最愛を象る(遠藤)

彼は、ベリルの命令で動いてはいるが、実際うさぎを目の前にすると触れずにはいられなくなる。別に接触しなくても暗示にかけたり話術でどうにか丸め込むことは出来るはず。なのにその手が、腕が、うさぎに触れたくて仕方がない。抗えない。
それが何故なのかは深くは考えない。全ては目的の為だと思っている。
秘密を聞き出す為に言葉巧みに話しかけ、「うさぎちゃん」と呼んでも自分の所に堕ちてこない。暗示が掛からないうさぎに苛立ちを覚える。
どうすれば手に入る?キスをすれば?それとももっと深くまで自分を刻み込めば俺だけを見るのだろうか。次第に銀水晶よりもうさぎ自身への執着が強くなっていた。
それを自覚すると、どうしてもうさぎのことが欲しくなる。
けれどうさぎは、「うさこ」と呼んでくれる衛の事しか心を許していなくて、はっきりとした拒絶の色が見えない壁として彼を阻んでいる。
それならば
あいつの顔で
あいつの身体で
あいつの声で
うさぎを奪ってやればいい。

「うさこ」

彼は、前を歩くうさぎをそう言って呼び止める。
警戒色の赤い瞳は、暗い闇夜の色へと姿を変えていた。

to be continued…?
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