FF7・ヴィンユフィ短編
*親子*
──弛んどる
中年の男の低く威厳のある声が、ウータイの奥に建つ総本山の、その中にひっそりと存在する、微かに墨汁の香りが漂う書庫に響いた。
「は~?ちゃーんとやってんじゃんか!」
男の逞しい髭に囲まれた口から出てきた言葉に、言われた娘は修行のため読んでいた巻物から顔を上げると、心底うんざりした表情で堀の深い男の顔──彼女の父親であり、ウータイという一国を束ねる現領主、ゴドー・キサラギの顔を見上げた。
そんな口を開けば賑やかを通り越して騒がしい、一人娘であり次期領主であるユフィ・キサラギの、その変顔とも見て取れる飽き飽きしたと言いたげな表情に、ゴドーは盛大な溜め息を吐いた。
(全く……浮かれおって)
ユフィは次期領主の、同時に五強聖の『総』の立場を受け継ぐための修行をしに、所属していた世界再生機構、通称『WRO』を一度抜けて、このウータイの地に戻って来ている。
修行なのに親子喧嘩が勃発する事以外には特に問題もなく修行をこなしていたユフィだったが、始まってから三ヶ月経った今、どうも心ここに在らず状態が続き、遂には苛つきまで見せるようになった。
本来なら「修行に私情を挟むな」と一喝しているところだが、それを言ったが最後、星に還った妻から「昔の貴方にそっくりね」と、鈴を転がす様な声音で笑われるに決まっているため、喉から出そうになる度にグッと堪え、その言葉を飲み込んでいる。
その代わり、そんな娘の修行に身が入っていない理由に、師匠として、また父親として、呆れと困惑がない交ぜになった頭を支えるように、こめかみに人差し指を押し付ける事が増えた。
「どーせ『反抗ばっかりしおって』って思ってるんでしょ~?」
不機嫌を滲ませながら見上げて来る娘に、「なら言われる前にしっかりしろ」と、こめかみに人差し指を押し付けた体勢のまま、ゴドーは再び溜め息を吐いた。
(……なんの制限もしとらんというのに)
目を瞑った暗闇の中に見えるのは、この星の二度目の危機を救ったとされる、背が高く漆黒の長い髪を靡かせる、赤いマントを身に付けた男の姿……。
(そろそろ頃合いか……)
一ヶ月前、ユフィの暮らす家の前で二人でいた姿を思い出す。まるで逢い引きでもしているかのような二人の行動に、昔の自分と妻を重ねて、ゴドーは内心苦笑を漏らした。
二人が恋仲なのは知っていた……というより、男から猛烈で熱烈な意志表明をされたので、知らない振りを続ける事は不可能だった。それこそ修行の前までは「帰省」と称して一緒にウータイ観光までしていたし、この総本山にも数回来てはあの男はきっちりと、それこそ実の娘以上に礼儀正しく律儀に挨拶をしては“手土産”まで持って来ていたのだ。
手土産に関しては、始めこそWROとの組織的な情報共有だと思いもした。しかし、どうやらそうではないらしい男の姿勢に、ゴドーはいつしか複雑な思いに唸るようになった。
手土産はいつもユフィの、それも次期ウータイ領主の立場の危機に関してだった。
どうやら国内では手出し出来ないと踏んだ反勢力の数人が、海を渡ってまでユフィを次期領主の座から引き摺り下ろそうとしているらしい。
そんなものだ、と、ゴドーは思う。どんなに努力しようが名を残そうが、反対する者は必ずいる。自分が領主の座を継承する時もそうだった様に、次は娘が乗り越える時が来たかと、時代は変われど未だ残る苦々しい部分に、赤い瞳の前で小さく溜め息を吐いた。
そして男は静かな口調で告げた後、必ずこちらの判断をじっ、と待つのだ。
WROの協力要請であれば、もっと正式な申し込みがあるだろう。だが男はただただユフィの身の危険を告げるだけで、組織的な話は一向にしてこない。
