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六月三十日。うさぎの二十歳の誕生日の十番街は、いつもと変わらない風景が広がっていた。
うさぎは昨日ルナに見せた服に身を包み、待ち合わせ場所へと急いでいた。家まで迎えに行く、と衛にも言われたのだが、その前にパーラークラウンで予定があった為、そのまま向かうから大丈夫だと伝えていた。
美奈子たちは勿論、この数年で日本に拠点を置いたはるかやみちる、せつなやほたるも一緒だ。みんなに誕生日を祝われてうさぎは心の中が温かさで満たされ、ついつい会話にも花が咲いてしまった。気付けば待ち合わせの10分前になってしまっていたのである。
時は少しだけ遡り、パーラークラウン店内。うさぎはみんなに手を振って席を立ち上がった。
「まもちゃんも呼べばいいじゃない」
美奈子がぶーたれた顔で引き止めたが、はるかとみちるがそれを制する。
「あら、美奈子ったら野暮ねえ、二十歳の誕生日なのよ」
「そうだぞ、私たちだってお姫様を衛に取られるのは癪だが、プリンセスの笑顔を守るのは私たちの役目だ。違うか? リーダー」
「そりゃ当然! 分かってますけど!」
そこまで言って美奈子はくるりと身体をうさぎに向き直す。
「うさぎ! なんかやばい雰囲気になったらあたしにすぐ連絡すんのよ?」
「まもちゃんいっつも優しいし、そんな危ないみたいな雰囲気にはならないよ?」
ヘンな美奈P、とキョトンとした顔で言われて脱力した。
「また明日ね、うさぎちゃん」
「衛さんによろしくな」
どよんと落ち込む美奈子の背をレイは面倒くさそうに撫でてやっている。その横で亜美とまことは笑顔で手を振った。
去りゆく笑顔の姫を見送るはるかは、やれやれと息を吐いた。
「まあ、美奈が心配するのも分かるよ。我らがプリンセスは最近ますます美しくなられた」
ええそうね、とみちるが続ける。
「可憐さは以前のまま。そこへ、優雅さと洗練された心の美しさが備わったみたいね」
「それは……約束の日が近づいている事を示してるのかもしれない……」
ほたるの言葉にその場にいた彼女達は守護戦士の顔つきになる。そして、破滅と誕生の戦士へと視線を集中させた。
「ほたる、確かにそうかもしれない。けれどそれは、今までのようなイレギュラーな負のエネルギーではないわ。新たな繁栄の時を約束した、正当な歴史を紡ぐための変革のはずよ」
せつなはほたるの肩に手を置いて、ゆっくりと自分にも言い聞かせるように話す。それを見ていた美奈子は「でも」と口を開いた。
「正直実感ないわ。だって、要するにあのクリスタルトーキョーがこの東京にできて、うさぎがクイーンに、まもちゃんがキングになるって事でしょう?」
「けれど、美奈だって気づいてるでしょ? 私たち自身にも何か今までと違う変化の兆しが出てるって事を」
「レイちゃんの言う通りかもしれない。私ね、セーラークリスタルが何かを伝えるかのように熱くなって、夜に目覚めてしまう事が何度かあるわ」
黙り込む美奈子に代わって話したのは亜美だった。顎に手を添えて考え込むように俯いて言うと、まことが背中を軽く叩いて大丈夫!と声を掛ける。
「どんな時も一人じゃない。みんながいる。みんなできっと、乗り越えられるさ!」
まことの明るい声に、彼女たちはふと肩の力が抜けて微笑み合った。
ーーそうだ。私たちは一人じゃないーー
うさぎは昨日ルナに見せた服に身を包み、待ち合わせ場所へと急いでいた。家まで迎えに行く、と衛にも言われたのだが、その前にパーラークラウンで予定があった為、そのまま向かうから大丈夫だと伝えていた。
美奈子たちは勿論、この数年で日本に拠点を置いたはるかやみちる、せつなやほたるも一緒だ。みんなに誕生日を祝われてうさぎは心の中が温かさで満たされ、ついつい会話にも花が咲いてしまった。気付けば待ち合わせの10分前になってしまっていたのである。
時は少しだけ遡り、パーラークラウン店内。うさぎはみんなに手を振って席を立ち上がった。
「まもちゃんも呼べばいいじゃない」
美奈子がぶーたれた顔で引き止めたが、はるかとみちるがそれを制する。
「あら、美奈子ったら野暮ねえ、二十歳の誕生日なのよ」
「そうだぞ、私たちだってお姫様を衛に取られるのは癪だが、プリンセスの笑顔を守るのは私たちの役目だ。違うか? リーダー」
「そりゃ当然! 分かってますけど!」
そこまで言って美奈子はくるりと身体をうさぎに向き直す。
「うさぎ! なんかやばい雰囲気になったらあたしにすぐ連絡すんのよ?」
「まもちゃんいっつも優しいし、そんな危ないみたいな雰囲気にはならないよ?」
ヘンな美奈P、とキョトンとした顔で言われて脱力した。
「また明日ね、うさぎちゃん」
「衛さんによろしくな」
どよんと落ち込む美奈子の背をレイは面倒くさそうに撫でてやっている。その横で亜美とまことは笑顔で手を振った。
去りゆく笑顔の姫を見送るはるかは、やれやれと息を吐いた。
「まあ、美奈が心配するのも分かるよ。我らがプリンセスは最近ますます美しくなられた」
ええそうね、とみちるが続ける。
「可憐さは以前のまま。そこへ、優雅さと洗練された心の美しさが備わったみたいね」
「それは……約束の日が近づいている事を示してるのかもしれない……」
ほたるの言葉にその場にいた彼女達は守護戦士の顔つきになる。そして、破滅と誕生の戦士へと視線を集中させた。
「ほたる、確かにそうかもしれない。けれどそれは、今までのようなイレギュラーな負のエネルギーではないわ。新たな繁栄の時を約束した、正当な歴史を紡ぐための変革のはずよ」
せつなはほたるの肩に手を置いて、ゆっくりと自分にも言い聞かせるように話す。それを見ていた美奈子は「でも」と口を開いた。
「正直実感ないわ。だって、要するにあのクリスタルトーキョーがこの東京にできて、うさぎがクイーンに、まもちゃんがキングになるって事でしょう?」
「けれど、美奈だって気づいてるでしょ? 私たち自身にも何か今までと違う変化の兆しが出てるって事を」
「レイちゃんの言う通りかもしれない。私ね、セーラークリスタルが何かを伝えるかのように熱くなって、夜に目覚めてしまう事が何度かあるわ」
黙り込む美奈子に代わって話したのは亜美だった。顎に手を添えて考え込むように俯いて言うと、まことが背中を軽く叩いて大丈夫!と声を掛ける。
「どんな時も一人じゃない。みんながいる。みんなできっと、乗り越えられるさ!」
まことの明るい声に、彼女たちはふと肩の力が抜けて微笑み合った。
ーーそうだ。私たちは一人じゃないーー