殺人鬼の癖に優鬼してんじゃねぇぞ!!
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今日も今日とて儀式なぅである。
まさかのクソマップ、ギデオンである。
私はこの2階と1階に別れたマップが大嫌いである。
心音がする度キラーが2階にいるのか1階にいるのか分からなくてビクビクするし、何より隠れるにしても全て丸見えである。
逃げ場もないだだっ広いこのマップはまさにデスマップである。
『ところで、どうして私はレイスきゅんに会えないんです?』
「………」
この世界に来てから随分経つというのに全然会えないんです。
絶対これ、エンティティになにかされてません?ありえないくらいエンカウントしないんですが??
『何か、聞いていますか?こう、エンティティさん、なんか言ってません?だっておかしくないです?会えないにも程があるというか。今だってもう序盤静かだったから、もしかしてって期待していたんですよ?しかし、落ちていた罠を見て何だ違ぇのかよってガッカリした次第でして。ええ。』
「………」
現在私は無言でこちらを見下ろす大柄の仮面つけた鉈持った見た目如何にも殺人鬼です!という男にベラベラと話している。
しっかりと罠を踏んで。
脚に思い切り食いついたトラバサミで出血する脚に目もくれず今日の不満をぶちまけた。
痛いのだがそれよりもあまりにも推しに会えなすぎて私の心は荒んでいた。
『私かて、こんなだだっ広くて罠も見やすいこんな所で踏むとは思っていなかったんですよ。四隅でもない何となく置いといた忘れ去られた罠を踏むなんて。夢にも思いませんでした。』
最強アドオンつけてます?勝手に罠が開くやつ。トラッパーからは有り得ないものを見るような視線を頂いている。多分彼もまさかこんな罠踏まないだろうとタカをくくっていたのだろうよ。くくくっ、しかし、残念だったな!踏んだのはこのセオ様よ!
ジクジクと痛み脚と血液がダラダラと床を濡らしていく。
毎回この負傷した時に出る血って出血多量で絶対死ぬよなぁって感じなんだが不思議と平気だ。エンティティパワー凄い。
痛いのには変わらないのでとりあえず私はこのトラバサミを外す作業に入る。
このトラバサミ…なかなかに手強く外れないのだ…!
『ぐっ、この!全然外れないなぁ!』
「………」
脚を食う凶悪な刃を左右に開こうとしても全然ダメである。
とにかく痛いのでそのせいで力が入らないのもあるが、とにかく固い。
『おおうっ?!』
しかし、格闘する私をただ見ていただけだったトラッパーはいきなりしゃがみ込んだ。
そして、武器を置いて手を伸ばしトラバサミを左右に開いてくれた。
脚を引いて漸く脱出した私はまさかのトラッパーの行動に目を白黒させた。
『え、あ、ありがとう…』
「……」
再び武器と足元にあった私を捕まえていたトラバサミを手に持ち彼は立ち上がった。
ピタピタと私の血が滴り落ちるその罠を持ち彼は再び私を見下ろす。
『えっと、吊るすの?』
「…お前は、馬鹿か」
えー。いきなりの罵倒である。漸く喋ったと思ったらこれである。
馬鹿なのは認めるが、そう言われても返答に困る。そんな私の顔をじっと見つめる彼は何だか深いため息を吐いて歩き出した。
ポカーンと棒立ちで見ているとかなり先を歩いて進んでいた彼はチラリと此方を向いて止まる。
『ついて来いって?』
ノコノコとびっこ引いてついて行く。
脚は痛い。しかし、誰かと合流し背中を撫でられればオールおっけい!治療されるのだ!
だいぶ遅い足取りで漸くトラッパーに追いついた。
しかし、再びトラッパーが歩き出してしまうとどうしても足の速いキラー相手では直ぐに差がついてしまう。
また歩む足を止めた時、ひょこひょことぎこちなく歩く私を見て面倒くさそうに歩み寄って来た。
『うわっ!?』
彼は盛大にため息を吐くと私を担ぎ歩き出した。
え?これは吊られるのでは…?
しかし、フックの前を通り過ぎたので吊るす気はないらしい。今発電機が1つ治る音がした。
他の仲間達は今私がまだチェイスを引いていると思っているのだろうか。担がれてんだが。
しかし、トラッパーは私をどうしたいのか。何処に連れていきたいのか。
「おい」
『え?はい?』
急に立ち止まったトラッパーに声をかけられた。なんだ?どうしたトラッパー。今更吊りたいんだがとか言われても困るぞ。嫌なんだが?
