に背後に振り返る。
「だそうだぞ? レディ」
「え!?」
 キングの言葉にエリオスは驚き赤くなって後方を見た。
 すると同じように真っ赤になって俯いているプリンセスが父親に呼ばれておずおずと歩み寄ってきた。
「あとはお前たちで話しなさい。私は仕事に戻るぞ」 娘と祭司を交互に見るとキングはマントを翻して去っていく。
「パパいつから気付いてたの?」
 目を見れずに聞く娘にポンと手を頭に置くと少しだけ意地悪な笑みを浮かべる。
「レディがこの部屋に入ってきたときからだ」
 ポンポンと優しく叩くと涼しい顔で答えるキングにプリンセスは更に顔を赤くする。
「じゃあまた後で」
「パパ!」
「何だ?」
「さっきは……ごめんなさい」
 消え入りそうな声で言う娘に切なさを少し含んだ表情で笑いかけると、いいんだよともう一度彼女の頭をくしゃっと撫でる。
 そしてエリオスをどことなく険しい目で見つめると口を開いた。
「エリオス。これ以上娘を泣かすなよ」
「は……はい!」
 緊張した面持ちで答える彼に満足したのか頷くと、今度こそキングは部屋を出て行った。

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