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 衛は待ち合わせの場所でうさぎの姿を探している。不意に、昨夜四天王と話していた事を思い出し、ポケットの中に持っていた物を強く握った。

 衛が大事に保管している四つの翡翠に宿る四人の魂が、衛と向き合って晴れやかな顔をしている。
「マスター、ここ数日、あなたの内なるエネルギーが強い輝きで溢れ始めています」
 クンツァイトが瞳を潤ませて珍しく感情的に話し始めるのを見て、衛は「分かっているさ」と宥めるように返した。
「ようやくマスターも収まるところに収まるって訳ですか」
 ネフライトが腕を組み、うんうん頷きながら言うと、ジェダイトが微笑する。
「感慨深いですね」
「ずっとプリンセスを想い続けた王子の粘り勝ちってとこかな」
 ゾイサイトの揶揄うような口調に、衛は口角を上げた。
「ああそうだよ、悪いか?」
「うわ、怖ーい。貴方の本性、プリンセスはご存知なんですかー?」
「言っとくが俺だけじゃないから。生まれ変わって地場衛として、月野うさぎとして出会って……ちゃんと、今の俺達の気持ちが互いに向けられているんだ。うさも俺の事を想ってくれている」
「そこまで言い切られるとは。マスターも精神面が随分とご成長されたようですね」
「そうでなければ、これからもきっと過酷な未来を生きていくあいつの隣にいられる資格が無いって気付いたからな。俺は、うさの隣にいる権利を失いたくない」
「なぜ?」
 衛は聞き返してきた白銀の男を真っ直ぐに見つめ、少し口を曲げると照れを隠すようにぶっきらぼうに答えた。
「愛しているからに決まっているだろう?」
 しかしその言葉は嘘偽りのない響きを宿していて、四人は主人の意思を静かに受け止める。そして自然と笑みを浮かべて消えていった。

 衛はうさぎへ伝える以外に、自分の思いを吐露する事は少ない。しかし昨夜は、例え相手が亡霊であっても、もはや家族のような間柄の四天王に決意を話した。それは思い出しただけでも顔が熱くなるほど恥ずかしかったのだが、うさぎへの愛情は自分の中では一生手放す事が出来ないものだと確信しているから、話したことに後悔はしていない。しかし、
「あいつら、ほとんど俺の保護者みたいなもんだからな……」
 恥ずかしいものは恥ずかしかった。


「まもちゃん!」
 そこまで思い出していると、恋人がこちらに駆けてきて呼ぶ声が聞こえてきて笑顔で迎える。しかし

 それは突然起こった。

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