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クラウンゲームセンターの前まで来ると、衛は繋いでいたうさぎの手を胸元に引き寄せて呼びかける。
「うさ、本当は予約したレストランで渡そうと思っていたんだけど……」
ここから先に踏み出せば、恋人としての二人だけの時間はしばらくないだろう。だから今ここでどうしても渡したいと衛は思った。
「まもちゃん?」
引き寄せていた左手の指を絡めて繋ぎなおすとその薬指に光る石にそっと口付ける。そして右手でポケットの中に忍ばせていた贈り物を取り出して微笑んで見せた。
「誕生日おめでとう。開けてみてよ」
繋ぐ手をそっと放してうさぎに差し出したそれは、パールホワイトの長方形の箱に淡いグリーンのリボンが結んであった。
「まもちゃん……!」
うさぎの潤んでいた瞳はあっという間に新しい涙を生んでしまって。衛は切なげに笑みを浮かべながらそれを唇で拭ってあげた。
『元気出して うさ』
そんな願いを込めながら。
丁寧に箱を開ければ、そこには月の雫のように煌めくムーンストーンとそれに寄り添うように三連の緑色に淡く光る石が施されたネックレスがあり、うさぎの瞳を輝かせた。
「綺麗……!」
「ムーンストーンはさ、うさの誕生石だろ? それと、その緑色の石はペリドット。その……八月の誕生石で、トクベツに作ってもらったんだ」
八月は衛の誕生月だ。何となく説明するのが気恥ずかしくて頬をかいてしまう彼だったが、そんな照れたそぶりも、こうして様々なことを考えて贈り物をしてくれた事実も、うさぎにとっては全てが堪らなく愛おしくて。溢れる想いが込み上げて思いっきり恋人に抱き付いた。
「うさ「嬉しい! まもちゃん……うれしいっ」
ペリドットは暗闇を照らす光、太陽の石とも呼ばれ、古来から人々に愛されてきた。ムーンストーンは言わずもがな月の石。二人の誕生石はあつらえたかのように引き合い、力を与え合い、煌めく。それはきっと二人の心も聖石のパワーも照らすだろう。
「実は、おそろいにした」
「へ?」
熱い抱擁とキスを交わしたあと。衛は自分の左耳のピアスをトンと指差してウインクする。すると、そこには確かにペリドットを真ん中の石に据えてシックな色の金具に小さなムーンストーンが寄り添いきらりと光るピアスがうさぎの瞳に映った。くすっとイタズラが成功した時の少年のような笑みを向ける恋人にうさぎの胸は高鳴る。
この年上の恋人は、なんて可愛いことをするのだろうか。
今一度ぎゅうっとうさぎから抱きついて暴れ出しそうな心臓をなんとか鎮めようと彼の香りをめいっぱい吸い込むが、頭を軽くポンポンと叩かれて、ごまかしきれない真っ赤な顔のまま視線を上げた。
「うさも、ネックレス……付けて?」
「え、あ! うん!!」
彼の目の奥には独占欲という平手打ちしたって出ていかないどうしようもない感情を秘めているのだが、それはもうあまり隠そうとも思っていなかった。
いつだって目の前の恋人には知っていて欲しい事だったし、自分の嘘偽りのない本心であるのだから。
衛は、付けてあげるよと声をかけてうさぎからネックレスを受け取ると、後ろを向いた彼女に繊細な留め具を付ける。シャラリと小さな音を立てて首筋から流れるネックレスを嬉しそうにトップを持って眺めるうさぎ。そしてそんな無防備なうなじに衛はキスを贈った。
ぴくっと反応する可愛い真っ赤な耳に唇を寄せて囁く。
「愛してる、うさ」
その言葉にうさぎは振り返った瞬間。キスを返す。
「私も。あいしてる……」
長い長いキス。しかし次に掛けられる声に二人は勢いよくそちらへ向いた。
「そろそろいーい?」
「ほたっ!」
「ほたるちゃん?!」
「もー、二人ともキス長ーい」
いつからそこに? いつから見られてた?!
