第一章 記憶のカケラ編
「目星がついてるって…」
「刹那、どういうこと?」
自信満々に告げた刹那に、身を乗り出す2人。
刹那は、ひとつため息をつくとめんどくさそうに口を開く。
「黒炎様が言っていた秘水晶って何か分かってる?」
二人は首を振る。
「秘水晶というのは、代々黒炎様にお使えする柱役の4人に配られる水晶、紅・蒼・真・秘の4つのうちの1つ。4つの中でも比較的強力な力を持つ水晶のこと。」
「じゃぁ、その持ち主から水晶を奪えって事?」
「おそらくは…」
「ふーん」と頷く数葉に対し、納得がいかない様子の琴葉。刹那はそれに気がつき、「何?」と問う。
「でも、その柱役の人って、黒炎様・柱役の人以外分からないはずですよね?なのに、目星が付いているのですか?」
難しい顔をして困り果てる琴葉に笑顔で「うん」と答える刹那。
しかし、その続きを言うことなく、刹那は立ち上がる。
「そろそろ来ると思うから、臨戦態勢に入ったほうがいいかな。」
**************************************************
一方そのころ…
「おい皐月。少し逃げて遊んでやらなくてもいいのか?」
「かまわねぇよ。あいつ、たぶん分かってる。」
「えっ?」
皐月達3人は、森の中のとある場所を目指して歩いていた。
高い木々が生い茂り、のどかな空気の流れる森を歩いているから…というわけではないが、3人は試験官という立場でも、落ち着いていた。
「分かってるって…。水晶の持ち主が皐月様だって、刹那様が知ってるって事ですか?」
「あぁ」
皐月の前に立ちはだかるように柑亥が回り込む。2人は必然的に歩みを止めた。
その柑亥の表情からは、少し焦りの色が見えていた為か、諸刃もいつもと違う空気を感じ取った。しかし、皐月は平然としている。
「秘水晶の事は、黒炎様と柱役の人しか知らないはず…なのに何故…」
「そんなの簡単だろ。刹那も今年から柱役だからだよ。」
「はぁ?俺そんなこと聞いてねぇぞ!!」
平然と答える皐月に諸刃が突っかかる。今にも胸倉を掴みかかりそうな勢いの諸刃と皐月の間に柑亥が割り込んだ。
「皐月様、説明してもらえますか?」
真剣な眼差しの柑亥を見て、皐月はめんどくさそうにその場に腰を下ろした。
「1週間ほど前、真水晶の所持者、十六夜(いざよい)の死が確認された。死因は不明。神の国(セオリニアム)への偵察の際、襲われたと見て良い。」
「十六夜が…」
「マジかよ…」
ざわつく2人をよそに、皐月が続ける。
「そして、昨日俺は黒炎に呼び出され、その旨を聞いた。その時に、次の柱役に刹那を抜擢したいとの話もな…」
「けれど、刹那は黒炎様にじきじきに話をされたわけじゃないだろ?」
「あぁ、確かに刹那は直接はされてはいないだろうな…」
「じゃぁなぜ?」
皐月は難しい顔をして口をつぐみ俯く。
「刹那は、俺が体験したことを全て感じ取ることが出来る。」
「は?」
何を言ってるんだと言わんばかりの諸刃に対し、柑亥は険しい表情でその場に崩れ落ちた。
「まさか…」
「そのまさかだよ。あいつは呪われてんだよ。龍の血に。」
「どういうことか分からないんだけど…」と言う諸刃に、柑亥は「説明するから、腰をかけて」と促した。
柑亥は皐月に「俺から説明しましょうか?」と問うと皐月は黙って首を振った。
「いや、今はどうでもいいだろ。」
「しかし…」
「どうでもよくねーよ。俺たちチームだろ?」
「そうですよ。」と諸刃の意見に賛成する柑亥は、説明を始めた。
皐月は、止めても無駄だろうと思い、その場から動かなかった。
「龍牙の一族は、大昔から村主様にお仕えしてきた一族。」
「そんなことは知っている。」
「しかし、その背景には、この一族が龍に呪われているからと言う理由があった。」
「龍に呪われている?」
「そうだ」
「その昔、一人の男が龍族の娘と恋に落ちた。娘の名は刹羅(せつら)。龍族の娘である刹羅は、それはそれは、見た目だけでなく心も非常に美しい女性だった。しかし、『人間と言う穢れた生き物に娘はやれん』と刹羅の父は男を殺した。それに悲しんだ、刹羅は一族を捨て、人間の村に紛れ込んだ。だが、人間たちは刹羅を受け入れられず、蛟(みずち)の巣へ閉じ込めた。」
「そのとき、刹羅は子を身ごもっていた。刹羅は経緯を話し、何とか子供だけでも助けてほしいと蛟を説得する。蛟は罪の無いものを殺すことはできない、しかし、ここから出ても行き先が無いのならここに住めばいいと言った。しばらくして、刹羅の子が生まれた頃、一人の女が蛟の巣を尋ねてきた。その女は、蛟が刹羅をかくまっていることを知ると、蛟と二人の娘の子供を殺めてしまった。それに怒り狂った刹羅は、その女に呪いをかけ自害した。」