要は、男の個人的な行動なのだ。そもそもそんな国内の内情に関して、協力関係にあれどWROは口出ししてこない。
だからこそ、男のその愛情を伝えつつ相手の意向を尊重する行動の意味に頭を抱えた。そんな物騒で情熱的な挨拶をされるなど、ゴドーは夢にも思っていなかった。一国を担う存在と言えど、しっかりとした肩書きのない娘の前では一人の父親なのだ。娘が連れて来た男の挨拶のやり取りぐらい夢を見る事はある。
そう確信するぐらい、男の行動はユフィと将来を共に歩む覚悟は出来ていると主張していた。本人が聞いたら憤慨するだろうが、実際ユフィの面倒を呆れもせず見てくれていると思う。
だから、一度試してみた。
「……任せる」
一言、そう返した。これで男が間違えたら、ユフィとの未来を断るつもりだ。そして同時に、内心どう動くのか楽しみな自分がいるのも、去っていく男の背を見ながら自覚していた。
そんなやり取りから数ヶ月後、遂に男は行動に出たようで、海を渡っていた愚か者数人が、怪我はなけれどトボトボとした足取りで戻って来た。
『不倶戴天を使いこなすなんて……流石ですね、ユフィさんは』
実際何をどう行動したのかは知らない。けれど、血気盛んだった者たちはその鳴りを潜め、ただ一言、ポツリとそう呟いたのだった。
流石ユフィと、反対派は言った。決して「流石ヴィンセント」とは言わなかった。それはユフィが自ら領主に相応しいことを証明した台詞だった。
メテオ騒動時に活躍しても、国に帰って星痕症候群の蔓延を抑えようと行動しても、二度目の世界の危機から守り抜いたとしても、反対勢力はユフィを認めなかった。
そんな者たちが、まるで自分の一部の様に不倶戴天を難なく使いこなすユフィを認め、おずおずと国に帰って来た。男に任せた以上詮索する事もしなかったが、男がユフィに手を貸した、裏で手を回した、という事はないのだろう。強いて言えばユフィが動く切っ掛けを与えたのだろうと見当を付けるが、もし仮に力を貸していたならば、反対派はユフィを認めなかった。
反対勢力を黙らせる事を、ユフィが自ら行動で示した……それは次の世代の、そして新しいウータイの始まりとして申し分なかった。
成長した、と娘に思う。五強の塔で自分を倒した時から、世界を知るべくWROに加入すると再び国を後にした時から、また一段と力を身に付けていると、ゴドーは感じた。そして「あのじゃじゃ馬を手懐けるのは彼しかいない」と、男に対してゴドーの心は決まった。男はウータイが求める強さを持っていたのに加え、成り立ちは違えど自分たちと同じ様にモンスターに変身する事も出来る。唯一国外の者という彼の生まれはあったが、時代が時代だ。もうそんな事を言う世界ではないのだろうし、娘に恨まれるのは真っ平後免だ。
ゴドーは国の長として、娘の親として、あの男──ヴィンセント・ヴァレンタインを評価せずにはいられなかった。
そんなやり取りを経て、ユフィの修行が本格的に始まり早三ヶ月……国に戻って来た時の威勢は何処へやら、ユフィのやる気の無さはあのゴーリキーまで悩ませる程になっている。
わかっているのだ。かつて自分も、今は亡き妻と同じ様な事をしていたと、遠く輝かしい記憶を懐かしみながら目の前の娘に対して溜め息を吐いた。
要は、寂しいのだ。この一ヶ月、まだ一度も恋人に会えていないことが、ユフィのやる気の無さに繋がっているのは明らかだった。
本人たちは勘違いをしている様だが、会う事に制限はしていない。むしろコソコソして会うぐらいなら堂々と会って挨拶ぐらいしに来いとすら思っている。それで修行が捗るなら何の文句もない。
