i f 〜 すがる想い 〜 (越野宏明)
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病院を出る直前、なまえの両親が事の経緯を要約して話してくれた。
話すっつっても……気持ちを必死に押し殺して、今にも息絶えちまうような……そんな弱々しい声だった。
――‥
娘は……
下校時、出会い頭に自動車と衝突して……
一生、記憶が戻ることはないって……お医者様が……
‥――
……なまえが事故った……!?
ホント……何の冗談 だよ、これ。
俺は悪い夢でも見てるのか……?
こんなこと……ありえねーだろ……
みんなして俺を騙そうとしてるのか!?
認めねえ。
そんなの、絶対に認めねえぞ……!!
俺は、強豪・陵南のスタメンだ!
俺たちはどのチームよりも厳しい練習をしてるんだ!
こんなところで引き下がってたまるかよ!
どんなに辛かろうと、困難な状況であろうと、死に物狂いでボールに喰らいつくのがウチの部のモットーなんだ……!!
*
「ハァ、ハァ……」
無我夢中で走っていった先は、これまで俺が敬遠していた神社だった。
切り口はアイツの一声だったけど、それでいい。
今はココしかねえ……!!
猛ダッシュで階段を何段も駆け上り、藁をも掴む思いで鳥居をくぐってやっとこさ境内までたどり着いた。
冷たい風を浴びたはずなのに全身ぽっかぽかで、おまけに髪型はボッサボサときたもんだ。だけど構わねえ。こんな非常時に見てくれなんか気にしてられっか!
早速ポケットから財布を取り出し、賽銭箱に今持ってる有り金を全て投げ入れた。
― そして
深呼吸して呼吸を整えた俺は
人生最大の賭けに出た。
こんな時こそ心を落ち着かせるべきだよな……
合掌し、いつもなら毛嫌いしてる神に願おうとした時

スイセン……これは、家にもあった……
ラッパみてえな形をしてやがる……
――‥
ひろあきと同じ陵南に受かりますよーに!
そんでもって、お互い全国を目指す!
絶対絶対、約束だかんね!
‥――
そういえば中三の頃、アイツとここで……
参拝なんて嫌だっつったのに言っても聞かなくて、お互い受験生だからって強制的に連れて来られたんだ。
i f ……
無力な自分にイラついて仕方ねーよ……
こんな事になるなら、あしらったりしないで
ちゃんとアイツの言葉に耳を傾けときゃよかった。
真正面から向き合ってやりゃあよかった……!
ラッパやメガホンを握り締めて思いきり叫びてえよ、なまえのために……!!
地蔵をはじめ枯れ葉に細々とした枝、その辺に落っこちてる石ころにでさえも、この願いを託す。
俺の全財産を突っ込んでもいい。
神様ってやつが本当に存在するなら……
もしも……もしも……願いが叶うなら、アイツの記憶を、時間を巻き戻して
あの事故を無かったことにしてくれよ……!!
お前の記憶が戻るなら、バスケだっていくらでも付き合うさ!
練習以上にどんな辛い試練だって乗り越えてやる! 俺のユニフォームだって、何だってくれてやらあ!
いくらでも悪あがきしてやるぜ……!
勉強もイヤと言うほど教えてやるよ!
脳が腐るほどツッコミ返ししてやるのに……!
" ひろあき〜〜 " って
いつもみたく語尾をだらーんて情けなく伸ばして呼んでくれよ……!!
俺は、俺はっ……!
本当は、お前のことが……!
ずっと、好きだったんだ……!!
頼む!! 奇跡よ、起きてくれ……!!
なまえっ……!!
*
「……なまえ……」
「なに〜? ひろあき〜」
「おい、どうした」
マジか……
奇跡が……起きた……?