「それ以降、その女の一族内に双子が生まれると、どちらか一方が龍の力…つまり、刹羅の生まれ変わりとして短命に終わる。」
「それが、龍牙一族の呪われた起源って事か?なんかの物語で聞いたけど、物語ではなかったんだな。」
「でも…」と諸刃は続ける。
「今、皐月は『あいつは…』って言ったけど、それはどういうことなんだ?刹那は男だろ?」
「それは…」
柑亥も説明に困り、皐月に視線を向けた。
「さぁな…」
「は?」
「とにかく俺たち二人にかまうな…」
「でもそれじゃ説明になってないだろ…皐月が黒炎様にされた話を刹那が記憶だけ持ってるって事の…」
「もういいから黙ってろ…」
皐月は立ち上がると、「行くぞ」と声をかける。そして、その場を後にした。まだ、話を聞き足りていないのか、諸刃はしぶしぶ皐月の後を追いかけた。
*******************************************
「刹那…そろそろ相手くらい教えてくれたっていいんじゃないの?」
静まり返る周りに緊張の空気が張り詰める中、数葉がつまらなさそうに呟く。
刹那が「すぐに分かるよ」とささやくと、数葉は返事をすることなく視線を自分の真正面へと向けた。
「こんにちは」
数葉の視線の先には、銀髪の男がにっこりと微笑んでいた。
それに驚いた数葉は、一歩後退りをする。
「かっかかかかっ…柑亥さん!!?」
「「!?!?!?」」
その声に反応し、数葉に駆け寄ろうとする琴葉の前に立ちはだかったのは、諸刃だった。
「いい反応してるね~。でもまだまだかな。」
「くっ…」
「数葉!!琴葉!!」
突然の襲撃を予想はしていたものの、本命の人物が現れていないことに動揺を隠し切れない刹那は、背後を警戒しながらも辺りに視線を泳がせる。
(い…居ない…!?そんなはずは…)
そのとき、嫌な予感が確信に変わると同時に、刹那の脳裏には自分の後姿がよぎった。
震える体を抑えながら、恐る恐る慎重にゆっくりと振り返ると、
「よぉ…」
聞きなれた声が、刹那の耳に届く。
へラッと普段は見せない楽しそうな表情を浮かべて、立っていたのは…
「あ…姉貴…」
「どうも…」
皐月と刹那の視線が交差する…
「かよわき…ばけもの…」
皐月の目には、強い殺意が込められていた。
第五話へ続く…
「刹那、どういうこと?」
自信満々に告げた刹那に、身を乗り出す2人。
刹那は、ひとつため息をつくとめんどくさそうに口を開く。
「黒炎様が言っていた秘水晶って何か分かってる?」
二人は首を振る。
「秘水晶というのは、代々黒炎様にお使えする柱役の4人に配られる水晶、紅・蒼・真・秘の4つのうちの1つ。4つの中でも比較的強力な力を持つ水晶のこと。」
「じゃぁ、その持ち主から水晶を奪えって事?」
「おそらくは…」
「ふーん」と頷く数葉に対し、納得がいかない様子の琴葉。刹那はそれに気がつき、「何?」と問う。
「でも、その柱役の人って、黒炎様・柱役の人以外分からないはずですよね?なのに、目星が付いているのですか?」
難しい顔をして困り果てる琴葉に笑顔で「うん」と答える刹那。
しかし、その続きを言うことなく、刹那は立ち上がる。
「そろそろ来ると思うから、臨戦態勢に入ったほうがいいかな。」
**************************************************
一方そのころ…
「おい皐月。少し逃げて遊んでやらなくてもいいのか?」
「かまわねぇよ。あいつ、たぶん分かってる。」
「えっ?」
皐月達3人は、森の中のとある場所を目指して歩いていた。
高い木々が生い茂り、のどかな空気の流れる森を歩いているから…というわけではないが、3人は試験官という立場でも、落ち着いていた。
「分かってるって…。水晶の持ち主が皐月様だって、刹那様が知ってるって事ですか?」
「あぁ」
皐月の前に立ちはだかるように柑亥が回り込む。2人は必然的に歩みを止めた。
その柑亥の表情からは、少し焦りの色が見えていた為か、諸刃もいつもと違う空気を感じ取った。しかし、皐月は平然としている。
「秘水晶の事は、黒炎様と柱役の人しか知らないはず…なのに何故…」
「そんなの簡単だろ。刹那も今年から柱役だからだよ。」
「はぁ?俺そんなこと聞いてねぇぞ!!」
平然と答える皐月に諸刃が突っかかる。今にも胸倉を掴みかかりそうな勢いの諸刃と皐月の間に柑亥が割り込んだ。
「皐月様、説明してもらえますか?」
真剣な眼差しの柑亥を見て、皐月はめんどくさそうにその場に腰を下ろした。
