君だけの色で、俺を描いて (花形透)
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描きはじめ
六月。雨ばかりで散々な梅雨時期。
金曜日の放課後、顧問の先生の許可をもらって市内の広い公園に来てる。
今日はサンサンな天気に恵まれて、黄緑色に生い茂った草原がそよそよと風で揺れて何だかとっても嬉しそう。
ぐにゃっと針金をねじ曲げたような謎めいたオブジェがあちらこちらに展示してあるけど全くもって意味不明……芸術ってホント奥が深い。
「うーん……」
片目を瞑って鉛筆を顔の前に突きつけてる。
「どうしたんですか? みょうじ先輩」
「思うように描けないー!」
「ひょっとして、スランプ突入ですか?」
「かもしれない」
「マジですか!」
ただいま部活の後輩たちとラフスケッチ中。
あっ、飛行機雲だ……
下書きさえまともにできないのに頭上には皮肉ですか? ってくらい爽やかな青空が広がってる。
クロッキー帳を天に向かって放り投げたい気分だけどさすがにそれはね。
そもそも、なんでこんな投げやりになってるんだっけ。

「今のは冗談冗談。ベレー帽がないからかイマイチ調子出ないんだよねー……
って、違うか『確かに! あれ被ると画家になった感じがして気分がアガりますよね!』」
「あー……うん。そう、そうなんだよ」
なんて言い訳してごまかしてこの場をやり過ごしてる。
大体、アジサイに始まって季節の草花なんて
そうだそうだ、絶対そのせいだ!
最近はこんな風に心の中で自問自答してばっか。
思わず叫んじゃったけど、そこら辺に咲いてる花ひとつ満足に描けませんなんて。
行き詰まってるなんて……そんなんじゃ部長なんて務まらない。少しは先輩風を吹かさないと。
そうなんだよね。美術のテストや成績だって及第点。
人徳も威厳も画力もないけど、これでも翔陽高校・美術部の部長やってます……
友達も吹奏楽とかテニス部とか他の部に行っちゃって、うちは私と人懐こくて可愛い後輩を含めて数人。おまけにオタクっぽいイメージまでついてきて印象は悪いけどそこは無視! 少数精鋭! って良いように捉えてる。
「おまけに絵の具も無くなったし、今日はこの辺で切り上げよっか!」
「「 はーい 」」
***
「ありがとうございましたー」
店員の形式的な言葉を背中に受けて自動ドアをくぐり抜けた。
帰り際、モヤモヤした気持ちを抱えたまま画材屋に寄った。可能性をくすぐるカラーバリエーション豊かなラインナップは今の私には目に毒で。
そんな中、選んだ色は白数本と青一本。
これらを押さえとけば何とかなるなる。消費量が圧倒的に多いのと、どんな風景にも大抵空がつきものだから。
その絵の具のチューブを生徒会で割り当てられた貴重な部費で買った。領収書だってしっかりもらった。
割と真面目で楽天家なところが長所だと思ってるけど
後輩の一言一言が胸に刺さって、ますます気分が下がってしょうがない。
明日は、あそこに行ってみようかな……