大方ヴィンセントの都合がつかないのだろうが、待つ事しか出来ないユフィには、会えない時間は悪い意味で相当効いている様だった。
若い者の恋愛にむず痒さを覚えつつ、妻も当時はそう思っていたのかと、時を越えて思い至りながら、娘にとって最大級の、それも親からは絶対に言われたくないだろう話しを口にした。
「仕方ない……今度ヴァレンタイン殿が来たら、お前のぐーたら具合を事細かに伝えるかの」
沈黙が、書庫を包む。
ユフィの目は大きく見開かれ、口は力無く半開きになっている。
その呆けた表情に笑いを堪えながら、ゴドーは更なる一手を投じた。
「この一ヶ月ヴァレンタイン殿も来ておらん様だしの……なんなら手紙にでも書いて送ってやっても」
「何いってんのさバッカじゃないの!?」
言い終わる前にユフィの焦り混じりの怒鳴り声が響き渡り、耳をつんざく様な音にゴドーは顔をしかめた。
顔を真っ赤にして怒る様に、内心拳を上げる。その効果はかつて己が身をもって実証済みなのだ。効かない訳がないだろう……妻の言うところ『似た者親子』なのだから。
「娘のプライベートに首突っ込むとかキモイッ!!」
「ならそのキモイ事をされたくなければしっかり励むのだな」
「わかってるっつーの!!このクソ親父!!」
言うな否や、鼻を膨らませながら、ユフィは持っていた巻物を鼻息荒く再び読み始めた。
きっと「頑張って来るから!!」等と約束したのだろう。羞恥以上に約束破りを知られる方が嫌なのを、ゴドーは痛いほど理解していた。だって自身もそうだったのだから……
プリプリと憤慨しながら修行という名の勉強に戻ったユフィを残し、ゴドーは書庫を後にした。
娘が自分と同じ道を歩んでいる事に苦笑しながら、どうかその先は幸福に恵まれた人生になるように、と願いつつ、少し昔話をしたくなって、ゴドーは妻の墓前へと向かった。
──弛んどる
中年の男の低く威厳のある声が、ウータイの奥に建つ総本山の、その中にひっそりと存在する、微かに墨汁の香りが漂う書庫に響いた。
「は~?ちゃーんとやってんじゃんか!」
男の逞しい髭に囲まれた口から出てきた言葉に、言われた娘は修行のため読んでいた巻物から顔を上げると、心底うんざりした表情で堀の深い男の顔──彼女の父親であり、ウータイという一国を束ねる現領主、ゴドー・キサラギの顔を見上げた。
そんな口を開けば賑やかを通り越して騒がしい、一人娘であり次期領主であるユフィ・キサラギの、その変顔とも見て取れる飽き飽きしたと言いたげな表情に、ゴドーは盛大な溜め息を吐いた。
(全く……浮かれおって)
ユフィは次期領主の、同時に五強聖の『総』の立場を受け継ぐための修行をしに、所属していた世界再生機構、通称『WRO』を一度抜けて、このウータイの地に戻って来ている。
修行なのに親子喧嘩が勃発する事以外には特に問題もなく修行をこなしていたユフィだったが、始まってから三ヶ月経った今、どうも心ここに在らず状態が続き、遂には苛つきまで見せるようになった。
本来なら「修行に私情を挟むな」と一喝しているところだが、それを言ったが最後、星に還った妻から「昔の貴方にそっくりね」と、鈴を転がす様な声音で笑われるに決まっているため、喉から出そうになる度にグッと堪え、その言葉を飲み込んでいる。
その代わり、そんな娘の修行に身が入っていない理由に、師匠として、また父親として、呆れと困惑がない交ぜになった頭を支えるように、こめかみに人差し指を押し付ける事が増えた。
「どーせ『反抗ばっかりしおって』って思ってるんでしょ~?」
不機嫌を滲ませながら見上げて来る娘に、「なら言われる前にしっかりしろ」と、こめかみに人差し指を押し付けた体勢のまま、ゴドーは再び溜め息を吐いた。
