プロローグ
-和の国・ヒエンの里-
人の気配がほとんどない大きな屋敷に一通の手紙が届いた。
「皐月へ
ここ数年、顔を見せに来なかったが、元気にしているか?
俺はというと、もうこの先長くないらしい。
そこで、お前にあるものを託したい。
俺にとって、そこは居場所だ。
それは、お前にとっても居場所であってほしい場所だ。
皐月。家族のいない俺にとって、娘のような存在だった。
もう、あまり時間が残されていないが、
もしまたリエーニャに来ることがあったら、
顔を見せに来てほしい。
また、会える日を願って…
ダザンより」
手紙を受け取った人物は、口元に一つの笑みを浮かべて、荷物を整える。
まだ朝日も昇らぬ暗い中。
「行くか」
そう一言残し、青い髪の女は、静かに家の門を開けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-交易都市・リエーニャ-
家を出てから一カ月ほどたったころ、大きな都市に女はたどり着いた。
交易都市・リエーニャ…人在国・アトモレスの中央に位置する、大きな都市だ。
交易都市という名もあって、東西南北さまざまな交易路の中心となっており、多種多様な品々が軒先に並ぶ。
大通りでは人と人の方がぶつかりそうなぐらい人も多く、大変にぎわっていた。
女は慣れた足取りで、人々の間を抜け、住宅街へと入っていく。
大通りとは違い、子供の声や近隣住民の路上で話す声が少し聞こえてくるぐらい静かな通りを、奥へ奥へと歩いていく。
暗がりの路地を抜け、小さな噴水広場を通り、着いた先は大きな広い敷地の中にある一軒の「宿屋」だった。
扉の前にぶら下がっている看板には「夕」という文字が書かれ、風になびいている。
女は扉の前で、一つ深呼吸をすると、そっと扉に手をかけて中へ入る。
静かな宿内に扉の軋む音が広がり、カウンターにいた一人の男が顔を上げた。
「おや?皐月じゃないか。」
男は、読んでいた羊皮紙を手元にそっと置き、皐月と呼んだ女を、自分の目の前の席に案内する。
「あぁ、久しぶりだな。ザザ。」
皐月は案内された席に座り、ザザの淹れてくれたお茶に手を伸ばす。
「お前が来たってことはあれか?」
ザザは、一つのカギをカウンターに置き皐月に差し出した。
鍵を受け取った皐月は、宿の中を見渡す。
一階は一つの丸いテーブルに三つほどの椅子がセットされており、それが複数個まばらに置かれている。カウンターには食器やワイン瓶、ビール樽などが設置されており、宿というより食堂やBarに近い内装をしていた。
隅には二階に上がる階段があり、階段の脇には小さな掲示板が設置されている。
「あぁ、受け取りに来た。」
そんな宿内を懐かし気な表情を浮かべながら、皐月は鍵を握りしめる。
「この、≪夕凪亭≫を」
プロローグ END
人の気配がほとんどない大きな屋敷に一通の手紙が届いた。
「皐月へ
ここ数年、顔を見せに来なかったが、元気にしているか?
俺はというと、もうこの先長くないらしい。
そこで、お前にあるものを託したい。
俺にとって、そこは居場所だ。
それは、お前にとっても居場所であってほしい場所だ。
皐月。家族のいない俺にとって、娘のような存在だった。
もう、あまり時間が残されていないが、
もしまたリエーニャに来ることがあったら、
顔を見せに来てほしい。
また、会える日を願って…
ダザンより」
手紙を受け取った人物は、口元に一つの笑みを浮かべて、荷物を整える。
まだ朝日も昇らぬ暗い中。
「行くか」
そう一言残し、青い髪の女は、静かに家の門を開けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-交易都市・リエーニャ-
家を出てから一カ月ほどたったころ、大きな都市に女はたどり着いた。
交易都市・リエーニャ…人在国・アトモレスの中央に位置する、大きな都市だ。
交易都市という名もあって、東西南北さまざまな交易路の中心となっており、多種多様な品々が軒先に並ぶ。
大通りでは人と人の方がぶつかりそうなぐらい人も多く、大変にぎわっていた。
女は慣れた足取りで、人々の間を抜け、住宅街へと入っていく。
大通りとは違い、子供の声や近隣住民の路上で話す声が少し聞こえてくるぐらい静かな通りを、奥へ奥へと歩いていく。
暗がりの路地を抜け、小さな噴水広場を通り、着いた先は大きな広い敷地の中にある一軒の「宿屋」だった。
扉の前にぶら下がっている看板には「夕」という文字が書かれ、風になびいている。
女は扉の前で、一つ深呼吸をすると、そっと扉に手をかけて中へ入る。
静かな宿内に扉の軋む音が広がり、カウンターにいた一人の男が顔を上げた。
「おや?皐月じゃないか。」
男は、読んでいた羊皮紙を手元にそっと置き、皐月と呼んだ女を、自分の目の前の席に案内する。
「あぁ、久しぶりだな。ザザ。」
皐月は案内された席に座り、ザザの淹れてくれたお茶に手を伸ばす。
「お前が来たってことはあれか?」
ザザは、一つのカギをカウンターに置き皐月に差し出した。
鍵を受け取った皐月は、宿の中を見渡す。
一階は一つの丸いテーブルに三つほどの椅子がセットされており、それが複数個まばらに置かれている。カウンターには食器やワイン瓶、ビール樽などが設置されており、宿というより食堂やBarに近い内装をしていた。
隅には二階に上がる階段があり、階段の脇には小さな掲示板が設置されている。
「あぁ、受け取りに来た。」
そんな宿内を懐かし気な表情を浮かべながら、皐月は鍵を握りしめる。
「この、≪夕凪亭≫を」
プロローグ END
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