第三話 王子の涙

「パパーー!!!」
 扉を開けるなり一目散に父親の懐目掛けて飛んでくるスモールレディ。その瞳には涙を一杯溜めていた。
「スモールレディ」
 キングはその胸に可愛い我が子を抱きしめると、優しく頭を撫でる。
「ありがとう」
 娘の思いと成長をこの上なく喜ぶキングは心からお礼を述べる。
 すると彼女も顔を上げてとても嬉しそうに微笑んだ。
「スモールレディのお陰ですっかり元気になったよ。本当にありがとう」
「どういたしまして!」
 えへへと笑いながら返事をする彼女は、でも、と続ける。
「あたしだけじゃないよ! パパのために森で会った妖精のお兄さんたちがいっぱいいっぱい助けてくれたの! ルナPも直してくれたんだから!」
 瞳を輝かせて言う娘に彼は目を細めた。
「ああ。そうだな」
「知ってるの!?」
「その人たちが、さっき私のところに来たからね」
 薬を飲む時に窓の外で彼らが優しく見守る姿が一瞬見えた事を思い出して、キングは目を閉じ微笑んだ。
「あ! 白い髪の毛のお兄さんが言ってた! パパのことをよく知ってるって」
「そう。昔からよく知ってるよ」
「お友達なの?」
 娘の質問にふと目を開いて眉を下げると、少しだけ目元が赤くなる。そしてゆっくりと頷いた。
「ああ。ずっと……大切な友達だ」
 キングは娘を抱きしめると、再び瞳を閉じて彼らを思った。
(クンツァイト、ネフライト、ジェダイト、ゾイサイト。ありがとう。スモールレディを守ってくれて。
 いつかお前たちにもう一度会える日がくるだろうか。もしもその時がきたら、ちゃんと礼を言いたい。
 そういう日が来ることを、俺はいつまでも願っているよ。
 どんなに月日が流れても、お前たちが帰ってくる場所はここだから。迷わないように胸の中の星を輝かせて、ずっと…待ってる)


~?年後~

 キングとクイーン、そしてスモールレディは親子三人であの花畑にピクニックに来ていた。
 赤や黄色、色とりどりの花を摘んで嬉しそうに数を数えているスモールレディの姿を草原に腰掛ける美しい夫婦は目を細めて見守っていた。
「今日この場所に来たのはどうして?」
 クイーンは横に座る夫に尋ねる。
「どうしてかな。何だか呼ばれた気がしたんだ」
「誰に?」
 彼女の問いにキングは少し寂しげに笑う。

 夫婦が話し込んでいる間、離れたところにいたスモールレディは誰かに頭をふわりと撫でられて顔を上げる。彼女はその顔を見ると嬉しそうに笑った。
 ルナPもその後ろにいる一人の人物にふよふよと嬉しそうに飛んでいく。
「お久しぶりですスモールレディ。今ようやく、あなたに名乗ることができます」
 白銀の彼はあのときの約束を果たせることに嬉しそうに笑い、大樹の彼はスモールレディを抱き上げた。
「お? お前結構重いな」
 そしてクルクルと回転させれば彼女はきゃあきゃあ声を上げて喜んだ。
 その声に気付いたキングとクイーンは彼らのほうを向いた。すると四人は揃ってお辞儀をして瞳を煌めかせた。
 ガーディアンコスモスとの約束を守り、時は満ち、彼らはこの地に転生することを許されたのである。
 夫婦は四人が今ここにいることが信じられないという顔つきから、すぐに笑顔となって手を取り合うと彼らに駆け寄っていく。
 そんな中、名前をようやく知ることが出来たプリンセスは摘んだ花を四人に差し出す。
「はい! お友達のしるしだよ♪」
 
 その笑顔は彼らにとって、この地に降りて最初に見た天使の微笑みだった。


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