スキボタンお礼小話

『morning kiss?』

朝、待ち合わせに現れた衛は、珍しく先に着いている恋人に目を丸くした。
「おはよう、うさこ。今日は早いじゃないか。どうした?」
「おっはよー!まもちゃん!えへへ、頑張って早起きしたよ。」
ぴょこんと兎の耳が生えたように見える彼女は褒めて褒めてと目を輝かせて衛を見つめた。
恋人のその様子に小さく笑った衛は偉い偉いと頭を大きな手でポンポン撫でる。
するとほわっと顔を綻ばせたうさぎはぎゅうっと彼に抱き着いた。
そんな彼女を優しく抱きしめる。
柔らかな、平和なひと時。

「今日はまもちゃんのこと、いつもより長く独り占めできるね。」
ぽつりと零れた声は妙に艶やかに聴こえて衛の心拍数が上がる。
「うさこ…」
衛の真剣な、でもどこか余裕のない顔にうさぎもはっと息が止まる。
言葉はいらない。その唇が、互いの温もりに触れるだけで。シュワシュワと炭酸水が弾けるように彼らの胸は踊り続ける。いつもよりも醒めない熱。

「うさこ、まだ時間あるよな?」
「えっと…うん。あと5分くらい…」
答えるや否や衛は彼女の手を引き、少し人目のつかない公園の木の影へといざなった。

「まもちゃ…っ?!」

キス、キス、キス。

朝の挨拶のそれを軽く飛び越えた濃紺の夜のキス。

そんな風に思わせるほどの衛からの深くて甘いキスにうさぎの頭の中はスパークした。
引き金になったのは自分である事には気付いておらず。ただ衛からのキスはどんなものでも嬉しくて気持ちいいと感じてしまう彼女は、背中に必死にしがみついて溢れる想いを全て残さず受け止めた。

唇をようやく離してうさぎを見た途端。その隠しきれない色香に、自分のしでかしてしまった事態に気付いた衛は慌てた様子で謝った。

しかしふにゃっと笑った彼女が言った言葉は衛の心を全て掻っ攫っていく。

「まもちゃん、だいすき」


その後ギリギリまで唇を離さなかった2人は結局いつも通りの時間に登校する事になるのだが。この場合は仕方がないだろう。

おわり
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