なんとか見つけたトレーナーさんに姿がバレないように追いかける。
トレーナーさんは誰かを待ってるようだった。
「琴音さん、遅れてすみません」
「私の方こそ早く来てしまって申し訳ないです！」
トレーナーさんの元に来たのは、同い年ぐらいの男性。
一瞬で分からなかったが、トレーナーさんが照れていたのを私は見逃さなかった。
今まで見ないふりをしていたが、トレーナーさんもひとりの女性だ。
この歳になって男性がいないのはおかしい。
トレーナーさんの元に忘れたハンカチを持っていくというだけなのにうまく身体が動かない。
その思いとは裏腹にトレーナーさんと例の男性は仲良さそうに話している。
「今日は下見ですか？」
「はい。ひとりで行くのが寂しくて誘ったんですよ」
ひとりで行くのが寂しくて誘った...？
誘う相手なら、一番に私を誘うはずなのに。
そう思っていた矢先、トレーナーさんとその男性がその場所を移動していく様子が見えたため急いで追いかける。
追いかけた先は、地方の競馬場。
私たち中央と違って、基本月曜日から金曜日までやっている競馬だ。中央は土曜日、日曜。たまに祝日。たまに土日にレースを行う地方競馬場もある。
トレーナーさんは私のためになると思って、地方競馬場までわざわざ出向いている。
自分が恥ずかしくて仕方がない。
てっきりトレーナーさんがその男性とデートする、と思い込んでしまった。