という疑問も羞恥も襲ってくる二人なのだが。下手に詮索しようものならそのまま強力な外部ファミリーにも色々と筒抜けになってしまいそうで。
それより何より、ほたるのにこにこの笑顔の中に「さっさとしてくれないかなー?」というドスの効いた声が聞こえてくるような雰囲気がおっかなすぎて、王子と姫は赤面して謝るしかないのであった。
「うさ、本当は予約したレストランで渡そうと思っていたんだけど……」
ここから先に踏み出せば、恋人としての二人だけの時間はしばらくないだろう。だから今ここでどうしても渡したいと衛は思った。
「まもちゃん?」
引き寄せていた左手の指を絡めて繋ぎなおすとその薬指に光る石にそっと口付ける。そして右手でポケットの中に忍ばせていた贈り物を取り出して微笑んで見せた。
「誕生日おめでとう。開けてみてよ」
繋ぐ手をそっと放してうさぎに差し出したそれは、パールホワイトの長方形の箱に淡いグリーンのリボンが結んであった。
「まもちゃん……!」
うさぎの潤んでいた瞳はあっという間に新しい涙を生んでしまって。衛は切なげに笑みを浮かべながらそれを唇で拭ってあげた。
『元気出して うさ』
そんな願いを込めながら。
丁寧に箱を開ければ、そこには月の雫のように煌めくムーンストーンとそれに寄り添うように三連の緑色に淡く光る石が施されたネックレスがあり、うさぎの瞳を輝かせた。
「綺麗……!」
「ムーンストーンはさ、うさの誕生石だろ? それと、その緑色の石はペリドット。その……八月の誕生石で、トクベツに作ってもらったんだ」
八月は衛の誕生月だ。何となく説明するのが気恥ずかしくて頬をかいてしまう彼だったが、そんな照れたそぶりも、こうして様々なことを考えて贈り物をしてくれた事実も、うさぎにとっては全てが堪らなく愛おしくて。溢れる想いが込み上げて思いっきり恋人に抱き付いた。
「うさ「嬉しい! まもちゃん……うれしいっ」
ペリドットは暗闇を照らす光、太陽の石とも呼ばれ、古来から人々に愛されてきた。ムーンストーンは言わずもがな月の石。二人の誕生石はあつらえたかのように引き合い、力を与え合い、煌めく。それはきっと二人の心も聖石のパワーも照らすだろう。
「実は、おそろいにした」
「へ?」
熱い抱擁とキスを交わしたあと。衛は自分の左耳のピアスをトンと指差してウインクする。すると、そこには確かにペリドットを真ん中の石に据えてシックな色の金具に小さなムーンストーンが寄り添いきらりと光るピアスがうさぎの瞳に映った。くすっとイタズラが成功した時の少年のような笑みを向ける恋人にうさぎの胸は高鳴る。
この年上の恋人は、なんて可愛いことをするのだろうか。
今一度ぎゅうっとうさぎから抱きついて暴れ出しそうな心臓をなんとか鎮めようと彼の香りをめいっぱい吸い込むが、頭を軽くポンポンと叩かれて、ごまかしきれない真っ赤な顔のまま視線を上げた。
「うさも、ネックレス……付けて?」
「え、あ! うん!!」
彼の目の奥には独占欲という平手打ちしたって出ていかないどうしようもない感情を秘めているのだが、それはもうあまり隠そうとも思っていなかった。
いつだって目の前の恋人には知っていて欲しい事だったし、自分の嘘偽りのない本心であるのだから。
衛は、付けてあげるよと声をかけてうさぎからネックレスを受け取ると、後ろを向いた彼女に繊細な留め具を付ける。シャラリと小さな音を立てて首筋から流れるネックレスを嬉しそうにトップを持って眺めるうさぎ。そしてそんな無防備なうなじに衛はキスを贈った。
ぴくっと反応する可愛い真っ赤な耳に唇を寄せて囁く。
「愛してる、うさ」
その言葉にうさぎは振り返った瞬間。キスを返す。
「私も。あいしてる……」
長い長いキス。しかし次に掛けられる声に二人は勢いよくそちらへ向いた。
「そろそろいーい?」
「ほたっ!」
「ほたるちゃん?!」
「もー、二人ともキス長ーい」
いつからそこに? いつから見られてた?!
という疑問も羞恥も襲ってくる二人なのだが。下手に詮索しようものならそのまま強力な外部ファミリーにも色々と筒抜けになってしまいそうで。
それより何より、ほたるのにこにこの笑顔の中に「さっさとしてくれないかなー?」というドスの効いた声が聞こえてくるような雰囲気がおっかなすぎて、王子と姫は赤面して謝るしかないのであった。
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