タカラモノ(キンクイ、四守護)

~執務室~


「キングは?」

「クイーンのところよ」

「心配なのは分かるけど、こうも仕事を放り投げて何度も行かれちゃさすがに参っちゃうわね」

「仕方がないさ。だって、衛さんだよ?」

「うさうさ病はきっと永遠になくならないわね」

「それに…漸く会えるんだもの」

「ええ。私も早く会いたいわ」

「私も」

「クイーンとキングの次に抱っこさせてもらうのは絶対私だから!」

「いーや!私だ!」

「悪いけど私もそれは譲れない」

「私はアインシュタインについてできるだけ一番に聞かせたいわ」

 守護戦士たちのプリンセス争奪戦はまだしばらく続きそうだ。



~渡り廊下~


「ここは段差があるよ。気を付けて?」

「大丈夫よ。いつも通ってる道だもの」

「いや、もうそれだけ大きいんだから足元もよく見えないだろう?ほら、手を握って」

「ありがとう、まもちゃん」

「君はただでさえ何もないところで転びそうになるんだから本当に気を付けないと。やっぱり俺も公務を休もうか?働いていても落ち着かなくて。お腹の子が心配で書類も頭に入らないよ」

「大丈夫!もう。ほーんとこの子が産まれる前からずいぶん親バカなのね」

「こらこら、うさこそ産まれる前からもうヤキモチ?」

「だぁって~……」

「君と、お腹の子。大事な大事な二人の事で頭が一杯だ。だってもうすぐ…家族が増えるんだから。俺にこれ以上ない幸せを運んでくれるうさには何を言っても、何をしても足りないくらい感謝してるんだ」

「まもちゃん……」

「愛してるよ」

「私も。あ……!」

「何?」

「この子が今お腹の中でポコポコ叩いてきたの。きっと、あたしの事は?って聞いてるのよ」

「ははっもちろん。お前の事も愛してるよ」

「あ、また動いた!」

「ホントだ」

「早く…会いたいわね」

「お前が産まれてくるのを、パパもママも皆…楽しみに待っているからな」

 お腹に手を置き微笑み合った美しい夫婦は、梅雨の晴れ間の柔らかな陽射しの中、そっと唇を重ねた。


おわり
1/1ページ
いいね!