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ゆめのはて

「トレーナーさん、改まってどうしたんだい?」

皐月賞、距離適性の不安があった日本ダービー。
その2レースをフジキセキは何事もなく、無事に走り終えてくれた。
無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいのに、フジは優勝という証も持って帰ってきてくれた。
日本ダービーを終え、フジはここまで来たからにはクラシック三冠を是非取りたいと、菊花賞に進みたいと。
私もそのつもりだったし、菊花賞に向けて準備することにした。
「フジキセキに、海外のレースを?」
「うむ、フジキセキの注目は日本中だけじゃなく海外でもちらほら聞くようになっている!
それに一回は海外でのレースというのを経験させて、それがいい結果にも繋がるからな!」
そして、出てきたのはBCクラシック、ブリーダーズカップ・クラシックの資料。
今年はベルモンドパーク競馬場で行われる。
ダートで、まだフジには未経験のダートだ。
開催日は10月28日で、菊花賞と時期が丸かぶりになってしまうようだ。
この場で決めるのは良くないと思った。
フジに話を聞いてからじゃないと、大変なことになる。

「遅かったね。何か大事な話でも?」
「大事な話ではあったよ」
いつものように話せただろうか。
「いよいよここまで来たんだ。
だから、菊花賞は全ての力を出し切って挑みたい。」
フジは真剣な面持ちだった。
そんな様子を見たら、BCクラシックの話を余計にしにくくなったじゃない。
理事長も言っていたように、BCクラシックは偉大なレースで世界の話題も集まる。
フジキセキを世界に広めたいんじゃなくて、一回世界に出て自分の実力を知ってほしいからこそ、理事長の提案に賛成したのだ。
だけど、菊花賞、いや。クラシック三冠に対するフジキセキは真剣そのものだった。
皐月賞を優勝して、距離適性に不安を抱えたまま日本ダービーに挑み、優勝したのだ。
ここまで来た以上、最後の菊花賞を走りきりフジはクラシック三冠を取りたいと。
「...そうだね、私が忘れてたや。」
「トレーナーさん?」
「練習しよっか。」理事長からあの時、BCクラシックへの参戦を受けるかどうかは、夏合宿終了までにしてほしいということを同時に言われた。それ以上は伸ばせないということも。
あれから数日経ったある日。
「トレーナーさん、何か隠してない?」
それは突然。
「特に何も無いよ?」
「なんかそうには見えなかったし、ほら、顔に出てたから」
フジにはお見通しだったようで、悩んでいたことを素直に打ち明けた。
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