「1週間ほど前、真水晶の所持者、十六夜(いざよい)の死が確認された。死因は不明。神の国(セオリニアム)への偵察の際、襲われたと見て良い。」
「十六夜が…」
「マジかよ…」
ざわつく2人をよそに、皐月が続ける。
「そして、昨日俺は黒炎に呼び出され、その旨を聞いた。その時に、次の柱役に刹那を抜擢したいとの話もな…」
「けれど、刹那は黒炎様にじきじきに話をされたわけじゃないだろ?」
「あぁ、確かに刹那は直接はされてはいないだろうな…」
「じゃぁなぜ?」
皐月は難しい顔をして口をつぐみ俯く。
「刹那は、俺が体験したことを全て感じ取ることが出来る。」
「は?」
何を言ってるんだと言わんばかりの諸刃に対し、柑亥は険しい表情でその場に崩れ落ちた。
「まさか…」
「そのまさかだよ。あいつは呪われてんだよ。龍の血に。」
「どういうことか分からないんだけど…」と言う諸刃に、柑亥は「説明するから、腰をかけて」と促した。
柑亥は皐月に「俺から説明しましょうか?」と問うと皐月は黙って首を振った。
「いや、今はどうでもいいだろ。」
「しかし…」
「どうでもよくねーよ。俺たちチームだろ?」
「そうですよ。」と諸刃の意見に賛成する柑亥は、説明を始めた。
皐月は、止めても無駄だろうと思い、その場から動かなかった。
「龍牙の一族は、大昔から村主様にお仕えしてきた一族。」
「そんなことは知っている。」
「しかし、その背景には、この一族が龍に呪われているからと言う理由があった。」
「龍に呪われている?」
「そうだ」
「その昔、一人の男が龍族の娘と恋に落ちた。娘の名は刹羅(せつら)。龍族の娘である刹羅は、それはそれは、見た目だけでなく心も非常に美しい女性だった。しかし、『人間と言う穢れた生き物に娘はやれん』と刹羅の父は男を殺した。それに悲しんだ、刹羅は一族を捨て、人間の村に紛れ込んだ。だが、人間たちは刹羅を受け入れられず、蛟(みずち)の巣へ閉じ込めた。」
「そのとき、刹羅は子を身ごもっていた。刹羅は経緯を話し、何とか子供だけでも助けてほしいと蛟を説得する。蛟は罪の無いものを殺すことはできない、しかし、ここから出ても行き先が無いのならここに住めばいいと言った。しばらくして、刹羅の子が生まれた頃、一人の女が蛟の巣を尋ねてきた。その女は、蛟が刹羅をかくまっていることを知ると、蛟と二人の娘の子供を殺めてしまった。それに怒り狂った刹羅は、その女に呪いをかけ自害した。」
「それ以降、その女の一族内に双子が生まれると、どちらか一方が龍の力…つまり、刹羅の生まれ変わりとして短命に終わる。」
「それが、龍牙一族の呪われた起源って事か?なんかの物語で聞いたけど、物語ではなかったんだな。」
「でも…」と諸刃は続ける。
「今、皐月は『あいつは…』って言ったけど、それはどういうことなんだ?刹那は男だろ?」
「それは…」
柑亥も説明に困り、皐月に視線を向けた。
「さぁな…」
「は?」
「とにかく俺たち二人にかまうな…」
「でもそれじゃ説明になってないだろ…皐月が黒炎様にされた話を刹那が記憶だけ持ってるって事の…」
「もういいから黙ってろ…」
皐月は立ち上がると、「行くぞ」と声をかける。そして、その場を後にした。まだ、話を聞き足りていないのか、諸刃はしぶしぶ皐月の後を追いかけた。
*******************************************
「刹那…そろそろ相手くらい教えてくれたっていいんじゃないの?」
静まり返る周りに緊張の空気が張り詰める中、数葉がつまらなさそうに呟く。
刹那が「すぐに分かるよ」とささやくと、数葉は返事をすることなく視線を自分の真正面へと向けた。
「こんにちは」
数葉の視線の先には、銀髪の男がにっこりと微笑んでいた。
それに驚いた数葉は、一歩後退りをする。
「かっかかかかっ…柑亥さん!!?」
「「!?!?!?」」
その声に反応し、数葉に駆け寄ろうとする琴葉の前に立ちはだかったのは、諸刃だった。
「いい反応してるね~。でもまだまだかな。」
「くっ…」
「数葉!!琴葉!!」
突然の襲撃を予想はしていたものの、本命の人物が現れていないことに動揺を隠し切れない刹那は、背後を警戒しながらも辺りに視線を泳がせる。
(い…居ない…!?そんなはずは…)
そのとき、嫌な予感が確信に変わると同時に、刹那の脳裏には自分の後姿がよぎった。
震える体を抑えながら、恐る恐る慎重にゆっくりと振り返ると、
「よぉ…」
聞きなれた声が、刹那の耳に届く。
へラッと普段は見せない楽しそうな表情を浮かべて、立っていたのは…
「あ…姉貴…」
「どうも…」
皐月と刹那の視線が交差する…
「かよわき…ばけもの…」
皐月の目には、強い殺意が込められていた。
第五話へ続く…