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「十番街を中心に、この星全体に街のクリスタル化と人々のクリスタル内での休眠状態が広がっているわ」
亜美が司令室のコンピューターを前にして皆に伝える。母の携帯は圏外となり繋がらなかった。海外にいるはずの父は無事だろうか。そんな不安もあったのだが、このクリスタルのエネルギーが負のものではなくこれまでに幾つもこの星を救ってきたうさぎのクリスタルによるものであることもすぐに分かったので、今後どうしていくのか冷静に考えることに集中できていた。
そして新たに分かったことがある。せつなが亜美の言葉に続いて声を上げた。
「ブラックムーンとの戦いの時にあなた達が見たクリスタルトーキョーの変革はプリンセスの成人を期にもっとゆっくりと進んでいったわ。これは私がまだ見たことのない歴史の始まりよ」
「ゴールデンクリスタル。きっとプリンスのクリスタルが完全に覚醒していることが大きいようね」
みちるがネヘレニアとの戦いを思い出しながら呟いた。
「それに、戦士としての私たちの力が強くなっていることも関係してるんじゃないか?」
まことは胸を押さえて、自身の星の輝きを確かめるように声を上げる。
「それはつまり、あの二人を守る為の力が充分に備わったって事ね」
美奈子の言葉を受けて、はるかが一歩前に出て皆を見た。
「戦士としてもそうだが、太陽系のプリンセスとしての力もキャッスルも蘇った。それに私達外部太陽系の戦士が地球に集結してプリンセスを側でお守りしているのも、せつなが言っているように新しい歴史の一つの要因になっているんだろうな」
「はるかパパの言う通り。私も本来なら覚醒してなかった。けれど今は皆とここにいる。それが本当に嬉しいの。うさぎお姉ちゃんの二十歳の誕生日……今日がこの星を新たに作り上げていく始まりの日になるのね」
ほたるは同じ日が誕生日である、今は遠くの時代を生きるもう一人のプリンセスの事を想って胸に手を当てた。
ほたるが遠くを見つめる瞳には万物が映っているようにも見える。そんな風にレイは思う。土星の戦士は前世の記憶と力をこのメンバーの中でも誰よりも強く引き継いでいると己の直感と霊感でも捉えていた。
「ええ。うさぎと衛さん……いいえ、クイーンとキングと言った方がいいかしら」
「レイちゃん、それはまだ早いと思うの。うさぎちゃんはうさぎちゃん。衛さんは衛さん。今はまだ、そのままで」
ルナが目を僅かに下げる。衛とのバースデーを楽しみにしていたうさぎの笑顔がよぎった。この変革は地球の平和や月の王国の再建を考えれば喜ばしい事のはずなのに。プリンセスの側近としてではなく、『月野うさぎ』の相棒として彼女の側にいた長い時をいつの間にか何より大切にしていたルナにとって、胸中に切なさが広がってしまうのだった。
「そうね」
返事をするレイの瞳も微かに揺らぐ。使命を全うするのは自分達に与えられた役割。そして、同時に夢だって叶えたい。そう願うのは欲張りなのだろうか?
ネヘレニアとの戦いの最中で、仲間と共に貫きたい戦士としての使命は紛れもなく本物の意思であったし、火野レイとしての叶えたい夢も本当の気持ちなのだ。こんな風に将来の絵図を沢山描けるようになったのもうさぎに出逢えたからなのだと思っている。そして今ここにいる仲間も。こんなに刺激し合える彼女達に出逢えたことは、例え前世からの結びつきだとしても火野レイとしては何にも代えられない宝物なのだ。それは、レイだけでなく彼女達全員が抱いている想いだった。
亜美が司令室のコンピューターを前にして皆に伝える。母の携帯は圏外となり繋がらなかった。海外にいるはずの父は無事だろうか。そんな不安もあったのだが、このクリスタルのエネルギーが負のものではなくこれまでに幾つもこの星を救ってきたうさぎのクリスタルによるものであることもすぐに分かったので、今後どうしていくのか冷静に考えることに集中できていた。
そして新たに分かったことがある。せつなが亜美の言葉に続いて声を上げた。
「ブラックムーンとの戦いの時にあなた達が見たクリスタルトーキョーの変革はプリンセスの成人を期にもっとゆっくりと進んでいったわ。これは私がまだ見たことのない歴史の始まりよ」
「ゴールデンクリスタル。きっとプリンスのクリスタルが完全に覚醒していることが大きいようね」
みちるがネヘレニアとの戦いを思い出しながら呟いた。
「それに、戦士としての私たちの力が強くなっていることも関係してるんじゃないか?」
まことは胸を押さえて、自身の星の輝きを確かめるように声を上げる。
「それはつまり、あの二人を守る為の力が充分に備わったって事ね」
美奈子の言葉を受けて、はるかが一歩前に出て皆を見た。
「戦士としてもそうだが、太陽系のプリンセスとしての力もキャッスルも蘇った。それに私達外部太陽系の戦士が地球に集結してプリンセスを側でお守りしているのも、せつなが言っているように新しい歴史の一つの要因になっているんだろうな」
「はるかパパの言う通り。私も本来なら覚醒してなかった。けれど今は皆とここにいる。それが本当に嬉しいの。うさぎお姉ちゃんの二十歳の誕生日……今日がこの星を新たに作り上げていく始まりの日になるのね」
ほたるは同じ日が誕生日である、今は遠くの時代を生きるもう一人のプリンセスの事を想って胸に手を当てた。
ほたるが遠くを見つめる瞳には万物が映っているようにも見える。そんな風にレイは思う。土星の戦士は前世の記憶と力をこのメンバーの中でも誰よりも強く引き継いでいると己の直感と霊感でも捉えていた。
「ええ。うさぎと衛さん……いいえ、クイーンとキングと言った方がいいかしら」
「レイちゃん、それはまだ早いと思うの。うさぎちゃんはうさぎちゃん。衛さんは衛さん。今はまだ、そのままで」
ルナが目を僅かに下げる。衛とのバースデーを楽しみにしていたうさぎの笑顔がよぎった。この変革は地球の平和や月の王国の再建を考えれば喜ばしい事のはずなのに。プリンセスの側近としてではなく、『月野うさぎ』の相棒として彼女の側にいた長い時をいつの間にか何より大切にしていたルナにとって、胸中に切なさが広がってしまうのだった。
「そうね」
返事をするレイの瞳も微かに揺らぐ。使命を全うするのは自分達に与えられた役割。そして、同時に夢だって叶えたい。そう願うのは欲張りなのだろうか?
ネヘレニアとの戦いの最中で、仲間と共に貫きたい戦士としての使命は紛れもなく本物の意思であったし、火野レイとしての叶えたい夢も本当の気持ちなのだ。こんな風に将来の絵図を沢山描けるようになったのもうさぎに出逢えたからなのだと思っている。そして今ここにいる仲間も。こんなに刺激し合える彼女達に出逢えたことは、例え前世からの結びつきだとしても火野レイとしては何にも代えられない宝物なのだ。それは、レイだけでなく彼女達全員が抱いている想いだった。