最果ての宿り木

 かつてのあたし、『月野うさぎ』とその大切な人達があるべき所へ還ってゆく光の洪水を見届けた後、あたしもその身を原初の海と溶け合わせ、ガーディアンコスモスを前にしていた。

「あら。あなたがここにくるのは何度目かしら?でも……失われていた光が戻ってる。かつて見たことも無いくらい強い輝きだわ。あの子のおかげ?」
 時間が存在しないこの場所は、過去のことも未来のことも同等に存在する。そんな不可逆を可能にする地にあり続けるガーディアンコスモスは、どんな時代からもここに降り立つ人間には等しく微笑んで迎えてくれるのだ。
「ええ、そうね」
「あなたにとって、はるか昔の自分に救われるのは、どんな気持ち?」
「すごく、温かな気持ちよ」
「ふふ、胸の中の星のおかげだけでもなさそうね」
 ガーディアンコスモスはとびきりの笑顔を見せる。それはまるで人間のようで、これまで何度もやり直しにここへ来たあたしが初めて見る表情だった。
 だからあたしも、気づけばあの頃のうさぎのように笑っていた。

「さあ選択の時よ。コスモス、あなたはどう生きていきたいの?」
「あたしは……



 最果ての地に戻ってきたあたしは、失ってしまったもの、愛する人、大切な仲間のことをようやく受け入れる事ができるようになった。
 受け入れられなくて、悲しみの淵に沈んで。どうしても本当の力を出す事が叶わなくなったあたし。だからやり直そうと何度も何度も時を戻して戦いを避ける方法を探した。
 けれど、どんなに違う道を辿っても、結局は最後には全てを失ってしまうの。それだけは、変わらなかった。
 だから、逃げた。

 けれど今のあたしは違う。だって思い出したの。どんなにどんなに失っても、諦めないで、逃げないで、受け止めて、そして信じる。そうすれば胸の中の星はいつだって無限のパワーを出せるのだと。
 全てを捨て去る勇気と、全てを受け入れる勇気。両方を取り戻したあたしは、今ならきっとやり直せる。
 ロッドを揺るぎない意志の強さで握りしめ、セーラーカオスが待ち受けるその場所へと飛び立った。

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