しかし、トラッパーから言われたのは「もがいてみろ」だった。
『え?もがく…?今?』
「早くしろ」
言われてもがく。必死にジタバタして何とかもがく。しかしあまりにも非力なもがき方をしているのかトラッパーに苛立ち気に「ふざけてんのか?」とか「真面目にやれ!殺すぞ!」と言われる始末。
私だって必死に暴れているんだが?!
『このっ!うりゃ!はなせっ!』
「お前、本当ゴミ以下だな。チェイスも出来なけりゃ、もがくことも出来ねぇ。つまんねぇ罠にもかかるし」
『うっ…』
「そんな事で足引っ張って逃げられなくなるのはお前のお仲間だ。俺達にはいいカモだがな」
あんまりな言われ方に私の涙腺は崩壊する。私だって頑張ってるんだ。
『うぇええん!!私だって!ちゃんとやってるもん…!ヒドイ~!』
「…うるせぇ、泣くな。本当の事だろう」
ぺちぺちとその背を叩き泣き喚く。
トラッパーはめちゃくちゃ面倒くさそうにため息を吐いてその場で立ち止まっていた。
この間にまた1つまた1つ発電機が直る。
わんわん泣く私を慰めるわけでもなく気が済むまで彼はただ私を担いだまま突っ立っている。
トラッパーが何を考えてるのか、何をしたいのか全く分からない。
しかし、このまま行けば4人通電まで行ける。
『ぐすっ、…通電するよ?』
「…ふん」
ふん、じゃねぇよ。
『エンティティ不機嫌になるよ』
「勝手になってろ」
上司に対して痛烈では?
『…お仕置されちゃうんじゃないの?』
「お前は本当に救いようのない馬鹿だな」
殺人鬼相手にそんな心配してるのか?と、鼻で笑って彼は言う。
『だって、やっぱり痛いものは痛いし、怖いものは怖いよ…』
再び鼻で彼は笑った。
私は彼に刺さる鉄の棒や生傷を見る。痛そうだ。今だって痛いに決まってる。
じっと見ていれば通電を教えるブザーが鳴る。
「帰りの時間だ。糞雑魚カモ女」
『ひぇ、ヒドイ…』
「ゲートまで歩いて行ってやるからもがいてみろ。抜け出せなかったら吊るす」
そんな風に言われたら頑張るしかない…!ここまで来たら吊られたくないからな。
『ふんぐぐ…!ぬぐぃ…!!』
「本当にゴミだな」
ゲートまで彼は頑張ってもがく私に「もっと足を動かせ」とか「上半身と下半身を大きく動かせ」とかアドバイスを言いつつ「ゴミ」「クズ」「雑魚」と最終的に有難くない暴言を吐いた
ゲートの近くまで来るとデビキンとドワイトがいたらしい。
「え?セオ?」
と、ドワイトの声がしていたのでドワイトだぁって気がついたのだ。私は担がれてトラッパーの背後しか見えないし一生懸命暴れているので精一杯振り向かないと見えないのだ。
そしてトラッパーは何故か凄く不機嫌に舌打ちをすると武器を掴む腕を振り上げた。
「うああ…っ?!」
『え?デビキン?え?なんで??』
デビキンの悲鳴が聞こえた。1発ダウン。
ノーワンである。
「え?あっ、ちょっ…?!」
次にドワイトの悲鳴。
ノーワンなのでワンパンである。
『ドワイト~~~!え?なにしてんの??早く逃げて…!?』
煩わしそうにトラッパーは足元にいるドワイトを蹴りながら這いずる背を見ている。
『なに?どうゆう状況…?!』
「うるせぇ。早くもがけ」
足元で呻きながら這いずって行く仲間たちを後目にちゃんと逃げられるのだろうかと私はドキドキしながら必死に暴れた。しかし、ドワイトとデビキンは無事にゲートから出られたようだ。
『ぬぅううん!?全然っ!全然抜けられない~!!』
「まぁ、最初よりはマシだな」
彼は鼻で笑いゲートの出口ギリギリまで近づく。エンティティがそれ以上行かないように黒い柵が彼の行く手を阻む。
そして、私をベシャッと床へ降ろした。ベシャッと。
『痛い!!ヒドイ』
笑う声がして見上げれば、凶悪な仮面の割れた口元から見える口が歯を見せて笑っていた。
ああ、この人もこんな風に笑うんだなぁとぼんやり見ていた。
「…さっさといけ。殺すぞ」
『…あい。』