目覚めた時には、きょとんとした仙道と
あははと俺をバカにしたようにケラケラ笑う
カイロよりもあったけえ
なまえのムカつく笑顔があった。
「なまえ……俺のこと、誰だか分かるか?」
「え?」
「…………」
「いきなり何? そんなの、負けん気の強いコッシーこと越野宏明に決まってんじゃ〜ん」
「!!」
なまえ……
不謹慎にも……いや、もう不謹慎じゃねえか。
何だよそのあだ名ってツッコミ入れたかったがお前の声が聞けたことが、俺の名前を言ってくれたことがすげー嬉しくて、無意識に口元が緩んじまった。
いつもの教室に、クラスメイト、教卓の前に立つ担任。
待てよ、この光景……見覚えが……
少しずつ意識がハッキリしてきたと思った次の瞬間、俺はまたしても目を疑った。
「明日、世界史の小テストをやるぞー。赤点とった奴は放課後みっちり補習だからなー」
「「 えー!? 」」
「ひたすら記憶するだけだから、簡単だぞー」
き、記憶……
その言葉を聞いてマジで焦った。その上、ダラッと大量の冷や汗が頬を伝った。
安堵してる場合じゃなかったぜ。
二度とあんな事があってたまるか! なまえをあんな目に遭わせないために、悲劇を繰り返さないために
なまえが喋るより先に、こう言ってやった。
「居残りはキツい『なまえ!!』」
「……!」
「放課後……付き合ってやるよ……試験勉強」
「え、ひろあき?」
「ふっ」
これで正夢には……
未来は確実に変えられるはず……
「って、なんだよ仙道! 全てを知り尽くしたよーなその顔は! ニヤけるな!」
コイツの余裕含みヅラは何なんだ?
試合中ならとてつもなく安心感があるが、プライベートとなると鬱陶しくて仕方ねえ。
( だから悪あがきすんなって )
( 俺は、別に…… )
( もう照れ隠ししなくてもいいんだぜ。越野 )
( なっ……!? )
性に合わねえが、男同士ヒソヒソ喋ってると
何食わぬ顔で話に割り込んでくるヤツが……
「どしたの? 二人とも」
「おっと」
「……うっせ」
なまえのその笑った顔が腹立つ。
だから、ダチ以上の感情(恋心)があることはあえて言わないようにしておく。
「やっぱ運命なんてクソくらえだ」
「へ?」
やべえ。一気に気が抜けて、記憶が薄れてきた……
あれはただの夢か幻か。何だったのかは分からねえ。だけど、たまの神社も悪くねえな。
年越しには一緒に行ってやるか、初詣も兼ねて。
うー、ねみぃ……
なまえの俺を呼ぶ声がすげー良い睡眠導入剤になって、このまま眠っちまいそうだ……
未来の恋人 (になる予定) の横顔に夢で良かったと心底思った、昼休み中の出来事だった。
なまえ!
約束だぜ! お互い、絶対に叶えような!
全国制覇の夢を……!!
‥‥ The End ‥‥
話すっつっても……気持ちを必死に押し殺して、今にも息絶えちまうような……そんな弱々しい声だった。
――‥
娘は……
下校時、出会い頭に自動車と衝突して……
一生、記憶が戻ることはないって……お医者様が……
‥――
……なまえが事故った……!?
ホント……何の
俺は悪い夢でも見てるのか……?
こんなこと……ありえねーだろ……
みんなして俺を騙そうとしてるのか!?
認めねえ。
そんなの、絶対に認めねえぞ……!!
俺は、強豪・陵南のスタメンだ!
俺たちはどのチームよりも厳しい練習をしてるんだ!
こんなところで引き下がってたまるかよ!
どんなに辛かろうと、困難な状況であろうと、死に物狂いでボールに喰らいつくのがウチの部のモットーなんだ……!!
*
「ハァ、ハァ……」
無我夢中で走っていった先は、これまで俺が敬遠していた神社だった。
切り口はアイツの一声だったけど、それでいい。
今はココしかねえ……!!
猛ダッシュで階段を何段も駆け上り、藁をも掴む思いで鳥居をくぐってやっとこさ境内までたどり着いた。
冷たい風を浴びたはずなのに全身ぽっかぽかで、おまけに髪型はボッサボサときたもんだ。だけど構わねえ。こんな非常時に見てくれなんか気にしてられっか!
早速ポケットから財布を取り出し、賽銭箱に今持ってる有り金を全て投げ入れた。
― そして
深呼吸して呼吸を整えた俺は
人生最大の賭けに出た。
こんな時こそ心を落ち着かせるべきだよな……
合掌し、いつもなら毛嫌いしてる神に願おうとした時

スイセン……これは、家にもあった……
ラッパみてえな形をしてやがる……
――‥
ひろあきと同じ陵南に受かりますよーに!
そんでもって、お互い全国を目指す!
絶対絶対、約束だかんね!
‥――
そういえば中三の頃、アイツとここで……
参拝なんて嫌だっつったのに言っても聞かなくて、お互い受験生だからって強制的に連れて来られたんだ。
i f ……
無力な自分にイラついて仕方ねーよ……
こんな事になるなら、あしらったりしないで
ちゃんとアイツの言葉に耳を傾けときゃよかった。
真正面から向き合ってやりゃあよかった……!
