如月のソルティ・チョコレート (牧紳一)
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「ハァ……
今年も、この時期が来てしまったわ……」
北風が肌に突き刺さって、寒いを通り越して最早痛い。
マフラーもコートも耳当てもお気にのハンドクリームでさえも無意味。どれだけバリアしたって季節には抗えない。パッと目につく店頭のディスプレイ。
あっちを見てもこっちを見ても同じような
クリスマスが終わってお正月気分が抜けたと思ったら三学期が始まっていつの間にか超憂鬱な月になってた。
「え? なにそれ」
「別に、こっちの話」
「それより見て! このラッピング袋、可愛くない?」
「……可もなく不可もなく」
学校帰り、友達と駅前のショッピングモールに来てる。
バーゲンセールかってくらい女子だらけでめっちゃ混雑してるんだけど。目の前にいる人間もきっと同じ類。いくらなんでもちょっと浮かれすぎじゃない?
「今年も男子全員に義理チョコ配って終わりそうだよねー、いもうと……って、いもうと?」
高層ビルだらけで青空が全然見えない。
だけど、毎年この時期になるとイヤでも見える。
空中に
LOVEがたくさん飛び散ってるのがっ……!!
友達は私のほろ苦い顔を見てギョッとしてる。
「2月といったら」
「節分!」
「そうそう、恵方巻きも食べて……って、違うから!」
「ノリツッコミ完璧」
「ぶぅ」
「だってさー、あのイベントより先じゃん。
鬼は外ー! って」
そうよ、そうなのよ……!
厄を追い払うのよ……!
溺愛してるアニキから、女の存在をっ……!
恋する乙女にとっての一大イベント・バレンタイン!
常にアンテナを張り巡らせて、モテモテなアニキを徹底的にガードするのよ!
それだけに命かけてるって言っても過言じゃない!
ビター、ミルク、ブラック……
ブラコンアンテナは年中無休で稼働中。
どの方角を向いたらいいのかなんて分かんない。銀紙を剥がしていっぺんに何枚もの板チョコにかぶりついた。
「燃えてる……いもうと、怖いよ……」
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