しかし、ふと我に返った彼に冷たくそう言われて私は慌てて立ち上がり、びっこ引いて出口をから出た。
「ああ、今日はトラッパーだったのか。」
声をかけられて振り向く。
トラッパーの視線の先には誰もいない。
しかし、それはただ相手が透明になっているだけ。声をかけた主が手に持つ鐘を鳴らせば炙り出されるようにしてその姿を見せた。
「レイス」
「何だか、機嫌が良さそうだなぁ…いい事でもあった?」
レイスと呼ばれた男はトラッパーを見て首を傾げる。
普段見る彼とは何となくだが違う気がした。少し柔らかいような。そんな気配。
「…いや」
「結果が良かった?そんな血の着いた鉈と罠持ってるし。」
トラッパーのもつ罠を指差し彼は言う。しかし、トラッパーはなんでもないと言うように「惨敗だ」と言うので余計に首を傾げた。
「…負けたのに楽しそうだなんて変だ」
「少しの気まぐれだ」
そう聞いてレイスは「優したの?トラッパーが?!」と大袈裟に驚いた。
レイスは彼を気味悪そうに見つめ「何処か強く頭を打ったのか?」と失礼な事を言う。ありえないからだ。コイツは罠にかけて必死にもがいて泣き叫ぶサバイバーを愉快そうに見て笑い弄び殺すやつだ。フックに吊るし悲痛に叫ぶ姿を心待ちにウキウキとしながら運び歩くコイツが。優しさのやの字もないと思っていた。
「お前、まだセオには会ってないんだってな」
彼は手に持つ罠に付いた血を眺めながら言う。
レイスは「セオ…?」と呟いてからああ、と思い出す。
「…新しいサバイバー?まだ、会ったことないな。」
名前は聞いた事があるのに全く出会ったことが無いサバイバー。前にスピリットに絡まれた時にも出てきた名前。今目の前にいるトラッパーも口に出した名前。
しかし、レイスは1度もそのサバイバーに出会ったことは無かった。最近更に1人増えたサバイバー。そっちは会うのにだ。
「エンティティはどうやら、お前とセオを会わせないようにしているようだな」
「…なんの為に?」
分けが分からない。レイスはトラッパーに聞いてみたが興味なさげに「さぁな」と返す。解決もしない無駄な会話に少し苛立って来たが、トラッパーはくつくつと笑うとトラバサミを口元へ持って行き、
「…どうでもいいが、俺はアレが欲しい」
ペロリと付いていた血を舐め彼は笑う。
レイスはセオの事は知らないが、厄介な奴に好かれたんだなぁと同情した。
同時にそんな彼にまで好意を寄せられるセオに興味を持った。
「ねえ、セオってどんなやつ?」
興味本意で聞いた。
スピリットは凄くセオに夢中になっていた。トラッパーもセオを気に入っているならどんな人間か気になる。
レイスの質問に彼は鼻で笑い答えた。
「糞雑魚カモ」
「……………は?」
「糞雑魚カモ」
「…………」
2回も言うな。
なに?糞雑魚カモって。
レイスはポカーンとくつくつと笑うトラッパーを見つめた。
【サバイバーキャンプ地】
『ひどくない?私の事散々罵倒した挙句にベシャッて降ろしたんだよ…!』
「生きてて良かったじゃねぇか。」
セオはトラッパーから受けた暴力と暴言を仲間に必死に訴えていた。
デイビッドに命あるだけ良かったと言われドワイトには「無事で良かった」と言われ。
這いずって逃げ延びた彼らは何となく悲壮感漂っていた。
ドワイトなんて蹴られてた。
『生きた心地しなかったんですが?!』
「でも、それで全員生きて出られたんだから万々歳さ!」
エースがそう声を上げてセオはポカーンて彼を見る。
「ど、どしたのセオちゃん…?」
セオは首を傾げエースを見つめて言う。
『エース、いたの?』
「ひどいっ!同じチームだったのに!」
エースが嘘泣きをしながら近くにいたメグに「セオちゃんが虐める~!」と言っていたがメグは五月蝿そうに眉を寄せていた。
今日も生きた!
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