(……なんの制限もしとらんというのに)
目を瞑った暗闇の中に見えるのは、この星の二度目の危機を救ったとされる、背が高く漆黒の長い髪を靡かせる、赤いマントを身に付けた男の姿……。
(そろそろ頃合いか……)
一ヶ月前、ユフィの暮らす家の前で二人でいた姿を思い出す。まるで逢い引きでもしているかのような二人の行動に、昔の自分と妻を重ねて、ゴドーは内心苦笑を漏らした。
二人が恋仲なのは知っていた……というより、男から猛烈で熱烈な意志表明をされたので、知らない振りを続ける事は不可能だった。それこそ修行の前までは「帰省」と称して一緒にウータイ観光までしていたし、この総本山にも数回来てはあの男はきっちりと、それこそ実の娘以上に礼儀正しく律儀に挨拶をしては“手土産”まで持って来ていたのだ。
手土産に関しては、始めこそWROとの組織的な情報共有だと思いもした。しかし、どうやらそうではないらしい男の姿勢に、ゴドーはいつしか複雑な思いに唸るようになった。
手土産はいつもユフィの、それも次期ウータイ領主の立場の危機に関してだった。
どうやら国内では手出し出来ないと踏んだ反勢力の数人が、海を渡ってまでユフィを次期領主の座から引き摺り下ろそうとしているらしい。
そんなものだ、と、ゴドーは思う。どんなに努力しようが名を残そうが、反対する者は必ずいる。自分が領主の座を継承する時もそうだった様に、次は娘が乗り越える時が来たかと、時代は変われど未だ残る苦々しい部分に、赤い瞳の前で小さく溜め息を吐いた。
そして男は静かな口調で告げた後、必ずこちらの判断をじっ、と待つのだ。
WROの協力要請であれば、もっと正式な申し込みがあるだろう。だが男はただただユフィの身の危険を告げるだけで、組織的な話は一向にしてこない。
要は、男の個人的な行動なのだ。そもそもそんな国内の内情に関して、協力関係にあれどWROは口出ししてこない。
だからこそ、男のその愛情を伝えつつ相手の意向を尊重する行動の意味に頭を抱えた。そんな物騒で情熱的な挨拶をされるなど、ゴドーは夢にも思っていなかった。一国を担う存在と言えど、しっかりとした肩書きのない娘の前では一人の父親なのだ。娘が連れて来た男の挨拶のやり取りぐらい夢を見る事はある。
そう確信するぐらい、男の行動はユフィと将来を共に歩む覚悟は出来ていると主張していた。本人が聞いたら憤慨するだろうが、実際ユフィの面倒を呆れもせず見てくれていると思う。
だから、一度試してみた。
「……任せる」
一言、そう返した。これで男が間違えたら、ユフィとの未来を断るつもりだ。そして同時に、内心どう動くのか楽しみな自分がいるのも、去っていく男の背を見ながら自覚していた。
そんなやり取りから数ヶ月後、遂に男は行動に出たようで、海を渡っていた愚か者数人が、怪我はなけれどトボトボとした足取りで戻って来た。
『不倶戴天を使いこなすなんて……流石ですね、ユフィさんは』
実際何をどう行動したのかは知らない。けれど、血気盛んだった者たちはその鳴りを潜め、ただ一言、ポツリとそう呟いたのだった。
流石ユフィと、反対派は言った。決して「流石ヴィンセント」とは言わなかった。それはユフィが自ら領主に相応しいことを証明した台詞だった。
メテオ騒動時に活躍しても、国に帰って星痕症候群の蔓延を抑えようと行動しても、二度目の世界の危機から守り抜いたとしても、反対勢力はユフィを認めなかった。
