第四話 繋ぐ未来


「嘘つき!! パパなんて嫌い!!」
 レディ・セレニティの自室に訪れた両親に、泣き伏せていた枕を投げ付けて叫ぶプリンセス。
 過去の地球での修行を終えたのはもう数年前。彼女は背も髪の毛も伸びて可憐で美しいレディに成長を遂げていたが、相変わらずの泣き虫でこうと決めたら曲げない性格もますます磨きがかかっているようだった。
 投げ付けられた枕を受け止めたキングは妻と顔を見合わせて困った顔をする。
「スモールレディ」
「出てって! 今は一人になりたいの! それにもう私はちびじゃない!」
 呼んでもそう返されてクイーンと黙って頷き合うとひとまず部屋を出ることにした。
「怒るのも無理ないわよね……。でもあなたも本当のこと言わなくて良かったの?」
 扉を閉めるとクイーンは頬に手を添えて眉を下げながらキングに尋ねる。
 「仕方が無いだろ。今は多分冷静で聞くことが出来ないだろうし」
 眉間に皺を寄せて溜め息を付いて答えるキングに、そうねと彼女も同意する。
「でもやっぱりあの子達が可哀想。あんなに好き合ってるのに」
「分かってる。俺だってそういう経験は前世で嫌と言うほどしてるんだから。そのためにももう一度彼を説得してくるよ」
「ええ」
 去り行く夫を見届けた後、クイーンは再び娘の扉に向き直る。そしてノックをしようと腕を上げたが、中から切なそうな泣き声が聞こえて胸が小さくチクリと痛んだ。
 誰でも一人になりたいときがある。甘えん坊だった自分でさえそういうことがあったのだ。
 ふっと溜め息を付いて腕を降ろすと、また後で来るわねと小さい声で独り言のように漏らす。
 そして後ろ髪引かれる思いを胸に、キングとは別の方向に去って行った。


「エリオス……っ!」
 ベッドにうつ伏せて泣くプリンセスは大好きな彼の名を呼んでいた。
「あの頃みたいに、鈴を鳴らせばすぐに会いに来てくれたらいいのに……」
 過去の事を思い出してポツリと呟く。
 ずっと会いたいと思っていて、それでもなかなか会えない恋人。
 けれどそれは仕方が無かったのだ。彼は地球を内から守るためにエリュシオンからはそうは自由に出てこれない。
 それならば自分から会いに行けばいいと思っていた。
 けれど悲しいかな。成長すればするほど、プリンセスとしてやらなければならないことが増えていって、気が付けば自分自身にも自由な時間というものが無くなっていた。それでも何度か会いに行ったこともある。当然何かのカリキュラムや公務の手伝いなどを抜け出してなのだが。
 彼女は最後にエリオスに会った日のことを思い出していた。
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