五章 喪失と希望
1
俺はその時ほど自分を呪ったことは無かった。うさは今、俺の部屋のベッドで静かに横たわっている。
その姿は、いつか未来のクリスタルパレスで見た、ネオクイーン・セレニティと重なった。巨大化したクリスタルに包み込まれて、まるで童話の世界のプリンセスのように安らかに眠っている。
月から地球に戻ってきた俺達は、一ノ橋公園で二人手を繋いでいた。すると突然彼女は強い光に包まれた。
「うさ⁉︎」
俺は咄嗟に手を離す。あまりの輝きに白む視界の中、どうにかうさの姿を確認した。光の発信源がうさの胸元から放たれているのを見てその正体はすぐに分かった。そして、その光に呼応するかのように深い闇がうさの体を蝕もうとしている。
月から地球に降りてきたパワーで奴に気付かれたのか⁉︎
「まもちゃん! カオスが……!」
「くそ!」
俺はゴールデンクリスタルのパワーを解放する。
「早く! 銀水晶のパワーを鎮めて逃げろ!」
しかし、もうカオスは完全にうさのことを捕らえていた。
『見付けたぞ、銀河最強のクリスタル!』
腹の底がずしりと重くなるような、カオスの思念が聴こえてくる。俺の力をするりと躱し、うさの中に入り込もうと徐々に闇を広く深くしていた。
「駄目! 実体が無いから外からの攻撃が効かないわ!」
「ちくしょう! うさ!」
俺はもう一度、うさに手を伸ばす。
「まもちゃん」
この状況には不釣り合いな冷静な声で俺を呼ぶ。
「だめだ。まだ……!」
行くな、一人にさせないって約束したばかりだ。こんな形で、突然試練の時が訪れるだなんて。頼む、待ってくれ!
しかしうさの顔は眩しいほどの強い決意にみなぎっていた。
「大丈夫。私、負けない。まもちゃんから信じる勇気をもらったから。きっと内側からカオスを止めてみせる」
「うさ!」
「だからまもちゃん、心配しないで」
うさの頬には一滴の涙が伝う。
「でももしもカオスが復活してしまったら、迷わず倒して。皆を、地球を守って!」
「うさああ‼︎」
俺は効かないと分かっても押し寄せる闇の嵐を攻撃する。
「大丈夫。私は皆を、あなたを、信じてるから……!」
そしていつもの微笑みを浮かべると、銀水晶に祈りを込めた。
「うさ!待ってくれ‼︎」
「うさぎちゃん!」
ルナも必死に叫ぶ。しかしうさは微笑んだまま、闇ごとクリスタル化した光で自らを包み込んでいった。
辺りはまた静けさを取り戻す。冷たい風が吹き抜ける。
俺の前には深い深い眠りについた最愛の人が横たわっていた。
俺はその時ほど自分を呪ったことは無かった。うさは今、俺の部屋のベッドで静かに横たわっている。
その姿は、いつか未来のクリスタルパレスで見た、ネオクイーン・セレニティと重なった。巨大化したクリスタルに包み込まれて、まるで童話の世界のプリンセスのように安らかに眠っている。
月から地球に戻ってきた俺達は、一ノ橋公園で二人手を繋いでいた。すると突然彼女は強い光に包まれた。
「うさ⁉︎」
俺は咄嗟に手を離す。あまりの輝きに白む視界の中、どうにかうさの姿を確認した。光の発信源がうさの胸元から放たれているのを見てその正体はすぐに分かった。そして、その光に呼応するかのように深い闇がうさの体を蝕もうとしている。
月から地球に降りてきたパワーで奴に気付かれたのか⁉︎
「まもちゃん! カオスが……!」
「くそ!」
俺はゴールデンクリスタルのパワーを解放する。
「早く! 銀水晶のパワーを鎮めて逃げろ!」
しかし、もうカオスは完全にうさのことを捕らえていた。
『見付けたぞ、銀河最強のクリスタル!』
腹の底がずしりと重くなるような、カオスの思念が聴こえてくる。俺の力をするりと躱し、うさの中に入り込もうと徐々に闇を広く深くしていた。
「駄目! 実体が無いから外からの攻撃が効かないわ!」
「ちくしょう! うさ!」
俺はもう一度、うさに手を伸ばす。
「まもちゃん」
この状況には不釣り合いな冷静な声で俺を呼ぶ。
「だめだ。まだ……!」
行くな、一人にさせないって約束したばかりだ。こんな形で、突然試練の時が訪れるだなんて。頼む、待ってくれ!
しかしうさの顔は眩しいほどの強い決意にみなぎっていた。
「大丈夫。私、負けない。まもちゃんから信じる勇気をもらったから。きっと内側からカオスを止めてみせる」
「うさ!」
「だからまもちゃん、心配しないで」
うさの頬には一滴の涙が伝う。
「でももしもカオスが復活してしまったら、迷わず倒して。皆を、地球を守って!」
「うさああ‼︎」
俺は効かないと分かっても押し寄せる闇の嵐を攻撃する。
「大丈夫。私は皆を、あなたを、信じてるから……!」
そしていつもの微笑みを浮かべると、銀水晶に祈りを込めた。
「うさ!待ってくれ‼︎」
「うさぎちゃん!」
ルナも必死に叫ぶ。しかしうさは微笑んだまま、闇ごとクリスタル化した光で自らを包み込んでいった。
辺りはまた静けさを取り戻す。冷たい風が吹き抜ける。
俺の前には深い深い眠りについた最愛の人が横たわっていた。