ラッパやメガホンを握り締めて思いきり叫びてえよ、なまえのために……!!
地蔵をはじめ枯れ葉に細々とした枝、その辺に落っこちてる石ころにでさえも、この願いを託す。
俺の全財産を突っ込んでもいい。
神様ってやつが本当に存在するなら……
もしも……もしも……願いが叶うなら、アイツの記憶を、時間を巻き戻して
あの事故を無かったことにしてくれよ……!!
お前の記憶が戻るなら、バスケだっていくらでも付き合うさ!
練習以上にどんな辛い試練だって乗り越えてやる! 俺のユニフォームだって、何だってくれてやらあ!
いくらでも悪あがきしてやるぜ……!
勉強もイヤと言うほど教えてやるよ!
脳が腐るほどツッコミ返ししてやるのに……!
" ひろあき〜〜 " って
いつもみたく語尾をだらーんて情けなく伸ばして呼んでくれよ……!!
俺は、俺はっ……!
本当は、お前のことが……!
ずっと、好きだったんだ……!!
頼む!! 奇跡よ、起きてくれ……!!
なまえっ……!!
*
「……なまえ……」
「なに〜? ひろあき〜」
「おい、どうした」
マジか……
奇跡が……起きた……?
目覚めた時には、きょとんとした仙道と
あははと俺をバカにしたようにケラケラ笑う
カイロよりもあったけえ
なまえのムカつく笑顔があった。
「なまえ……俺のこと、誰だか分かるか?」
「え?」
「…………」
「いきなり何? そんなの、負けん気の強いコッシーこと越野宏明に決まってんじゃ〜ん」
「!!」
なまえ……
不謹慎にも……いや、もう不謹慎じゃねえか。
何だよそのあだ名ってツッコミ入れたかったがお前の声が聞けたことが、俺の名前を言ってくれたことがすげー嬉しくて、無意識に口元が緩んじまった。
いつもの教室に、クラスメイト、教卓の前に立つ担任。
待てよ、この光景……見覚えが……
少しずつ意識がハッキリしてきたと思った次の瞬間、俺はまたしても目を疑った。
「明日、世界史の小テストをやるぞー。赤点とった奴は放課後みっちり補習だからなー」
「「 えー!? 」」
「ひたすら記憶するだけだから、簡単だぞー」
き、記憶……
その言葉を聞いてマジで焦った。その上、ダラッと大量の冷や汗が頬を伝った。
安堵してる場合じゃなかったぜ。
二度とあんな事があってたまるか! なまえをあんな目に遭わせないために、悲劇を繰り返さないために
なまえが喋るより先に、こう言ってやった。
「居残りはキツい『なまえ!!』」
「……!」
「放課後……付き合ってやるよ……試験勉強」
「え、ひろあき?」
「ふっ」
これで正夢には……
未来は確実に変えられるはず……
「って、なんだよ仙道! 全てを知り尽くしたよーなその顔は! ニヤけるな!」
コイツの余裕含みヅラは何なんだ?
試合中ならとてつもなく安心感があるが、プライベートとなると鬱陶しくて仕方ねえ。
( だから悪あがきすんなって )
( 俺は、別に…… )
( もう照れ隠ししなくてもいいんだぜ。越野 )
( なっ……!? )
性に合わねえが、男同士ヒソヒソ喋ってると
何食わぬ顔で話に割り込んでくるヤツが……
「どしたの? 二人とも」
「おっと」
「……うっせ」
なまえのその笑った顔が腹立つ。
だから、ダチ以上の感情(恋心)があることはあえて言わないようにしておく。
「やっぱ運命なんてクソくらえだ」
「へ?」
やべえ。一気に気が抜けて、記憶が薄れてきた……
あれはただの夢か幻か。何だったのかは分からねえ。だけど、たまの神社も悪くねえな。
年越しには一緒に行ってやるか、初詣も兼ねて。
うー、ねみぃ……
なまえの俺を呼ぶ声がすげー良い睡眠導入剤になって、このまま眠っちまいそうだ……
未来の恋人 (になる予定) の横顔に夢で良かったと心底思った、昼休み中の出来事だった。
なまえ!
約束だぜ! お互い、絶対に叶えような!
全国制覇の夢を……!!
‥‥ The End ‥‥
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