金魚鉢と星占い (神宗一郎)
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「相撲とる人、この指とーまれ!」
絶対に後悔したくない。だって、人生はたった一度きり。優柔不断な性格だって自覚してる。それもあって助言してくれる星占いは欠かせない。
休日に着る服や食べ物、テレビ番組でさえも。占いは私の道しるべになってくれる。なんて素晴らしいんだろう……!
運命のカレもこれで決められたらいいのになぁ……
「なんだ、ノブだけかぁ」
「なまえちゃん」
「神先輩! お疲れさまです!」
「ありがとう」
「つって、俺たちしかやる奴いねえじゃねーか!」
「みんな帰っちゃったね」
相撲をとるっていっても、マワシを締めて四股を踏む本格的なやつじゃなくて
指相撲、腕相撲……うーん、どっちにしよう。
「つーか、いつもいつも男の部室に女が入ってくるなよな! マネージャーでもねえくせに!」
「ダメなの?
いーじゃん、幼馴染の馴れ合いってことで」
あちこちに唾液が飛び散るくらい口うるさいこの男子は、幼馴染のノブこと清田信長。幼稚園、小学校、中学ときて高校もなんでか同じ海南大に入学した。
昔から運動だけはピカイチでバスケも得意だった。
俺が入れば即戦力になること間違いなしだぜ! って得意げに言ってたけど、まさかこんなすぐにスタメンに選ばれるなんて思いもしなかった。
だからってちょっと有頂天になりすぎな気がするんだけど。
「……大体、なんでそんな勝負したがんだよ」
「今日は勝負事にもってこいの日って書いてあったから!」
バッグのファスナーを開けて愛読してるファッション雑誌の星座占いのページを見せた。
星占い、血液型、タロット。後ろのほうに必ずと言ってもいいほど載ってる占いコーナーに目がなくて、ついつい本編よりもそこから真っ先に見入っちゃう。
「女の子って占い好きだよね」
「朝のニュースの最後に星座占いがあるので、良かったら先輩も見てみてください!」
「ああ、あの一分くらいのやつ?」
「はい、そうです!」
「今度チェックしてみるよ」
「…………」
ノブが何か言いたげっぽいけど無視した。すぐ終わっちゃうからいつも自分の星座しかチェックする余裕ないけど、明日からは先輩のものも見てみよう!
えっと……確か先輩の誕生日は……
「けっ、当たるも八卦、当たらぬも八卦だ!
占いなんて良いことだけ信じてりゃあいいんだよ!
神さん、コイツの言うことなんて聞かなくていいっすよ。昔っから後先考えずに物言うタチなんすから!」
「え?」
「うるさーい。ノブは黙ってて」
「それよか、なまえはいつも一人相撲とってるけどな! かっかっか!」
「なんでいつも余計なこと言うのー!?」
胸をポカスカ連続で叩いた。人のことバカにして頭にくる。
そんな優位に立ちたいの? 大人な先輩とは大違い。
「信長、女の子にはもっと優しくしてあげなきゃ」
「ポッ……神先輩……」
「ちぇっ……急に女の顔になんなよ」
「なっ、なってないし!」
「ははは。いいね、幼馴染って」
どこかで見たアニメみたいだ、って笑ってる。
ノブがあんなこと言うから焦ったじゃん!
深い意味に捉えられてなくて良かったような、残念なような……
「だけど基本、俺も良いことしか信じないタイプかな」
「先輩まで……!」
「それみろ! さすが神さん、分かってるぜ!」
そっか、先輩はあんまり占いに興味ないのかぁ……
こんなこと昨日今日始まったわけじゃないし、もちろんノブなんて眼中にない。何度か部室に遊びに来てる目的は長身イケメンの神先輩にお近づきになるため!
「腕相撲か指相撲。どちらにしようか。うーん、迷う……」
「どっちでもいいっての!
性懲りもなくまーだ言ってやがる」
「腕相撲でいいんじゃない? 俺が審判になるよ」
「神さん」
「先輩……!」
相撲にこだわる必要もないけどバスケで二人に敵うわけないし。これなら同じ土俵に立ててる感じがするし、勝てる見込みがあるかもっていう私の単なる思いつき。
「信長はどうする? やる? やらない?」
「もちろんやりますよ、やりゃあいいんだろ!」
「なんだ、結局ノブかぁ」
乗り気じゃない割にはソッコーで手を挙げてたじゃん。それなのに、いざ勝負! となると全然握ろうとしてこない。
「っ……」
「まだ? 早くしてよ」
「ごくり」
「ごくり?
何してんの? さっきまでの勢いはどうしたのよ」
「なっ、なんでもねーよ!」
「……じゃあいくよ。レディー、ゴー!」
今の唾を飲み込む音は何?
机に肘を置いて、とりあえず先輩の美声を合図に片手を強く握った。そして思いっきり顔を近付けて……
「うーん……」
「!!」
意識を集中させて、左側に向かって
全体重をかけるようにして力を込めて……!
「あっ! UFO!」
「へ?」
天井を見上げた一瞬の隙を突いて、ノブの腕をビタン! って一気に倒した。
やったー! 勝者・私ー!
「キャー! 占い通り、勝てたー!」
「はっ……やべっ、きたねーぞ! そんなんアリかよ!?」
「大ありですー。ノブ、弱いー」
「いっ、今のはっ……!
……あーアホらし。こっちは疲れてんだ、こんなヤツほっといてさっさと帰りやしょーよ、神さん!」
「信長……なまえちゃんも帰ろう」
「はい」
こんな茶番に付き合ってられっかって部室を出ていった。
なにそれ……ふんだ……
だって本気でやって力で男子に勝てるわけないし。
第一、あんな古典的な手に引っかかる方が悪いんじゃん。
ノブの手……いつの間にあんなに骨ばって大きくなったんだろ。身長だって子どもの頃は私が余裕で勝ってたのにさ。それよりも、神先輩に触れられるチャンスだったのに!
***
クラスが違うことだけが救い。授業中とか休み時間までノブの顔見たくないもーん。
運気が下がり気味なとある日、またとないチャンスが巡ってきた!
「ジャジャン!」
「地域の盆踊り大会?」
友達がポスターと一緒に耳寄り情報を持ってきてくれて……
「夏祭りかー。民謡とか踊って騒いで、楽しそう!」
「あのねぇ、ソコじゃないでしょ!
縁日ってことは、浴衣! 屋台! 花火!
男子と急接近するチャーンス! これはもう行くっきゃないでしょ! 憧れの神さん、甚平とか着てくるかもよー?」
「甚平……? 先輩の甚平姿……イイ……!
はああ、かっこいい……!」
「おーい、なまえ? 目の中にキラキラが……
まーた幻覚が……
乙女の妄想モードに突入してるなー……」
神先輩と、お祭りデート……
幸運の神様っているんだー! やっぱり信じる者は救われる!
「ナイスだよ! ともだち〜! 粋な計らいすぎるって!」
「いき? いきって何?
よく分かんないけど私がセッティングしとくから、あとはうまくやってよね! 幸運を祈ってるから!」
「うん! マジでありがと〜!」
やばい……楽しみすぎて眠れないかも……! 先生の声も授業内容も全然頭に入ってこない。
帰ったら今週末の運勢リサーチしよーっと!