最果ての宿り木

「コスモス、目を開けて」
 あたし、夢、見てるのかな。肩と腰には大きな手。頬に触れるのは厚い胸板。戦いの先にも失わずにそばにいて欲しいと、何度も何度も願っていた愛する人の温もり。
「あなた……」
 閉じたままの視界。乾いた唇でそれだけ紡ぐともう一度、今度ははっきりとした熱で深く覆われて、胸の内側から光が蘇ってくる気がした。ひび割れたシルバームーンクリスタルが元の姿へと戻り、息を吹き返すのを確かに感じたの。
 辺りから、もぎたての青リンゴのような香りがしてくる。そう。これは、カミツレの香りだ。

 
 ゆっくりと瞼を開ける。そうしたら鼻先が付くくらいの近さで大好きな、大好きなその人が蒼い瞳であたしを見つめていた。
「コスモス……っ」
 抱きしめてくれるその力は確かにあなたのもの。
 あたしがずっと、ずっとずっと求めていた光。

「……っ!!」

 胸が、熱い。せっかく目を開けたのに、涙で、なにも見えない。

「コスモス!」
「良かった」
「ごめんね」
「ありがとう」

 次々に懐かしい声が呼び掛けてくる。大切な、仲間。大事な、友達……。

「あたし、みんなの所に戻って、来られたの?」
「ああ」
 あなたが震えた声で笑顔で返してくれる。
「みんなも、あたしの所に、戻ってきてくれたの?」
「そうよ、コスモス。あなたの光があたし達を導いてくれたの」
「見て、コスモス」
 彼女が、広がる大地に手を差し出して言う。
 星空は白み、日が登る。柔らかな陽を受けて揺れる一面に広がる花々。
 そのあまりの美しさに言葉を失った。
 胸を震わせて彼にしがみ付くと、それ以上の力で抱きしめ返してくれる。
 そんな当たり前のようでいて、決して当たり前ではない事が、今のあたしには堪らなく嬉しい。

 永遠は、こんな所にあったのね。
 
 その光景は新しく生まれ変わったあたし達を祝福してくれているみたいで。
 この一瞬こそが永遠で。そしてこの時の為にあたし達は生きてきた。そんな風に思えたの。



 Happy birthday、大好きなみんな

 Happy birthday、新しいあたし

 Happy birthday、愛しい星

 
 どうか、この生が閉じるまであたしの胸の中の星が輝き続けますように。

 平和で温かさを取り戻したこの星で。

 愛する人と、大好きなみんなと一緒に。



おわり
2021.6.30


コスモス、おめでとう
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