そんな者たちが、まるで自分の一部の様に不倶戴天を難なく使いこなすユフィを認め、おずおずと国に帰って来た。男に任せた以上詮索する事もしなかったが、男がユフィに手を貸した、裏で手を回した、という事はないのだろう。強いて言えばユフィが動く切っ掛けを与えたのだろうと見当を付けるが、もし仮に力を貸していたならば、反対派はユフィを認めなかった。
反対勢力を黙らせる事を、ユフィが自ら行動で示した……それは次の世代の、そして新しいウータイの始まりとして申し分なかった。
成長した、と娘に思う。五強の塔で自分を倒した時から、世界を知るべくWROに加入すると再び国を後にした時から、また一段と力を身に付けていると、ゴドーは感じた。そして「あのじゃじゃ馬を手懐けるのは彼しかいない」と、男に対してゴドーの心は決まった。男はウータイが求める強さを持っていたのに加え、成り立ちは違えど自分たちと同じ様にモンスターに変身する事も出来る。唯一国外の者という彼の生まれはあったが、時代が時代だ。もうそんな事を言う世界ではないのだろうし、娘に恨まれるのは真っ平後免だ。
ゴドーは国の長として、娘の親として、あの男──ヴィンセント・ヴァレンタインを評価せずにはいられなかった。
そんなやり取りを経て、ユフィの修行が本格的に始まり早三ヶ月……国に戻って来た時の威勢は何処へやら、ユフィのやる気の無さはあのゴーリキーまで悩ませる程になっている。
わかっているのだ。かつて自分も、今は亡き妻と同じ様な事をしていたと、遠く輝かしい記憶を懐かしみながら目の前の娘に対して溜め息を吐いた。
要は、寂しいのだ。この一ヶ月、まだ一度も恋人に会えていないことが、ユフィのやる気の無さに繋がっているのは明らかだった。
本人たちは勘違いをしている様だが、会う事に制限はしていない。むしろコソコソして会うぐらいなら堂々と会って挨拶ぐらいしに来いとすら思っている。それで修行が捗るなら何の文句もない。
大方ヴィンセントの都合がつかないのだろうが、待つ事しか出来ないユフィには、会えない時間は悪い意味で相当効いている様だった。
若い者の恋愛にむず痒さを覚えつつ、妻も当時はそう思っていたのかと、時を越えて思い至りながら、娘にとって最大級の、それも親からは絶対に言われたくないだろう話しを口にした。
「仕方ない……今度ヴァレンタイン殿が来たら、お前のぐーたら具合を事細かに伝えるかの」
沈黙が、書庫を包む。
ユフィの目は大きく見開かれ、口は力無く半開きになっている。
その呆けた表情に笑いを堪えながら、ゴドーは更なる一手を投じた。
「この一ヶ月ヴァレンタイン殿も来ておらん様だしの……なんなら手紙にでも書いて送ってやっても」
「何いってんのさバッカじゃないの!?」
言い終わる前にユフィの焦り混じりの怒鳴り声が響き渡り、耳をつんざく様な音にゴドーは顔をしかめた。
顔を真っ赤にして怒る様に、内心拳を上げる。その効果はかつて己が身をもって実証済みなのだ。効かない訳がないだろう……妻の言うところ『似た者親子』なのだから。
「娘のプライベートに首突っ込むとかキモイッ!!」
「ならそのキモイ事をされたくなければしっかり励むのだな」
「わかってるっつーの!!このクソ親父!!」
言うな否や、鼻を膨らませながら、ユフィは持っていた巻物を鼻息荒く再び読み始めた。
きっと「頑張って来るから!!」等と約束したのだろう。羞恥以上に約束破りを知られる方が嫌なのを、ゴドーは痛いほど理解していた。だって自身もそうだったのだから……
プリプリと憤慨しながら修行という名の勉強に戻ったユフィを残し、ゴドーは書庫を後にした。
娘が自分と同じ道を歩んでいる事に苦笑しながら、どうかその先は幸福に恵まれた人生になるように、と願いつつ、少し昔話をしたくなって、ゴドーは妻の墓前へと向かった。